2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

ESD を基本とした理数科系人材教育システムの構築の研究 (初年度報告)山形県サイエンスエリート養成プログラムの開発

実施担当者

栗山 恭直

所属:山形大学 理学部 教授

実施担当者

津留 俊英

所属:山形大学 地域教育文化学部 准教授

概要

1.背景:この申請の背景として、次の5点が考えられる。1)人口の減少により山形県の産業の担い手を育成することが課題となってきている。また,人口の減少だけでなく産業界を支える理系人材の育成も課題としてあげられる。2)大学や県内の科学機関では、子供向けの科学講座が数多く開催されているが単発的なものがほとんどで、理科好きになる導入的なものがほとんどである。3)大学や県試験場で理系人材に教育するプログラムは今のところほとんど存在していない。4)連続的な講座を企画するには、現場の意見を取り入れる必要がある。大学だけでは、内容に無理が生じる。5)中学生になると部活所属が必修になり、講座に参加する機会が激減する。理科クラブを持つ中学校が大変少ない。


2.目的
目的:以上の背景から、大学と県が共同して理系人材の発掘と教育を行う。題材としては,大震災後の持続可能な社会が将来求められて,教育現場にもその概念が導入されて「(ESD:Education for Sustainable Developments))いる。今回,中学生の理科クラブを中心に声をかけて,募集し大学での継続的な講座を開催し,学校現場との連携を図りながら,翌年度に向けての生徒の募集方法やカリキュラム整備,現場の先生の関与の仕方を検討会を開催しながら,実施することを目的とした。


3.計画
1)共同実施者(県教育委員会・および現場教員の参加)における検討会の立ち上げプログラム・回数・時期・内容等についての検討を行う。2)上記検討会の内容より生徒募集3)大学等での講義および実験講座の開催4)講座参加者および教員とのアンケートおよび意見交換を計画した。


4.実施
共同実施者については、県教育委員会義務教育課の指導主事を中心に中学校現場の意見を聞きながらプログラムについて検討した。県内の中学生を公募することについて話し合った。日程的に公募せずに、科学の甲子園ジュニアの県代表の強化研修会を共同で開催することになった。県代表に予選会を行った結果、山形市立第三中学校の選抜チームが選ばれた。構成は科学部の所属する生徒ではなく、運動部や文化部の合同チームで平日の放課後に集まることが不可能で、日程調整を行い、土日の週末の開催することになった。
強化研修の実施体制:強化研修は、理学部の栗山と地域教育の都留准教授が、学生とチームを作り実施した。内容は数学・物理・化学分野の科学の甲子園の問題を参考に準備した。中学生への指導は、大学生が中心になって行うことにした。より年齢の近いこと、大学生にとっても教えることでの経験をつませることができると考えたからである。
 日程:11月8日・9日・29日・30日の四回開催した。いずれも午前中の3時間行った。大学生の指導の下、課題に挑戦し、その後解説を行った。全国大会終了後、アンケートによる分析を行った。別添資料に示す。


5.アンケート解析
 アンケートにあるように、運動と文化部の混成チームでクラスも違い、この研修会のときに集まったことが分かる。甲子園の参加も理科教員がポスター掲示後、授業で宣伝し集まったそうだ。協力して課題を解き、解答時が、非常に満足のようだ。習った知識を応用して解決することに喜びをみいだしたようだ。こちらが、観察していても活発に意見を出し合い、実験を行っていた。また、班に中心となる子がいて意見をまとめて実験を進めることが、団体で課題を解決するには重要なことが認識できた。科学者になりたいから参加し他理由の生徒はこちらが予想したより少なかった。この研修会を通して、理科数学の面白さを感じたり、身の回りで役に立っていることを再認識できたようだ。


9.まとめ
 山形県において中学生は、何らかの部活に所属し、活動が義務付けられており、月に一度での大学での講座に参加することは難しいとの意見が多い。科学部が存在しない学校では、科学の興味があってもほかの部での活動するしかないようである。学校現場が、大学での毎月の実験講座を認めてもらうためには、市町村の教育委員会との連携を密にし、共同でプログラムを実施していくことが大切であり、現場の先生と協力する体制つくりが急務であることが明らかとなった。