2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

ICTを活用した生徒の研究発表能力の向上

実施担当者

今井 岳宏

所属:愛知県立阿久比高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 本校理科部は、研究を行って発表する活動を長年行っており、愛知県高等学校文化連盟(高文連)主催の研究発表会や、愛知工業大学が主催するAITサイエンス大賞に毎年参加している。
 近年のプレゼンテーションは、コンピュータを用いてスライドを作成したものが主流となっているが、本校の理科部はICT機器の整備が進んでおらず、生徒が「主体的にプレゼンテーションの練習をしたい。」と思っても、顧問の教員のコンピュータの都合に左右されてしまうのが現状であった。研究→分析・考察→発表の流れが習得できれば、生徒が自ら学び、自ら探究できるようになる。そこで、ICT機器を整備することで、生徒のプレゼンテーション能力が向上し、もっと研究したいという姿勢が高まるのではないかと思い、今回の実践を行った。


2.実践内容
 まずは、ICT機器の整備を行った。ノートパソコンとプロジェクターを導入し、使用方法を生徒に指導した。データの集計やワープロのスキルが向上したことを生徒が実感し、積極的なプレゼンテーションを行いたいという生徒からの要望もあり、生徒が興味・関心をもったことを調べてきて発表する「サイエンスゼミナール」を定期的に行えるようになった。
 生徒が研究にやりがいを感じるようになり、生徒の興味・関心に基づいた研究が実践できるよう、研究資材の整備を積極的に行った。


3.結果
◆平成27年度の研究の成果
【挿し木土壌とイチジク挿し木の関係】
 イチジクは、挿し木で苗を作ることが主流となっており、挿し木が非常に行いやすい植物である。そこで生徒は、4種類の品種において4種類の園芸培養土を用いた挿し木を行い、生育に違いが出るかを調査した。独力で、日々のデータをエクセルにまとめ、ポスターを作成し、読売新聞社主催の日本学生科学賞に応募をした。入賞とはならなかったが、次年度へつながる貴重なアドバイスを審査員からいただくことができた。
【ナス科野菜における半水耕栽培の研究】野菜の栽培方法で水耕栽培というものがあ
 るが、大規模な設備が必要である。そこで生徒は、鉢植えの下に水を入れたプラスチック皿を置いて植物を栽培することで、植物を常時湿潤条件で育てることができ、水耕栽培と似たような効果が期待できるのではないかと考え、研究を行った。シシトウを用いて実験し、収量や乾物重を測定し、エクセルで集計を行い、AITサイエンス大賞及び高文連自然科学専門部研究発表会にてプレゼンテーション発表を行った。
【クワガタムシの肥大成長に関する研究】
 オオクワガタやヒラタクワガタに関しては、マニアの間でギネスサイズの作出が模索されているが、コクワガタではあまり行われておらず、論文化もされていない。そこで、いくつかの昆虫マットを用いて、コクワタガの肥大成長の実験を現在行っており、平成28年度に発表予定である。また、オオクワガタやヒラタクワガタに関しても、各社昆虫マットにおける肥大成長実験を行っており、これについても平成28年度に発表予定である。

◆平成27年度参加研究発表一覧
・日本学生科学賞(10月)
・AITサイエンス大賞(11月)
・高文連自然科学専門部研究発表会(2月)
 昨年度は、2月に行われる高文連自然科学専門部研究発表会の1件での発表のみにとどまったが、今年度は前述の3件の研究発表会に参加をすることができた。


4.まとめ
 本校の理科部は、以前は教員が主体となって、生徒への研究手法の習得や、プレゼンテーションの向上に関する指導を行ってきた。しかし、今回ICT機器を整備することによって、生徒が主体的に研究をし、分析・考察を行い、発表をするという流れをつくることができた。生徒は自身が興味・関心をもったことに関して柔軟に研究することができるようになり、研究対象が変わっても、いつものように研究→分析・考察→発表という流れで行えばいいというシステムが出来上がった。教員は、生徒の研究活動をしっかりと監督する時間が増え、必要に応じて助言をしたり、より高度な手法を考察し、生徒に伝えられるようになった。これまでは、研究対象が1件や2件であったが、3~4件以上と増え、活発な科学研究が行える環境の整備が実現した。