2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

静電気と電流に関する事物・現象に進んで関わり科学的に探究しようとする生徒を育てる研究

実施担当者

東 昌幸

所属:大船渡市立綾里中学校 教諭

概要

1.はじめに
 気象庁が行っている二酸化炭素濃度測定の観測点が全国で3か所あるうちの一つが「綾里」である。このことは地元でもあまり知られていない。
 また、「綾里」は、岩手県の沿岸南部に位置している。東日本大震災で地域は大きな被害を受けた。震災後県内で最も早く仮設住宅が撤去されたものの整備が行われておらず、未だにグラウンドが使えない状態である。


2.授業について
 学習指導要領には、「静電気と電流異なる物質同士をこすり合わせると静電気が起こり、帯電した物体間では空間を隔てて力が働くこと及び静電気とは電流は関係があることを見出すこと。」1)とある。ストローを使った静電気の実験は手頃にできるが、教科書に写真で紹介されている静電高圧発生装置(バン・デ・グラーフ)を用いた実験を行う。教師の演示により静電気が発生した様子を見せるだけでなく、実際に生徒にも静電気を体感させた。授業の詳細については、以下に述べる。
 授業の導入では、生徒が身近に行っている下敷きで髪の毛をこすり、静電気を発生させ髪の逆立つ様子を観察した。その次に、スズランテープを使った電気クラゲを自作した。テープと塩ビの管をティッシュペーパーでこすりテープを空中に浮かせた。これらは、すべて静電気のはたらきによるものである。
 そして、もっと大きな静電気を発生させることができる静電高圧発生装置(バン・デ・グラーフ)の登場である。仕組みを説明し、静電気を発生させた。初めは遠巻きに観ていた生徒だが、好奇心旺盛な生徒が次第に近づいてきて触ろうとする。触る前にたまった静電気が放電球に放電する様子を観察させた。
 次に生徒が作ったスズランテープクラゲを本体上部に貼り静電気を発生させ、髪の毛と同様に逆立つ様子を観察した。そして興味関心が最高潮に達した生徒が装置に手を触れ、静電気を体感した。一人また一人と装置に触れ、数名で手をつないで静電気を体感した。


3.アンケート結果
 授業の前後でアンケートを実施した。
 授業前は「静電気にどんなイメージを持っていましたか。」という問いに対して、「冬になって何かに触れるとビリッとなる。」「静電気が起きると痛いし、あまり良くない。」「セーターや下敷きで起こる。」「痛い」「怖い」という答えが多数を占めた。身近に経験しているが、マイナスのイメージをもっている生徒が多かった。
 授業後は、「静電気発生装置を使った授業は、どうでしたか」という問いに対して20人クラス全員が「とても楽しかった」と答えた。
「静電気と電流についてもっと詳しく調べてみたいと思いましたか」という問いには、学級の評価平均が4.5という結果だった。


9.まとめ
 今回の実験を通して授業する前の静電気に対する「怖い」「痛い」のマイナスが払拭され、20人のクラス全員が授業を「とても楽しかった」と評価した。
 生徒アンケートの感想には、「私は、最初は静電気に対して、痛くて怖いイメージがあったけど、この実験を通して、静電気に対して楽しいイメージに変わり、そしてもっと詳しく調べてみたいなぁという興味がわきました。今回は、私たちの目に静電気発生装置を買ってくださってありがとうございました。おかげで私はもっと静電気について知りたいと思いました。静電気は痛くて怖いイメージだけじゃないことがわかりました。」と同様な感想が多数であった。
 本時のねらいでもある「静電気と電流に関する事物・現象に進んで関わり、それらを科学的に探究しようとする生徒を育てる。」ことができたのではないか。