2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

閉鎖系ベローゾフ・ジャボチンスキー反応の長時間挙動の解明-振動の復活に対するフェロイン触媒濃度の影響 -

実施担当者

沢畠 博之

所属:茨城県立水戸第二高等学校 教諭

茨城県立日立北高等学校

概要

1. はじめに
BZ 反応は細胞内の代謝反応のモデル反応として考案された。この反応は周期的に溶液の色や酸化還元電位が振動する。閉鎖系では、十分に時間が経過すると振動は停止し、最終的に平衡状態に達する。
触媒であるフェロイン([Fe(phen)3]2+)は比較的安定な錯イオンであるが、フェリイン([Fe(phen)3]3+)は酸性条件下で時間経過にともない、次式のように徐々にFe3+の水和イオンに解離していく。
[Fe(phen)3]3+ + 3H+ Fe3+ + 3phenH+BZ 溶液の色が2日後黄色になっているのはこのためである。またこのFe3+はBZ 反応に対する触媒作用はない。第2ステージ振動はおよそ20 時間後に始まっているため、錯イオンであるフェロイン触媒が十分解離したところで起きていると考えられている。
これまでに閉鎖系BZ 反応の長時間挙動は、図1のように酸化定常状態、還元定常状態、振動の復活、第2 ステージ振動のみ、の4つあることがわかっている。
今回は、第2 ステージ振動の開始に対するフェロイン触媒の影響について報告する。

(注:図/PDFに記載)


2. 実験方法
硫酸は初濃度を固定し,マロン酸(MA、反応基質)、臭素酸ナトリウム(NaBrO3、酸化剤)、フェロイン [Fe(phen)3]SO4、鉄錯イオン触媒)の初濃度を変化させ、反応液を20 mL のビーカーに加える。最後に金属触媒を加えた後,白金複合電極電位を48 時間にわたり測定する。溶液はマグネティックスターラーで撹拌速度を250 rpm に設定し、恒温水槽で約25℃に保った。データはAD 変換器を通して記録用PC に記録した。


3. 結果と考察

図2 からマロン酸、臭素酸ナトリウムの初濃度が小さい、第2ステージ振動のみがおこる濃度で、フェロインの初濃度を小さくすると、第2ステージ振動が早くなることがわかる。また、図2(d)では、濃度が小さいために第2ステージ振動の継続時間も短くなった。

(注:図/PDFに記載)

また、図3 ではフェロインの初濃度が小さくなるとともに、第1ステージ振動の継続時間が短くなっていることがわかる。これらより、第2ステージ振動が起こる(または振動の復活が起こる)のは,鉄錯イオンであるフェロイン触媒の濃度が低下していくからだと考えられる。図3 について、[Ferroin]0 = 0.625mmol/L で第2ステージ振動がおこらなかった。
これは、第2ステージ振動がおこるためには触媒が解離することが必要だと考えると、第1ステージ振動が起こることで Fe3+の解離が進み過ぎた。これにより、[Ferroin]0 =0.625 mmol/L まで小さくしてしまうと、第2ステージ振動が起こるために必要なフェロインの濃度よりも小さくなってしまうと考えられる。


4. まとめ
第2ステージ振動はフェロインが解離して、低濃度になっていき、フェロインがある濃度に達することで始まる。
第2ステージ振動の始まる時間は、フェロインの初濃度によって変えられる。