2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

能登町海洋教育推進プログラム(初年度報告)

実施担当者

三井 松夫

所属:能登町教育員会事務局 次長

概要

1.はじめに
 能登町教育委員会では、教育課程特例校の申請を行った小学校中心に、小学校における海洋教育の教科化にむけた体系的なカリキュラムを構築しようとしている。中学校においても、中長期的な視野に立ち一体的なプログラムを実施し、小中一貫した体系的・系統的な海洋教育の推進に取り組んでいる。
 今年度、金沢大学臨海実験施設、能登里海教育研究所、のと海洋ふれあいセンター、石川県立能登少年自然の家と連携し、能登海洋教育コンソーシアムを形成した。協力して郷土に根ざした教育と海洋教育との関連を探り、共通で取り組める内容や地域の特色を生かした教育課程の研究をしていく。
 研究過程を通して教員の意識や指導力を向上させ、海洋教育を教育課程に系統的、体系的に位置付け、小中一貫した取組を進めることで児童生徒の科学に対する興味・関心を高めることができ、論理的思考力や創造性が育まれると考えている。


2.背景
 平成19年に制定された海洋基本法の第28条では、学校教育において海洋に関する教育(以下、海洋教育)を我が国が推進することが定められている。しかし、海洋政策研究財団が平成24年に実施した調査で明らかなように、全国の小・中学校における海洋教育の実施状況は十分でない。また、平成23年6月、石川県能登半島に広がる「能登の里山里海」が、新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」とともに、日本で初めて世界農業遺産に認定された。能登は、地域に根差した里山里海が集約された地域であり、今回の「能登の里山里海」の認定は、能登の里山里海で育まれる暮らしそのものが高く評価されたものだといえる。
能登町は豊かで多様な生物が生息する海岸線、特色ある水産業、海に関連する歴史や文化、金沢大学臨海実験所をはじめいくつかの研究施設等を有している。
 このような地域の特色を生かした特別の教育課程の編成は、各教科学習の充実につながり、郷土に誇りと愛情をもった児童生徒の育成に効果的である。
 現在、小学校1校をモデル校として教育課程特例校(小学校第5・6学年において新教科「里海科」を新設)の認定を受け、地域行事への参加を含め多くの体験活動(海洋教育に関係すると思われる)を実施している。


3.本年度の実践
(1)教員研修会(町内小中学校教職員対象)
 日置光久(東京大学海洋アライアンス特任教授)氏を招聘し、学校教育における海洋教育の意義や内容についての講演を行い、教員に対する普及啓発をはかった。
(2)外部講師(専門家)による理科特別授業
 避難訓練(津波想定)の事前学習(津波のメカニズム、日本海の特徴)など、町内4中学校が独自に専門家を招聘し、特別授業(東京大学海洋アライアンス出前授業を活用)を実施した。科学に対する生徒の興味・関心を高めた。
(3)海洋教育サミット視察研修
 全国各地の海洋教育の取り組み状況について把握・情報交換を行った。


3.まとめ
 今年度は残念ながら、本事業で計画した生徒の体験活動(スキューバダイビングと磯の海洋生物観察等)を天候不良で中止した。代替の活動等をどうするかが課題である。
 現在、町内各小中学校は海洋教育の全体計画や地域研究施設を活用した単元計画を策定している。各学校の実態に合わせ試行錯誤を繰り返すことにより、児童生徒のみならず教員の資質向上にもつながると考えている。
 次年度は各学校の独自性とその実践内容の交流を中心に進めていきたい。このことで学校教育(科学教育)が効果的に活性化していくものと考えている。