2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

緑のカーテンによる気温、紫外線、放射線量の遮蔽効果

実施担当者

沼内 政典

所属:福島県立原町高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 本校は、東日本大震災による原発事故の影響で屋内退避、緊急時避難準備区域となった。現在は、避難指示は解除されているものの、放射線に対する不安は根深いものがある。
 一方、その影響により環境問題、エネルギー問題には関心が深く興味を持って学習に取り組む生徒も多く、さまざまな体験をさせたいと考えた。
 グリーンカーテンは、小中学校でも作っており、環境教育を行っているが、さらに発展させ、グリーンカーテン内外の環境を測定し、その効果をみたいと考えた。さらには、植物の種類などの影響に関する研究にも取り組みたいと考えている。
 この研究により、単なる植物の栽培にとどまらず、環境問題、エネルギー問題を総合的にとらえ、さまざまな課題発見とその解決能力を身につけさせたいと考えている。また、部活動の中心をなすテーマとして、継続的な研究をしていきたい。


2.研究内容
 以下に研究の流れを示す。
(1)アサガオの栽培、およびネットの設置アサガオの種まきは4月中旬に行った。
約50個のポットに種をまいた。

(2)6月下旬に苗をプランターに植え替え、同時にグリーンカーテン用のネットを設置した。生育状況のよい苗を選び、5つの60㎝プランターに8株ずつ植えた。
設置の状態を図1に示す。

(3)8月後半からアサガオの上方への成長が止まったので、本格的な環境測定に入った。測定項目は以下の通りである。
①気温
②紫外線
③放射線
(直射日光、グリーンカーテンの内側との比較)
 なお、測定時刻は始業前(8:15)、昼休み(12:40)に行った。放課後の時間帯は、校舎の向きと施設の関係で日陰になってしまうので行わなかった。

(4)使用機器
・放射線測定
堀場製作所製PA-1000Radi
・紫外線測定
カスタム製データーロガーSDシリーズUV-37SD


3.結果
(1)概要
測定項目のグリーンカーテン外に対する内側の減衰率を表1に示す。減衰率で示すのは、天候によって実測値の差が大きいためである。

(注:表/PDFに記載)

 表1の結果より、放射線はグリーンカーテンによる遮蔽効果は期待できない。元々内側の放射線量が高ければ意味がないことである。そこで、今後は気温と紫外線について考えていく。

(2)晴れの日のみの結果
最も影響を受けやすいと思われる、晴れの日のみの結果を表2に示す。

(注:表/PDFに記載)

 これら3種類のデータを朝、昼の時間で比較したものが、図2である。

(注:図/PDFに記載)

 図2の結果からわかるように、グリーンカーテンは、直射日光を遮ることにより、気温より、紫外線対策に効果があることがわかった。
 また、図1からわかるように、アサガオは下の部分が葉が多くなり、上に行くほど薄くなっている。均等に広がらない欠点もある。このことから、別な植物でも検討を進めたい。


4.まとめ
(1)生徒の変化
 今回の研究では、生徒が自ら進んで観察に取り組む姿勢を身につけさせることを目的とした。この目的は、おおむね達成できたと考えている。生徒たちも、自ら当番を決めて、アサガオの世話をしたり、データを取ったりしていた。また、「高校生新聞」で取り上げていただいたことが大きな励みになったようである。今までは、単発の実験を行うか、文化祭や地域のイベントのための準備が主体であったが、あるテーマを持って長期にわたって研究する体験は、今後の部活動の活性化につながると期待できる。

(2)今後の取り組み
今年度は、初めての取り組みということもあり、試行錯誤しながらデータをまとめていった。今回得た実験方法や知見を活かしながら、研究を深めていきたい。