2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

科学フェス2014

実施担当者

村上 弘

所属:伊保内高等学校 副校長

概要

1.はじめに
 伊保内(いぼない)高校は、岩手県北部に位置する人口約6,300人の九戸村唯一の県立高校である。全校生徒130人の小規模校だが、校長の「満足度の高い学校を!」のかけ声のもと、2013年度から学校活性化に取り組んでいる。その一環として文化祭に2年進学クラスの「化学フェス2013」が登場した。これは生徒が、小学生向けのおもしろ実験とその解説を行ったもので、会場前には長蛇の列ができ、文化祭全体の来場者数も、例年の200名程度から750名までの引き上げに成功した。
 今年度は、内容を「科学」全般に拡大し、中谷財団の助成による予算面の強化を武器に、さらに内容を充実させることができた。


2.科学フェス2014一連の内容
 前年の化学フェスはクラス単独の取り組みだったが、今年度は昨年の経験を有する3年生が下級生を主導する形として、本校での継続的な取り組みとなることをねらった。今年度の一連の内容は、次の通りである。
(1)訪問プレゼンテーション
(2)文化祭での工作とおもしろ実験
(3)留学生との科学を通じた交流
(4)理科研究発表会への参加


3.訪問プレゼンテーション
 九戸村内すべての幼稚園(2施設)・小学校(5校)・中学校(1校)を、生徒数人からなるグループが分担して訪問し、文化祭の宣伝を兼ねながら、以下のおもしろ理科実験を行った。
(1)過酸化水素・食器洗い洗剤・ヨウ化カリウム混合による大量の泡発生実験
(2)紙コップロケット(アルコールの爆発)
(3)ドライヤーでのスチロール球浮上実験
(4)ブロワーでのゴム風船リング回転実験
(5)超音波利用のパラメトリックスピーカー
(6)掃除機を使ったフィルムケース発射砲
 特に(1)は変化がわかりやすく、子どもたちの興味関心を強く引きつけていた。生徒たちは、訪問先に応じて実験を取捨選択し、それぞれに合った説明を心がけていた。


4.伊保内高校文化祭
 理科の各領域に関係するおもしろ実験を複数用意し、来客に合わせて実演した。
 以下はその一部である。
(1)紙コップロケット(アルコールの爆発)
(2)液体窒素を使った超低温実験
(3)手作りスライム
(4)CDホバークラフト製作
(5)ペットボトル空気砲の製作
(6)ダジックアースの展示(地学)
(7)錯視についての展示(生物)
 なかでも、財団の予算で購入した半球スクリーンに各種天体を投影するダジックアースは、そこに天体があるようなリアルさで、子どもから大人まで大好評だった。


5.留学生との科学を通じた交流
 イギリス・スコットランドからの留学生に対して、本校生徒が英語で説明しながら文化祭の内容を再現した。懸命に辞書を引いて説明原稿を作成して臨んだが、理科実験での驚きは世界共通であり、両校の生徒ともに楽しむことができた。


6.理科研究発表会への参加
 一連の活動のまとめとして、3年生3名と2年生1名からなるメンバーが、岩手県高等学校理科研究発表会に参加・発表した。
 この会は、県内の自然科学部の生徒が、日頃の研究成果を発表する場であり、自然科学部がない本校からは、おそらく史上初めての参加である。文化祭のおもしろ実験をこの場でも実演し、好評を博した。小規模校の生徒ではあるが、こうした舞台でも物怖じせずに発表できたことに、生徒たちの成長を実感することができた。


7.まとめ
 昨年産声を上げた「化学フェス」は、今年「科学フェス」として大きな成長を遂げた。生徒の自主的な取り組みも随所に見られ、今後さらに充実していけるものと確信している。