2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

科学が好きな生徒を育てるための科学部検定の実施

実施担当者

澤田 結衣

所属:茨城県石岡市立八郷中学校 教諭

概要

1.はじめに
 本校は、平成25年に3つの中学校が統合し、八郷中学校として開校した。筑波山(標高877m)の東側に位置し、近くを霞ヶ浦に流れ込む恋瀬川が流れる。春先から夏にはサギやウシガエルの鳴き声がこだまし、校内にツバメが巣を作る、自然豊かな地である。農業を営む家庭が多いこともあり、昆虫を怖がらず、植物や動物についての知識も豊富であるのが本校生徒の特徴である。また、子どもらしい素直な視点で事象を捉え、大人なら流してしまうような素朴で、重要な疑問をもつことができる生徒である。この感性を大切にし、科学が好きな生徒を育てたいと思い、その基礎として、科学部検定の実施を決定した。


2.科学部
 開校2年目で科学部を設置し、地域や自然との関わりに重きを置きながら活動している。「天気と伝承」を研究テーマに、地域で言い伝えられている天気や気象に関する伝承を観測データと照らし合わせ、関連性を探っている。6月には茨城大学工学部齋藤先生ご協力のもと、無人航空機(通称ドローン)を飛ばしたり、NHKラジオ第2放送気象通報を受信し、天気図を書いたりしている。生徒は、自分の課題と向き合い、仲間と励まし合いながら日々技能を高めている。


3.科学部検定
 日々の授業の中で、生徒の実験技能の定着に疑問を感じることがある。一人1実験が望ましいが、実験器具や時間の制限もあり、班での活動が中心となる。そのため、実験技能が高い生徒が率先して実験を行い、見ているだけになっている生徒がいるのが現状である。また、実験操作の意味を理解せずにただ、方法に従って実験していたり、誤った方法で実験器具を操作したり、といった場面が見られる。定期試験では、実験に関わる問題を出題するなど、操作の意味を理解して実験を行うよう意識させているが、それだけでは不十分である。そこで、実験技能やそれに関わる実践的な知識を身につけさせることを目的とし、科学部が中心となり科学部検定を実施することにした。10級~1級を設定し検定カードを作成した。これをもとに検定を行い、合格基準をクリアした生徒に級を与え、級をとった生徒が他の生徒に教えるという流れを基本とした。合格判定は顧問が中心となり、生徒同士で見合い、指摘し合っている。この検定を通して、実験における基礎的な技能を確実に身につけさせるとともに、自分で実験を考えたり、科学に対する新たな疑問をもったりするきっかけにしたい。


4.科学が好きな生徒とは
 本校で目指す、科学が好きな生徒とは、
①「不思議だなあ、なぜだろう、調べてみよう」と感じる生徒
②科学的探究のおもしろさを味わうことのできる生徒
③科学のおもしろさを感じ、科学を楽しむことができる生徒である。


5.目指す生徒像と科学部検定の関わり
 身の回りの自然を含めた様々な事象を科学として捉え、楽しさを実感するためには、自分の力で解決した、という経験が重要であると考えている。そのための探究スキルの習得を目指している。


6.平成27年度の活動成果
 本年度は、科学部部員が実験操作や知識を身につけることを目標とし、「科学部検定 2015」を実施した。検定では筆記試験による知識の定着を図るだけでなく、実験操作を身につけることに重点を置いた。様々な実験器具に触れ、各器具の利点や使い方を経験的に学び、自分たちで実験方法を考える際に選択肢が増えるよう、適切な器具を選択し使用する能力を鍛えた。


7.今後の課題
 本年度は、科学部内での実施にとどまったが、来年度は科学部部員が審査員となり全校に広げていきたい。また、合格基準や項目について、生徒とともに吟味し、より質の高いものを目指していきたい。3月に行った豚の目の解剖実験では、生徒の生き生きとした姿が見られた。動物を使った解剖実験は、生徒の自然や科学に対する興味をかきたてるが、正しい実験技能や知識が身についていないと、解剖実験の意義が薄れ、また、倫理観が損なわれる。こういった実験に関する級を増やすなど、より高度な技術を身につけさせたい。また、授業に科学部検定を還元するために、全校での実施方法や合格判断の方法についても検討が必要である。


8.平成28年度の活動計画
 5月には、新入部員を迎える。新入部員への指導を通して現部員のスキルアップを図りたい。その取り組みを通し、全校に科学部検定を広げたときの審査員としての役割を自覚させたい。


9.まとめ
 検定項目や実施方法は検討が必要である。また、生徒一人一人の知識、技能の習得に差がみられる。はじめての取り組みに課題も多く残ったが、実際にやってみることが何よりも効果的であることを感じている。授業内では、実験器具や時間に限りがあるため、この検定を通して、一人でも多くの生徒が科学に触れ、楽しさを感じ、未来に思いを馳せてくれればと願う。