2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

研究学園都市の地域性を生かした,生徒の科学的な好奇心を高める科学教育プログラムの創造(初年度報告)

実施担当者

山口 裕司

所属:つくば竹園学園 つくば市立竹園東中学校 教諭

概要

1.はじめに
 本校は,つくば研究学園都市の中心に位置し,学園都市の誕生に伴い創立され41年目を迎えた。筑波大学や研究機関所属の保護者の影響もあり,将来科学的な研究に携わる職業に就きたいと考える生徒が多い。生徒の科学への知的好奇心は非常に高く,多くの自然の事物現象の不思議さに触れたいと考えている。未知の世界の事物現象に対し,知的欲求が満足するまで追求したいという熱い心を有している。研究機関に勤務している保護者も多く,その人脈と専門性を活用し,生徒に向けた 知的好奇心をくすぶる科学教育プログラムの構築をし,生徒の豊かな体験活動を支えたいと考えていた。


2.科学プログラムの構想
 文部科学省で進めている子供たちの土曜日の豊かな教育環境の実現に向けて,本校でも地域や企業の協力を得て,「土曜日の教育活動推進プロジェクト」を進めていくことになった。そこで,研究機関に勤務している保護の人脈と専門性を活用し,生徒に向けた知的好奇心をくすぶる科学教育プログラムの構築をし,生徒の豊かな体験活動を支えたいと考えた。
 本校の環境があれば,多くの保護者の専門性を生かし,実態に応じた内容の講義を,少人数対象に実施できると考えた。言葉や映像だけではなく,専門分野に関わる簡単な実験や操作,ものづくりを通して体験的な学びの場所をつくることができる。ものづくりの材料や実験のための薬品や器具など,学校が主体となって講義をする保護者を支えることが出来れば,生徒の知的好奇心を満足させ,さらにそれを高めるための活動が出来ると考え,土曜日授業特別講座として実施することにした。


3.本年度の実践状況
(1)講座の開設状況
 今年度実施した土曜日授業特別講座は3回(11/22,12/20,2/21)である。回説講座数は,1回目が15講座,2回目が17講座,3回目が18講座であった。

(2)講座内容の紹介
「天体望遠鏡と太陽系の成り立ち」
 太陽系発見の歴史,その発見の裏にはどのような望遠鏡が活躍したのかなどを紹介。天体望遠鏡の仕組みや歴史,惑星の一生,太陽系の運命など宇宙に関するさまざまなことが話題となった。生徒たちの質問をもとに作られたプレゼンテーションに集中している様子で,天体望遠鏡を実際にさわる場面では笑顔がこぼれていた。

「花と緑の脳トレ」
 農研機構の花き研究所の講師による,フラワーアレンジメント作りによる脳トレ(リハビリ)に関する講話。花や緑が脳に効果的なリハビリ効果をもたらすことなどが紹介され,実際に花を使ってフラワーアレンジメントも行った。

「つくばのまちづくり(都市計画)」
 前回の講座で考えはじめた学校近隣の再開発計画,今回はまた別の生徒達がその再開発計画をグループディスカッションしながら煮詰めていく活動をした。ドーム型の屋根で全ておおいその下に商店街をつくる案,ランドマークをつくる,TXをつくば駅から伸ばすなど大胆な案が立てられ,ゾーニングとよばれる都市計画の手法を学ぶことができた。


9.まとめ
 生徒の知的好奇心を高める科学プログラム(土曜日授業特別講座)は,28名の講師の専門性を生かしながら,試行錯誤を繰り返し,充実した講座として成長している。
 生徒達は,地域をささえる身近な大人が,楽しんで生き生きと活動をする姿を見ながら,最新の科学に触れる機会を得ることが出来た。さらに,自分の身の回りには,自分が気づいていない知らない世界が沢山あることを実感していた。そして,世界を科学者達が黙々と開拓してきたこととで,現在の生活があることに立ち返って考えている生徒が多かったことは,本講座の成果の一つである。