2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

矢部川水系の自然に関する探究及び保護・啓蒙活動

実施担当者

廣田 進一

所属:福岡県立八女高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 本校自然科学部生物班は、2002年4月より現在に至るまで矢部川水系の自然をテーマに調査探究及び保護・啓蒙活動を続けている。2008年6月から筑後市と環境パートナーシップを締結し、現在もガマ池の環境改善活動を継続している。2012年6月から、南筑後地域自然共生連絡協議会(事務局:南筑後保健福祉環境事務所)から、福岡県の絶滅危惧ⅠA類、アサザの系統栽培を依頼され実験室横で栽培を開始する。筑後市下北島の野生種の生態の観察とその生育場所近辺の環境保全を行っている。今回は、2014年度の活動について報告する。


2.絶滅危惧種などの保護及び環境保全活動
 絶滅の恐れのある種「アサザ」の系統保存については、予定していた①から⑤(①アサザの校内栽培水槽での生育法の研究、②昨年度採取した種子の発芽実験、③アサザの校内栽培水槽で受精実験、④下北島のアサザ群落の生育状況の調査(月1~2回)、⑤下北島のアサザ群落の開花結実の調査)については、ほぼ予定と通り実施することができた。また、筑後市ガマ池の環境保全活動やブラジルチドメグサの除去作業と駆除方法の研究にも一定の前進がみられた。中でも、本校のアサザ栽培水槽で得られた種子の発芽に成功したことは大きな成果である。


3.矢部川水系に生息する生物調査
 本年度に矢部川水系で予定していた調査は、①クロモが生息する地域での水草と淡水魚の調査、②下北島のアサザ群落周辺の淡水魚の調査、③下北島のアサザ群落周辺のソデ群落の調査及び④下北島のアサザ群落上の昆虫の調査の4つである。2014年夏は雨天が多く野外調査を行えない日が多かった。加えて、日照不足の影響で下北島のアサザ群落の成長も悪かったため、アサザの浮葉上に展開される様々な昆虫たちの活動を観察することもできなかった。なお、下北島のアサザ群落の周辺の植物調査ではおびただしい種類の外来種が確認された。そのような中で、アサザも新しい繁殖場所を見つけているので、今後、継続観察を行っていきたい。


4.地域での啓蒙活動や研究発表
 本校では以下にあげる多くの地域での啓蒙活動やボランティア活動及び研究発表に取り組んだ。
①筑後川・矢部川河川愛護推進協議会主催「私たちの活動報告会」発表(7月)
②南筑後保健福祉環境事務所主催「自然観察会」(7月他)参加
③NPO法人まちづくりネットワークちくご主催「ちくご子どもキャンパス」参加(7月)
④高文連主催「福岡県高等学校生徒生物発表大会」(地区11月、県12月)発表
⑤高文連主催「福岡県高等学校生徒ポスター発表大会」(12月)発表
⑥自然共生事業に関する協力「環境フェスタ
in ちくご」(1月)参加・・・他
 これらの活動の中で生徒たちは、地域社会とともに考えていく能力を高めていくことができた。なお、一つの学校で行うことのできる限界を越えている感じがするので、内容の精選が必要である。


6.まとめ
 本校自然科学部生物班の活動は、調査研究活動から地域啓蒙活動・ボランティア活動まで多岐に渡っている。下北島産のアサザの保護活動では、栽培方法の研究や種子の採取など一定の成果をあげている反面、活動が飽和状態になってきている。活動内容の精選を考える時期にきている。