2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

益田市(益田市周辺)の全ての小学校への アウトリーチ活動「出前実験」・「理科読を楽しむ会」

実施担当者

福満 晋

所属:島根県立益田高等学校 教諭

概要

1 はじめに

科学的な現象に素直に反応してくれる小学生に対して,直接本校生徒が出向き,具体的な実験を体験できる授業を展開することで,小学生の知的好奇心を呼び起こすとともに,日常生活で起こる現象を,科学的な視点で考えることができるきっかけになる。また,アウトリーチ活動を通して,論理的な思考の展開力を高めるとともに,対象者を意識したプレゼンテーション能力の養成を行う。

2 小学校へのアウトリーチ活動

2-1 小学校への出前実験

<研究内容・方法>
① 実施期間平成28年12月2日(金)~平成28年12月13日(火)
② 対象学年・学科第2学年・普通科文系・理系118名
③ 内容
〇研究内容の展開
・実験説明のためのプレゼン用ポスター作成
・実験装謹の作成、指導練習
・実践
〇出前実験の対象
吉田小学校6年生83名高津小学校6年生98名益田小学校6年生58名
体育館に実験ブースを8個設置する。時間内に小学生はグループごとにブースをまわり、実験を体験する。ひとつの実験にかかる時間は10分程度にする。

く検証>
〇対象とした小学生への調査結果[理科への好奇心や出前実験の感想等]

(注:表/PDFに記載)

対象とした小学校6年生児童は,すべての年度においてほぼ1/4は理科に興味が薄かったり嫌いであると答えているが,実施後に理科が好きになった・興味をもった児童が過半数を超えている。このことから、出前実験は小学生の時期から理科に対しての関心を持たせる、そして学習意欲向上のために、非常に有益な事業であると言える。また、実施後は、すべての年度でほぼ100%の児童に参加したことによる満足感を持たせることができた。また、昨年度同様、H24年度,H26年度に比べて益田高校で勉強がしたくなった生徒が増加している。地域の児童は本校のSSH事業に関心を持ち,本校生の姿に触発されているといえる。今後,規模を発展させ、内容をより充実したものにしていくことで,さらに地域の広がりと理科への興味?関心が高まることが期待される。

〇本校生徒への調査結果[論理的思考力や普段の学習の重要性等]
本プログラム実施後にアンケートを行った。(対象:2年普通科文系・理系103名)

(注:表/PDFに記載)

7割前後の生徒が「すじ道を立てて考える能力」が向上したと答えた。発表用ポスターの作成や事前実験を含めた発表の練習など,対象である低年齢の児童に対して,わかりやすく丁寧に説明するために事前学習の内容を充実させたため、論理的思考力が向上したと言える。また、本プログラムの実験はほとんどが身の周りの現象に関する実験であったため、身の周りの科学的な現象への輿味?関心が高まったと考えられる。さらに、普段の学習と本プログラムで行った実験が密接な関係があることに気付き、普段の学習への意欲向上につながったといえる。学習意欲と科学への興味・関心を高めるために、非常に有益なプログラムといえる。

〇児童の感想より抜粋
?高校生がわかりやすく説明してくれて、とても楽しく、勉強になりました。もっと科学のことを知りたいと思いました。またやりたいです。
?今まで体験できなかったことが体験できてうれしかった。科学に興味が持てました。
?前よりも理科が好きになりました。

〇実施生徒の感想
・私は小学校教の教員を目指しているので、小学生と交流できる数少ない貴重な体験ができて、とてもよい参考になりました。
・小学生にわかりやすく説明するためにはどうすればよいか、考える力がつきました。そして、科学や身の回りの現象に興味?関心を持つことができ、普段の授業をがんばろうと思いました。
・地元の小学生と交流することができたり、自分の能力を高めることができたので、今後も続いてほしいです。

2-2 小学校での理科読を楽しむ会

く研究内害・方法>

① 実施期間
研究期間 平成28年12月8日(木)~平成28年12月14日(水)
② 対象学年・学科 第2学年・普通科文系・理系 12名、第2学年・理数科 39名
③ 内容
〇研究内容の展開
・実験説明のためのプレゼン用ポスター作成
・実験装置の作成、指導・読み聞かせ練習
・実践

〇理科読を楽しむ会の対象単独実施(各小学校にて)

安田小学校6年生40名 吉田南小学校6年生32名
一斉実施(益田市市民学習センター)92名
鎌手小学校6年生14名 豊川小学校5?6年生15名
中西小学校6年生21名 都茂小学校5?6年生15名
匹見小学校5?6年生5名 道川小学校4?6年生4名
西益田小学校6年生34名
戸田小学校6年生9名
東仙道小学校5?6年生9名

教室に児童6~7名のグループを作り,実験指導のために各グループに高校生1名を配置る。教室の前では,司会の高校生が会の進行を行うとともに,各実験の説明,本の読み聞かせなどを実施する。
NPO法人ガリレオ工房理事 士井美香子氏を招いて2回の講習会を行った。今年度は普通科文系・理系の中から12名も講習会に参加した。参加した生徒は、普段は意識をしたことがないような身の周りの空気や自然現象について,「なぜ?」という疑間や不思議について考え、実際に実験を体験するとともに、それを対象児童にわかりやすく伝えることの難しさと大切さを学んだ。参加した児童の皆さんには、「なぜ?」という疑問を持つことの大切さと、その答えを知ることができる読書の楽しさをわかってもらえたと感じたプログラムであった。

く検証>
〇対象とした小学生への調査結果[理科への好奇心や理科読を楽しむ会の感想等]
3年間で実施した理科読を楽しむ会の小学校の回答の結果(%)を示す。

(注:表/PDFに記載)

今年度は前年度よりも多く、益田市のすべての小学校を対象に,理科読を楽しむ会を実施した(H28年度11校、H27年度3校,H26年度1校)。8割~9割程度の児童が、理科読を楽しむ会に参加することを楽しみにしていることから、このプログラムは地域に根付き、期待されていることがわかる。また,理科や科学に対して嫌い,興味・関心がないという児童が少なからずいたが,実施後は3年間ともほぼ100%の児童に満足感と達成感を感じさせることができた。さらに,益田高校で勉強したいと感じた生徒が3年間とも1/4を占めていたことから,出前実験同様,地域の児童は本校のSSH事業に関心を持ち,本校生の姿に触発されているといえる。地域の児童に対する理科への興味?関心をもたせるためには非常に効果的であるとともに欠かせないプログラムであるといえる。

〇本校生徒への調査結呆[論理的思考力や普段の学習の重要性等]
本プログラム実施後にアンケートを行った。(対象:2年普通科文系・理系12名,理数科35名)

(注:表/PDFに記載)

おいて,小学校6年生の児童に対してわかりやすく伝えるための講習会を行い、さらに自分たちで考えて工夫する時間と発表練習をする時間を設けたためであると考えられる。また,身近な現象や昨年度と今年度で約90%の生徒において論理的思考がつき,基礎学力が必要と感じている。このことから,本プログラムは,論理的に物事を考えるためには基礎学力が必要であることを本校生に気付かせるための効果的なプログラムであると言える。
〇児童の感想より抜粋
・理科はそんなに好きではなかったけど、理科読の会に参加して、前よりも理科が好きになった。
・理科に興味を持つことができて嬉しかった。
・空気という身近なものについて知ることができてよかったし、身近な現象に興味をもつことができた。
・益田高校へ入学して勉強・実験がしたくなった。
〇実施生徒の感想
・小学生にわかりやすく説明する方法がとても難しいと感じた。論理的に説明する力がついた。
・理科読を楽しむ会を通して,小学生に科学の楽しさやおもしろさを感じてもらい、科学に興味を持ってくれる人が増えるとうれしい。
・わかりやすく説明するためには、科学のことを理解しておくことが必要だと感じた。普段の学習の大切さを知った。