2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

生薬、機能性食品として愛知県尾張地方で栽培に適する 薬用植物の選抜と薬膳料理の機能性科学、地域普及活動 (和食・洋食・中華・薬膳スイーツ等)

実施担当者

長谷川 光隆

所属:愛知県立稲沢高等学校 教諭

概要

1はじめに
稲沢市の農業活性化のため、平成23年度から稲沢市のマスコットキャラクター「いなッピー」の頭を飾る地場産野菜「明日葉」の生産拡大と加工品の製造を本校生活科学科農業クラブのプロジェクト活動として行ってきた。
平成24年度に明日菜米粉シフォンケーキ、平成25年度に明日葉フルーツ(イチジク)大福、平成26年度に明日菜クロワッサンを地元企業の協力により商品化、平成27年度には明日葉のLED水耕周年栽培管理技術を確立することができた。また、生徒は各種プロジェクト発表会やコンテストで優秀な成績をおさめ、主体的に発表する態度やチャレンジ精神等の育成にもつながった。
本年度は、愛知県尾張地方で栽培に適する薬用植物の選抜と、薬膳弁当の開発、製造、販売等の地域普及活動(和食・洋食・中華・薬膳スイーツ等)及びその機能性研究等を、愛知県の農業高校、短期大学、尾張農林水産事務所農業改良普及課、薬事研究所等と連携して行い、地域の農業をはじめとする諸関連産業の活性化に貢献することを目的に活動した。

2平成28年度のプロジェクト活動成果

2-1地元農産物(薬用植物)を利用した薬膳弁当の開発・製造及び販売
地元農産物である薬用植物の効果、効能を鑑み、愛知文教女子短期大学、愛知県立佐屋高等学校、愛知県立安城農林高等学校と連携して、生活習慣病等に効果的な薬膳料理、薬膳弁当を関発した。
また、食品として、収穫された薬草、薬樹(果実)を利用したH本の春夏秋冬、四季折々の薬膳料理(薬膳弁当)を調理し、仕出し店と協力して商品化し、各種イベントで販売活動を展開した。
その薬膳料理を食することにより、身体にとってどのような効果、効能が期待されるかについて詳細な説明をつけたチラシの配布も行った。

以下、取組みの一例を挙げる。

実践1愛知県立佐屋高等学校と連秤した明日菓卵巻き商品化と薬スイーツ製造5月、愛知県立佐屋高等学校生物生産科の生徒が飼育している鶏の鶏卵と本校LED明日葉を利用した明日莱卵巻きの製造実習を津島市の鮮魚・仕出し店「魚光」にて行い、日本農業新聞の取材も受け掲載された。
また、9月には佐屋高等学校の鶏卵と本校LED明日葉を使用した明日菓パンケーキも製造、本校産イチジクでジャムも製造し、パンケーキに添え、薬膳スイーツの試作品として製造した。

実践2愛知県文教女子短期大学の学生と薬膳弁当・薬膳スイーツ共同開発・製造

5月には愛知文教女子短期大学の植物栄養専攻の学生と本校
生活科学科生徒が一緒に地元の薬用植物のネギ、ホウレンソウとアメリカの国立がん研究所が公表しているデザイナーフーズ(がんに有効とされる作物、野菜)の大豆、生姜を利用した薬膳弁当の共同開発を行った同大学副学長からもPFCバランスもよく、カルシウムや鉄も含まれ、おいしく「美と健康」によい薬膳弁当ができたとのお言葉を頂いた。
また8月には同大学の学生が考案した薬膳弁当・薬膳スイーツの共同製造を行った。

実践3総合実習授業での地元農産物(薬用植物)や発酵食品を利用した薬膳弁当の製造本校生活科生徒が栽培、収穫したブドウを利用した明H葉ブドウ大福、地元の伝統野菜の越津ネギを和用した越津ネギ入り卵焼き、地元農産物(薬用植物)のレンコンを利用したレンコンチップ、レンコンきんびら、生涯量日本一の稲沢市祖父江町の銀杏を利用した銀杏もち、桜チップで燻製したスモークチーズ、手作り梅干し等で、薬膳的な効能が期待できる弁当を何度も製造した。

実践4一宮お菓子フェアやあいちさんフェスタin津島で薬膳おにぎり弁当販売

10月に一宮お菓子フェアで、11月には愛知県教育委員会主催「あいちさんフェスタin津島」で「薬膳おにぎり弁当」を販売した。本校生活科学科生徒が栽培、収穫した地元の伝統野菜の越津ネギを利用した越津ネギ入り卵巻き、本校LED水耕栽培で収穫した明日葉を利用した明日葉入り卵巻き、本校で今年園芸科生徒が栽培、収穫した白米を使用した十六穀米おにぎり、玄米を利用した玄米おにぎり、蓮の実廿露、揚げ塩銀杏で、健康的で漢方の薬膳的な効能が期待できる「美と健康」を育む「薬膳おにぎり弁当」を、朝6時から津島市の鮮魚・仕出し店「魚光」で製造。1パック200円で、それぞれ用意した30パックは、販売開始から約30分で完売した。

2-2薬膳弁当で利用する野菜・果実の機能性分析

8月、稲沢市、一宮市、愛西市、名古屋市等の中学生合計114名に対し、本校生活科学科教諭の指導の下、生活科学科の薬用植物、薬膳弁当プロジェクトの説明を行い、今回助成金で購入したATAGOの糖・酸度計で、薬膳弁当に利用する各種の果物・野菜の糖度・酸度の測定を行った。
本校で収穫したブドウの糖度は平均24~25%、酸度は平均0.6~0.7という数値で、糖酸比のバランスがよく、今年も大変おいしいブドウがたくさん収穫できた。

2-3発表会、コンテスト等出場

実践1愛知県学校農業クラブ連盟意見発表会に出場7月、愛知県立農業大学校で開催された愛知県学校農業クラブ連盟意見発表会にて、本校生活科学科生徒が「私の夢・・・それは薬膳調理師」と題して発表し、愛知県立佐屋高等学校の生物生産科生徒が地域特産の観光資源の蓮について発表した。
薬膳弁当の材料に使用する蓮の実についての発表を聴き理解を深め、また、聴衆として参加した愛知県立農業大学校の学生との交流も深めることができた。

実践2東海学園大学健康栄養学部野菜料理コンテストで最優秀賞、優秀賞ダブル受賞10月、東海学園大学健康栄養学部主催の野菜料理コンテストで、本校生活科学科生徒考案の薬膳弁当が、地域の特長を活かした野菜料理レシピ部門で、野菜レシピタイトル「愛西の宝石箱」が「最優秀賞」、お手軽野菜材料レシピ部門で、野菜レシピタイトル「稲高農園からの贈り物」が「優秀賞」を受賞した。
健康栄養学部長講評で、応募総数は150名ほどあり、本校の最優秀賞作品の受賞理由は、地域の特産野菜を多く使用した創意あふれる作品とのことだった。

実践3AITサイエンス大-で薬用植物、薬膳料理のプロジェクト活動発表11月、愛知工業大学八草キャンパスで開催された第15回AITサイエンス大賞にて、本校生活科学科から、自然科学部門に出場し、「稲沢地場産野菜、薬用植物「明日葉」のLED水耕栽培及び加工品商品開発(料理の科学)と地域普及活動」と題して、ステージ発表、パネル展示発表を行った。自然科学部門は愛知、岐阜、静岡県などから22校が出場し、努力賞を受賞した。

3まとめ
平成23年度から地場産野菜、薬用植物「明日葉」の生産拡大と加工品の製迭を本校生活科学科農業クラブのプロジェクト活動として行ってきたが、今年度は愛知文教女子短期大学や愛知県立佐屋裔等学校等とも連携して「薬膳おにぎり弁当」として商品化し各種イベント会場で販売活動を展開、大変好評を博し、地域産業の活性化に寄与できた。
このプロジェクト活動を通して、生徒たちは多くの経験を積み成長することができた。様々な外部団体との交流で多くの知識を身につけただけでなく、協力して何かを作り上げることの大切さを学んだ。時間をかけ、仲間と協力して一つのものを作り上げたことは、これからの人生の大きな肥料となるだろう。