2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

生徒が目的をもって意欲的に観察・実験に取り組むための教材提示の工夫

実施担当者

村田 章知

所属:新潟県南魚沼市立六日町中学校 教諭

概要

1.はじめに
 中学校理科では、身近な自然の事物・現象について自ら問題を見出し、解決する能力を育成することが求められている。そのためには、生徒自身が目的をもって主体的に観察・実験に取り組むことが不可欠である。1)
 本事業では、そのために効果的な教材であるデジタル生物顕微鏡と教材提示用テレビの整備を行い、観察・実験の充実を図ることをねらいとした。


2.教材の選定
 現有していた顕微鏡テレビ装置は故障して使用することができない状態であったため、新規購入を検討していた。
 近年、普及が始まったデジタル顕微鏡は、顕微鏡テレビ装置の機能だけでなく、パソコンで画像を保存できる機能も備わっているため、それぞれを個別に整備するより経済性に優れている。そこで、今回は顕微鏡テレビ装置の機能を包括するデジタル顕微鏡を新たに整備することにした。
 また、教材提示器具としてプロジェクターを保有していたが、使用時には教室の照明を消す必要があり、観察・実験の時に使用する教材提示器具として課題があった。そこで、デジタルテレビを教材提示器具として使用するために整備することにした。
 今回整備するデジタル生物顕微鏡の仕様は、①ハイビジョン画質で映像が出力できること、②接眼レンズでの観察と画面出力が同時に行えること、の2つを満たす製品を選定した。また、デジタルテレビの仕様は、①後ろの席の生徒からも見える50型以上の大きさであること、②デジタル顕微鏡やパソコン等の映像を高繊細で表示するために必要なHDMI入力端子を有すること、の2つを満たす製品を選定した。


3.デジタル生物顕微鏡の活用
 これまで、生徒が顕微鏡で観察をする時に、ピントが合わない状態で観察している生徒や、混入したごみなどを観察対象と誤認して観察している生徒が見受けられることがあった。今回デジタル顕微鏡を導入して以来、生徒たちが観察するものと同じ試料を画面に投影することを続けた結果、先述のようなトラブルの数が徐々に減少してきた。
 また、詳しく観察させたい細かな組織やつくりの部分を画面に提示することで、観察対象をより確実に観察させることが可能になった。
 これらのように、教材提示の方法を工夫することで、生徒の観察の活動が充実したり、観察により多くの時間を割り当てたりすることができ、学習活動の深化に貢献できることが確かめられた。
 なお、今年度は最も顕微鏡を多用する植物単元の学習が終わっていたため、来年度以降も引き続き実証を進めていきたい。


4.教材提示器具の活用
 光の屈折の学習では、コインが入った容器に水を入れて、コインが浮かび上がって見えるようになることを確かめる実験を行う。ところが、生徒実験で行うと、観察者が無意識に顔を動かしてしまい、結果に差異が生じてしまうことがあった。そのため、観察者の代わりとして固定したビデオカメラで撮影をし、テレビに投影して一斉に観察を行うことにした。その結果、全員が正しい結果を確認することができた。
 このように、観察者によって結果の認識に違いが出る観察・実験では、教師による演示実験で行うほうがよい場合がある。その際、視聴覚機器を活用することが有効であることが確かめられた。


9.まとめ
 生徒からは、「きれいに見える」、「拡大されて見えてすごい」、など、実際に観察することで感動を得ていた。理科への興味・関心を高めるための動機付けにも有効な教材であった。
 デジタル生物顕微鏡とデジタルテレビを組み合わせた観察や、デジタルテレビを利用した教材提示方法は、授業者が意図する場面で、従来の授業とは異なったより効果的な観察・実験を行うことが可能になった。
 今回紹介した場面以外でも、有効に活用できるが事例が多数考えられることから、観察・実験のさらなる充実が期待される。