2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

環境教育・アクモキャンドル

実施担当者

山口 俊一

所属:山形市立山寺中学校 教諭

概要

1.はじめに
 今回、申請した大きな理由は2つある。ひとつは、子ども達は教科書の学習だけでは学び切れないことが数多くあるにもかかわらず、そういった情報に触れる機会が少ないことである。本来であれば、もっと本を読み、様々な発明や技術革新の背景に、どのような願いや苦労があったのかを勉強すべきである。しかし、子ども達たちは、メディアが発する情報に大きく左右される。テレビで危ないといわれれば危ないと判断し、テレビで良いといわれれば何が良いかわからなくても良いと判断する。そうではなく、『なぜ、良いのか?』という科学的根拠を求めようとする思考力を生徒のなかに育てたいと考えた。
 もうひとつは、学習内容と自分のキャリアを結びつける機会が少ないことである。技術の授業ではものづくりの体験にとどまってしまう傾向があり、その後の発展が難しかった。しかし、学習したことをどんなところに役立てられるか、という視点があれば、これからの学習する意味付けが学力だけでなく、キャリア形成にも役立つと考えた。特に、日本人による発明や技術革新に焦点を当て、より身近に感じさせたいと考えた。


2.実際の講座
 平成27年1月15日(木)13時55分から15時55分までの2時間にわたり、株式会社ナリカ専任講師の小森栄治氏を講師にお招きし、本校2年生8名を対象に、『手回し発電機からハイブリッド自動車』『青色発光ダイオードの意義とアクモキャンドルを発明した日本人』についての講座を開催した。
 『手回し発電機』は小学校6年生の時に、授業で扱っている教材である。電気がつくことやコンデンサーに電気を蓄えられることについて学習している。
 今回の講座では、①発電機を回す時は、車がエンジンで走っている時。②コンデンサーにつないだ時は、ブレーキがかかるときで発電、蓄電している時。③コンデンサーをはずし、手を止めた時は、停車中でアイドリングストップと同じ時。④コンデンサーを再びつないでモーターが動き出した時が、車がモーターで発信する時。この4つの段階で、ハイブリッド車の仕組みを体験した。
 『ハイブリッド車を使う環境に易しい仕事は何?』『メディアでは、ハイブリッド車は環境に良いといわれているが本当か検証しよう!』など学習した内容から根拠を探しだした。
 『青色発光ダイオード』の発明によって、白のLED電球が一般の生活の中でも使われるようになった。その理由は意外に知られていない。
 そこで、その説明を受けた後、実際に、光の合成を体験した。
 白熱球とLED電球の違いが、光になるエネルギーと熱になって逃げてしまうエネルギーがあることについて、電球を触って体験した。
 このエネルギー変換が、すべて光りに帰られるようになれば、二酸化炭素の排出量が一気に削減できることなどにも触れられた。
 アクモキャンドルは、マグネシムから酸素へ電子が移動する仕組みを利用して水で電気がつくという発明である。発明者の鈴木進氏の『電気を使えない地域の人が使えるようにしたい』という思いが、何万回もの実験への挑戦となり、不可能を可能にしたエピソードが紹介された。
 実験のなかで、ぼうけんくん(書画カメラ)を用いることで、細かい作業の説明がスムーズに進んでいた。


9.まとめ
 今回の科学教育振興【個人】助成事業において、大きく2つの成果があった。
 ひとつは、生徒が講師の小森栄治氏の指導の下、ハイブリッド車が必ずしも環境にやさしいのではなく、一日に何度もブレーキをかける仕事や長い距離を走るという条件がある場合に、環境にやさしいといえることを学習できたことである。
 もうひとつは、LED電球の普及につながった青色発光ダイオードの発明や未来の光といわれる有機ELの発明、アクモキャンドルの発明は、不可能を可能にし、世界の平和や安全、より豊かな暮らしに貢献したいという願いから生まれたことを学習できたことである。