2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

環境放射線について学ぶ

実施担当者

米本 慶央

所属:宮城県築館高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 福島原発事故由来の放射線量と自然界にある自然放射線量を比較することで、放射線量の安全性について考えてほしいと思い本事業を企画した。また、本事業を行うにあたって、生徒が安全に使用できる実験器具を用い、主体的に実験ができるように配慮することを心がけた。


2.事業計画及び内容
①放射線とは何かを学習する(4月~5月)
 身の回りには様々な放射線があることを授業で説明し、霧箱を使ってα線を見せた。また、部活動では手作り霧箱を作成した。
 放射線は目には見えず体で感じることがないため、生徒は放射線に興味関心を持った。

②放射線を使った最先端研究施設の見学(5月10日)
 東北大学大学院理学研究科物理学専攻原子核物理グループと東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンターに訪問した。
 放射線を使った最先端研究を見学し講義を受けて、放射線がどのように役に立っているのかを学ぶことができた。

③γ線測定器を用いた放射線量の測定(9月~12月)
 本校にあるγ線検出器とγ線スペクトル分析器を用いて栗原市内の河川敷3カ所で採取した土に含まれている放射線量を測定した。土の採取は部活の生徒と一緒に行い、授業ではこの土を用いて測定した。
 測定手順は以下のとおりである。

①栗原市内で採取する土の量は一定。

②土がある時と無い時の放射線量を測定し、その差から土の中から出てくる放射線量を測定する。

③放射線のエネルギーからセシウムから出てくるガンマ線があるかを調べる。
 測定結果の一部を以下に載せる。

(注:図/PDFに記載)

 土のみに含まれている放射線量は自然放射線量の約0.02倍と非常に少なく、市内の土には放射線はほとんど含まれていないことが分かる。ただし、次の図の通りセシウム137Csから出るγ線も極微量ながら確認できた。この量は自然にある209Bsの放射線量とほぼ同じで健康面に影響は少ないことが分かった。

(注:図/PDFに記載)

 パソコンを使って解析するので、生徒は慣れるのに時間がかかったが、主体的に測定し、結果を出すことができた。また、東北大学の田村教授のグループに訪問し、福島県大熊町の土も同様に測定させてもらった。また、測定精度が非常に高いGeを用いたγ線検出器も使わせてもらった。
 この結果を12月14日に東北職業能力開発大学校で開催されたサイエンスプラザで市内の小中学生を対象に発表させてもらった。(報告書の最初に添付した写真はそのときの様子である。)


3.まとめ
 高校だけではできないことを本事業で行うことができ、身近な放射線について生徒が主体的に学ぶことができた。生徒の関心が高く、今後も市内だけでなく県内外の土も測定することで放射線の測定マップを作成する予定である。