2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

津西サイエンス・パートナーシップ・プログラム成果報告(津西SPP)

実施担当者

鈴木 隆明

所属:三重県立津西高等学校 教諭

概要

実施の主旨
本校の国際科学科を中心とした小中高接続・連携体制による、地域への科学・理数教育の発信及び環流と、地域の人材育成体制の構築を図る。
次世代の科学・技術を開発することのできる「科学する心」や「探究心」を持ち、論理的思考力、創造力及び倫理観を兼ね備えた科学技術系の人材を育成する。


実施概要
国際科学科1学年 80名対象
コース1 「風力発電」…三重大学工学部連携
参加生徒数19名
コース2 「燃料電池」…三重大学工学部連携
参加生徒数16名
コース3 「LEDと太陽電池」…三重大学工学部連携
参加生徒数12名
コース4 「勢水丸乗船実習」…三重大学生物資源科
参加生徒数4名
コース5 「サイエンスセミナー」…小学校2校連携
三重大教育学部附属小学校 5・6年生30名
本校生徒15名
津市立西が丘小学校 5・6年生16名
本校生徒13名


実施経過報告
4月4日…第1回SPP推進委員会
事業概要・年間計画検討・役割分担等の決定
4月8日…保護者説明
当事業に関する説明
4月24日…生徒対象オリエンテーション
事業概要の説明・各研究テーマ・年間計画等の紹介、説明。各コース希望調査。
5月8日…第2回SPP推進委員会
各コース担当等の検討・記念講演会等
6月12日…第3回SPP推進委員会
各コースの日程、事前学習等
6月21日…コース4「勢水丸乗船実習」事前研修
三重大学 木村准教授による事前研修
(三重大 生物資源学部校舎)
7月4日…コース1「風力発電」
本校教員による事前指導(本校)
7月4日…コース2「燃料電池」
三重大学 今西教授による事前指導(本校)
7月14日…コース3「LEDと太陽電池」
三重大学 三宅准教授による事前指導(本校)
7月30日…コース2「燃料電池」実習(三重大)
三重大学 総合研究棟 今西教授による実習
7月31日~8月1日(1泊2日)
…コース4「勢水丸実習」(海洋実習)
三重大学 木村准教授による伊勢湾内での乗船実習
8月5日…コース1「風力発電」
青山高原ウィンドパーク(風力発電施設)見学
三重大学 鎌田准教授による実習(三重大)
8月7日…コース3「LEDと太陽電池」(三重大)
三重大学 三宅准教授による実習
9月8日…第4回SPP推進委員会事後指導等について
9月22日…コース3「LEDと太陽電池」事後指導
三重大学 三宅准教授による事後指導(本校)
9月22日…コース1「風力発電実習」事後指導
コース4「勢水丸乗船実習」事後指導
本校教員による事後指導(本校)
10月17日…コース5「サイエンスセミナー」事前指導
10月20日~11月7日…「サイエンスセミナー」実験指導(本校)
10月22日…コース2「燃料電池」事後指導
三重大学 今西教授による事後指導(本校)
10月23日…津西SPP記念講演会(本校)
京都大学 後藤 忠徳教授
「地震について考えてみよう~南海トラフ地震とどう向き合うか~」(全校生徒参加)
10月30日…第5回SPP推進委員会サイエンスセミナー実施詳細協議
11月4日~21日 生徒発表会用P.P制作
11月8日…コース5「サイエンスセミナー」(小学校)
三重大学教育学部附属小学校
津市立西が丘小学校
11月9日~12月14日…生徒発表会練習・指導
11月13日…コース5「サイエンスセミナー」事後指導(本校)
12月15日…生徒発表会(本校)
各班代表によるPP発表及びポスターセッションによる発表
中谷財団八嶋様・県教委河合指導主事
三重大学今西教授参観及び講評


実施報告
1「風力発電」
 三重大学で風力に関する実験、実習を受けることで、風力の原理や発電の原理を学び、電気のしくみを理解しながら今後のエネルギー問題や環境問題も含めて考える。
 事前指導では、本校教諭より発電のしくみ等の基礎講義と発電の実・実習に加え2、今後のエネルギー問題等の電気に関する幅広い知識を受講。風力発電所の見学や三重大学での実習に備えた。
 実習では、三重県伊賀市から津市に跨る青山高原に点在する、青山高原ウィンドパーク(風力発電施設)を三重大学鎌田准教授とともに見学、説明を受ける。
三重大学では同准教授による風力実験の実習を実施。風車の組み立てや設置を行い、生徒の組み立てた装置で風洞実験も行った。また風力発電のしくみについて専門席な講義を受けた。
 事後指導では、本校教諭による振り返りを行った。

2「燃料電池」
 三重大学工学部今西教授の講義、実験・実習を通して、燃料電池に関する知識、理解を深め、今後ますます重要になると思われる分野への興味・関心を深める。
 事前指導では、三重大学の今西教授より電池の基礎知識や歴史とその未来等について講義を受けた。
 実習では、三重大学の研究室にて電池の改良実験やスライム状の電池作りなど、電池の素材や通電のしくみについて専門的な実験に参加。大学院生がアシスタントとして参加したため、専門知識以外にも学生生活等の様々な情報交換ができ、大学への興味・関心や将来を考える機会にもなった。
 事後指導でも三重大学の今西教授より、実習を踏まえた燃料電池の未来等の講義を聴き、また発表会に向けてプレゼンテーション術についても講義を受けた。

3「LEDと太陽電池」
 三重大学工学部三宅准教授の講義、実験・実習を通し、LEDや太陽光発電と太陽電池に関する知識、理解を深め、環境への対策として急務な分野への興味・関心を深めた。
 事前指導では、三重大学三宅准教授より、現在の環境問題、光についての基礎的な知識、LEDのしくみや太陽電池等の基礎的な知識の講義を受けた。また光の特性を理解するため、分光器を生徒それぞれが作り理解を深めた。
 実習では、三重大学の研究室にてLEDに関する実験や、ラボでの実習を体験、大学の最先端の施設・設備に触れながら、専門性の高い実験等を体験できた。
 事後指導においても三重大学三宅准教授から、発光ダイオードのしくみ等の専門的な講義を受け、更に理解を深めることができた。

4「勢水丸乗船実習」
 三重大学生物資源学部の実習船で、環境調査と海洋生物調査に参加し、伊勢湾内に生息する海洋生物と環境の関係などを学び、環境問題や海洋生物に対する興味・関心を深めた。
 事前指導では、三重大学の講義室にて生物資源学部木村教授より、海流や伊勢湾内の海洋生物や環境調査の方法等の基本的な講義及び乗船実習の心構え等について学んだ。
 実習は船内1泊2日で行われ、海洋生物の採取、調査やラジオゾンデを使用した気象調査などを行った。日常を離れ、また専門の実習船での各種の実習は、大変貴重な体験となり、環境と生物との関連性を理解することができた。
 事後指導は、本校教諭より行い、調査した結果をまとめながら、更に深めていけるように取り組んだ。

5「サイエンスセミナー」
 地域連携の一環として、津市立西が丘小学校の5・6年生、三重大学教育学部附属小学校の5・6年生を対象に、本校の生徒が小学生に対し科学実験を披露した。実験の楽しさを伝える工夫や、わかりやすい資料の準備等を通して、プレゼン能力の涵養に加え、「教える」ことでの知識の定着と科学への興味・関心を深化させた。
 事前指導は、実験の準備、練習とプレゼンの準備を本校担当教諭とともに行った。
 サイエンスセミナー当日は、小学生及び小学生の保護者も多数参加。「液体窒素を使った実験」4では生花や風船を凍らせてその変化を個々に体感させた。「パラボラを使った実験」では、音圧でローソクの火を消す実験。「時計反応」5では液体が化学変化で次々と色が変わっていく様を披露。「人工イクラ」では、化学薬品と絵の具でカラフルな人工イクラを作った。「水素爆発による実験」では、魔法のように突然爆発する様を楽しく紹介した。
どの実験にも小学生は興味深くまた楽しく参加でき、保護者や小学校教諭からも高い評価を得た。本校生徒はそれぞれの実験に対し演出等を工夫し、小学生の笑顔に大変満足するとともに、実験を通した科学の面白さを体感することができた。

6「津西SPP記念講演会」
京都大学 後藤 忠徳教授(本校体育館)
「地震について考えてみよう~南海トラフ地震とどう向き合うか~」
 全校生徒対象の記念講演会。地震の起こるメカニズムやこの近辺の断層を紹介。「地震の研究は日々進歩しているものの、予知は未だ難しい。だから備えてほしい」などを講話された。専門的でかつ地震研究に向けた想いのこもった講演会で、理系分野への興味・関心を深める機会となった。

7 生徒発表会
本校視聴覚教室
全5コースでそれぞれが実習したものを、コース内の各班でPPを作成。時間の都合で各コース1班のみPPによる発表を行った。
他の班は、PPをプリントアウトし、掲示しながらプレゼンを行い、それぞれ聞きたい班のプレゼンに参加するポスターセッションの方式で発表した。
高校1年生ながら、うまくまとめ上げられた発表は、参加された県教委指導主事や三重大学今西教授からも高い評価を得ることができた。
生徒もこれまでの実験実習を通して、科学に対する視野が広がり、理解も深まった。また発表や多くの人との関わりの中でコミュニケーション能力やプレゼン能力も培われたと考えている。今後の進路選択や将来設計の一助となる貴重な取組となった。


総括と今後の課題
各コースにおいて生徒の満足度は高く、1年生の段階で科学への興味・関心を深めることができ、今後の進
路設計等に向けて成果があったと思われる。
 課題としては、小学校2校との連携に加え、中学校も対象とした連携に発展させること、国際科学科1学年のみで実施している事業を、他学年や普通科に対しどのように連携させるか、などがあげられる。また今後は、学校が用意したコース以外に、生徒自らが探求し、大学等と連携できるようなしくみも探っていきたい。