2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

水中微生物の生体観察

実施担当者

金谷 佳美

所属:福井市社中学校 教諭

概要

1.はじめに
 本研究では、科学部の活動の一つとして、身近な自然環境である学校周辺の環境についていくつかの調査を行った。
 本校福井市社中学校は福井市の南部に位置し、近くには福井運動公園がある。学校周辺にはいまだ田畑なども多く見られ、生徒は四季の変化を登下校の風景からも感じ取ることができる。
昨年度より身近な自然環境に生息する微生物などの観察を行っていたが、今年度は季節毎の水生生物の観察を中心に継続的に調査をおこなった。


2.目的
 季節毎に生息する水生生物の違いや種類の変化などを調査する。


3.調査内容
(1)調査場所
福井市社中学校中庭池
(2)調査項目
・水生生物の種類
・水質環境(COD、水温、天気など)
(3)測定機器
・光学顕微鏡
NaRiKa NECROS Type4-M
・位相差顕微鏡
IPONACOLOGY ODEO-2222
・水質の簡易測定器パックテスト
(COD)共立理化学研究所


4.調査結果
 1年を通じて観察を続けると30種類以上の生物を発見することができた。調査場所である本校の中庭池は河川から水が流れ込むことがない閉鎖的な環境である。外界からの流入が見られないため、閉ざされた生態系の中での生物の種類や数の変化である。中庭池は周囲を落葉樹に囲まれ、コイが生息している。また水面には一部スイレンがあり、藻が繁殖した青水となっている。
観察された生物
・マルミジンコ・シカクミジンコ・ゾウリムシ・クチサケヒゲムシ・ミズヒラタムシ・コレプス・ストロストマム・ハルテリア・ツリガネムシ・ラブドスティラ・タイヨウチュウ・オオアメーバ・マヨレラ・バンネラ・ハルトマンネラ・トリカメーバ・フセツボカムリ・アオミドロ・イカダモ・クンショウモ・ゴレンキニア・スタウラストルム・セレナストルム・ミドリムシ・ペラネマ・ワムシ・渦虫・ケンミジンコ・ノープリウス幼生・センチュウ


5.考察
 マルミジンコは冬期にも多く見られ、抜け殻も多く観察された。冬期に観察できたのはマルミジンコ、カイミジンコがほとんどであった。しかしながら、マルミジンコは5月頃より数は減少しはじめ、シカクミジンコが多く見られるようになった。また5月にはオオアメーバが増えはじめ、大きいものはマルミジンコと同じくらいのサイズであった。しかし、6月下旬になると全く見られなくなった。マヨレラの仲間は7月頃より見られるようになったが、クロレラ共生の個体は見られなかった。水温が下がる10月頃より、見られる生物の種類や数は減り始めた。
 数の変化が顕著であったものは以上である。
 その他、以下のような生物の様子が観察できた。
イカダモ・・・細胞の数は決まっておらず個のものが一番多く、5つつながっているものもあった。
ペラネマ・・・光学顕微鏡では観察が難しかったが、位相差顕微鏡では細胞の表面の短い鞭毛まで観察することができた。
コレプス・・・小型であるが、素早く泳ぎ回り、弱った他の生物を捕食していた。
ハルテリア・・・小型で細胞は丸く、2種類の繊毛が観察できた。


6.まとめ
 今年度は、中庭池に生息する生物の種類や、数の変化を知ることができた。また、個々の生物についてその特徴や捕食の様子などを観察することができた。