2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

気柱共鳴装置による定常波の実験

実施担当者

岡﨑 金雄

所属:宮城県富谷高等学校 教諭

概要

1.はじめに
富谷高校では,今年度2学年60名の生徒が物理を選択している。物理選択者のほとんどが大学進学を希望しているが,物理を苦手と感じている生徒が少なからずいる。その理由の一つとして,生徒実験をあまり行っていないために物理現象を体験的に理解していないことが考えられる。教師の演示実験と説明のみでは,物理現象の理解度が半減する。また,物理に対する意欲や興味も向上しにくいと考えられる。
気柱の共鳴装置を用いた本実験に関しても, 昨年度までは教師の演示実験のみの授業であ ったが,今回初めて生徒実験を実施したので その成果について以下に報告する。

2.実験の概要
トロンボーンやたて笛などの管楽器では, 管の中の気柱の長さを変化させて音の高さを変えている。気柱の共鳴という身近な物理現象の理解を深めるために,今回の生徒実験は最も効果的な実験であると考える。
本実験は,ガラス管内に途中まで水を入れ, ガラス管口近くでおんさを鳴らし,このときに生じるガラス管内の気柱の共鳴を利用して,おんさの振動数を求める実験である。
●目的
ガラス管内に途中まで水を入れ,ガラス管の管口近くでおんさを鳴らす。このときに生じるガラス管内の気柱の共鳴を利用して,おんさの振動数を求める。
●準備
気柱共鳴装置(管口からの長さの目盛りを刻んだガラス管,ゴム管,水だめ,支柱,スタンドからなるもの),おんさ,おんさをたたくゴム付きつち,温度計
●手順
(1) 水だめを管口あたりに支持して,ガラス管内 に水を入れる。水面の位置はガラス管の方は管口 近くに,水だめの方は底の近くになるようにする。
(2) ガラス管内の気柱の温度t1[℃]をはかる。
(3)  管口から離れたところでおんさをたたき,そのままおんさを管口に近づける。
(注)管口近くでおんさをたたくと,ガラス管が割れることがあるので注意する。
(4) 水だめをゆっくり下げていき(ガラス管内水面をゆっくり下げていき),気柱が最も強く共鳴して大きな音を発したときの,ガラス管の管口から水面までの距離 L1[m]をはかる。
(5) さらに水だめをゆっくり下げていき,2回目の共鳴点をさがして,そのときの管口から水面までの距離L2[m]をはかる。
(6) (4),(5)と同様にしてL1, L2 を数回はかり,L2-L1 の平均値を求める。これから,おんさによる音波の波長 λ(=2(L2-L1)[m])を求める。
(7)  ガラス管の気柱の温度t2[℃]をはかり,t1とt2 の平均値をt[℃]とする。このtを用いて,V = 331.5 +0.6 t の式から音の速さV[m/s]を求める。(7)ガラス管の気柱の温度t2[℃]をはかり,t1 とt2 の平均値をt[℃]とする。このtを用いて,V = 331.5 +0.6 t の式から音の速さ V[m/s] を求める。
(8)  おんさの振動数f[Hz]を(注:数式/PDFに記載)から求める。

●結果

(注:表/PDFに記載)

● 気温の測定
実験前t1=    ℃   実験後 t2=    ℃
平均 t=    ℃
● 音の速さ  V = 331.5 + 0.6 t =    m/s
● 波長 λ =2(L2-L1 )=    m
● おんさの振動数 f=(注:数式/PDFに記載)= Hz

●考察
(1)共鳴しているときの気柱は定常波を生じているが,このとき定常波の腹の位置は,開口端(管口)より何cm 外側の所にあるか。

(2)波長λを求めるときに,λ=2(L2-L1 )とせずに,λ=4L1 としてもよいだろうか。

(3)温度が上がるとL1, L2 の値は,それぞれどのように変化するだろうか。

○気付いたこと

3.生徒の理解・反応と実験レポートの感想
(1)生徒の理解・反応について
本実験を行っている生徒の様子を観察し気がついたことを以下に示す。
気柱の共鳴については授業で事前に説明を行っていたが、共鳴して音が強く出るのを実際に聞いて予想以上に驚いている生徒が多かった。第一共鳴点はすぐに見つけていたが, 第二共鳴点については,第一共鳴点の3倍の位置にあることになかなか気が付かないようであった。実験室内で同時に実験を行うと他のグループの共鳴音が聞こえるために聞き取りづらいので廊下に出て実験を行うグループもいた。また,水だめを上下することによりガラス管の水位が共に上下することの理由を知りたがっている生徒もいた。あえて説明をしないでいると,ガラス管の管口を手でふさいで試していた。
その他では,規定の実験が終わった後で, ガラス管に向けて自分の声を発して共鳴しないか試している生徒,おんさを机や筆箱などに触れて共鳴音の違いを観察している生徒もいた。これらは予想外の行動であったが,これらも本実験を行った成果の一つであると考えたい。
(2)実験レポートついて
実験レポートの考察については,まだ慣れ ていないため記載が不十分な生徒が多かった。
定常波の腹の位置と管口との差(開口端補正)の計算については,半数以上の生徒は良く出来ていた。
温度が上がると共鳴点の位置がどのよう に変化するだろうかという問に対しては,音速が大きくなることは分かっても,気柱の振動数と波長について混同して答えている生 徒が多かった。それでも数人の生徒は L1,L2 が長くなることを予想し理解できているようであった。
今回の実験を通しての生徒の感想としては,「音は共鳴することで大きくなることを初めて体感することが出来た」「おんさの振 動がすごかった」「思ったより開口端補正は小さいことがわかった」「ある程度共鳴点を予想して行えばもっと早く見つけられたと思った」「ガラス管の管口をふさぐと水面が上下しないことがわかった」「何度やってもある程度同じ位置で共鳴した」「共鳴音の高さは変わらないことを確認できた」などがあった。
これらの感想から本実験を行うことで気柱の共鳴についての理解が深まったと考える。授業の最後に,「今回は音速と温度の関係式を用いておんさの振動数を求めたが,振動数が既知のおんさを用いることで逆に音速を求めることもできます」と話したところ,興味を持ってくれた生徒がいたので今後課題研究などで行ってみたいと考えている。

4.まとめ
本校においては,今回,初めて気柱共鳴装置を用いた生徒実験を行った。昨年度までは演示で簡単に説明する程度であったが,生徒一人ひとりに実験を行わせることで,共鳴という身近な物理現象について生徒の理解を深めることができたと考える。また,実験をとおして生徒のいろいろな反応や発想を見ることができたのも本実験の成果である。