2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

日本の水問題に関する調査研究

実施担当者

米本 慶央

所属:宮城県仙台二華中学校・高等学校 教諭

概要

1 はじめに

中高一貫教育を通して,仙台市内の水間題から宮城県,日本全体の様々な水に関する間題について系統立てた調査研究を行うとともに,その成果を発表する機会を設けました。今回は以下の活動内容を報告します。

2 フィールドワーク並びに成果発表の報告

2-1 中学2,3学年北上川フィールドリーク~ヨシ原の再生から,環境問題を考える~
平成28年7月8S(金),石巻市北上町橋浦大須地区の北上川河日付近において,中学2?3年生合同で「北上川フィールドワーク」を実施しました。主な活動内容は,震災によって失われた「ヨシの移植活動」と,「干潟の生物の観察」です。東北工業大学の山田一裕教授の指導のもと,生徒は一生懸命ヨシの移植活動を行いました。また,本校高校教諭の指導において行った「干潟の生物の観察」では,生徒は生き生きと観察?記録に取り組みました。多くの生徒がカニやハゼ,ヤマトシジミ,ゴカイなどを捕獲し驚きと歓声が聾きました。

今回,ヨシ原を守る活動に実際に参加し,現場を見たり体験したりすることで,環境問題について考えを深めました。

2-2 高校1学年北上川フィールドワーク

高校1年生236名が,平成28年9月29日から1泊2日の日程で北上川本支流流域の数力所で「北上川フィールドワーク」を行いました。
1日目は,「Aコース:利水」,「Bコース:治水」,「Cコース:水争い」のテーマ別に3つのコースに別れて関連施設を訪問しました。Aコースは,新庄浄水場と米内浄水場(盛岡市)で水源の水の浄化方法について,特に緩速濾過について学習しました。Bコースは北上川学習館(-関市)で北上川の概要と災害とその対策の歴史,四十四田ダム(盛岡市)でダムの役割等を学びました。そして,Cコースは胆沢平野士地改良区職員の案内で寿庵堰,胆沢ダム,徳水園円筒分水丁等(奥1州市)の水争い関連施設を見学しました。
2日目は,4月から生徒が育てていたアキグミと購入したナナカマドを,士壌が酸性化して植物が育たなくなった松尾鉱山跡地約3000m吋こ計1200本植樹しました。この植樹の取り組みは,NPO法人環境生態工学研究所の指導及び,松尾鉱山跡地再生の森協議会の協力のもとに行われ今年度で7年目となります。植樹の前後には先輩達が植樹した苗がどのように育っているかを観察しましたが,過酷な自然環境のもとで半分くらいは枯れており,一度人間が破壊した生態系の復元がいかに大変かを実感しながら帰ってきました。

2-3 高校2学年山形フィールドワーク

平成29年1月27S(金)・28S(土)に本校の高校2年生4名が山形県南陽市,山形市長井市,
山形県置賜郡白鷹町を訪れ,水害調査やフットパスの観光に及ぼす影響に関する調査を行いました。南陽市では,南陽市役所防災課を訪間し,南陽市消防団長,総合防災課消防防災係長,危機管理課消防防災係の方々にインタビュー調査を行いました。また,大規模洪水が発生した地区の方から当時の話や被害状況について意識調査を実施しました。

山形県置賜郡白鷹町では,道の駅白鷹ヤナ公園内の食堂の事務室の方へ道の駅ができる前後におけるヤナ公園の利用客や観光客の状況について話を聞きました。長井市では,主な商店への「フットパッス」や)IIへの愛着度,市内を流れる最上)IIの意識調査を実施し,フットパッスがある最上)II河)II敷を見
学しました。
生徒は,研究調査の目的や方法について,直接体験できたことに大いに喜びを感じていました。今回のフィールドワークで得られた調査データを分析し,まとめました。普段,学校以外で大人と話す機会が少ないと思われますが,初めて訪れる土地でそこに住んでいる人たちと言葉を交わすという貴重な機会を与えていただき,感謝申し上げます。

2-4 高校3学年国際学会

平成28年8月2日(火)から8月4日(木)の3日間,中国の北京市で行われました「AsiaOceaniaGeosciencesSociety(AOGS)」という国際学会で本校の裔校3年生4名が2年生から研究していた成呆を英語で発表しました。そのうち,2名はポスター発表を行い,大学院生や研究者と混じって2時間に渡って発表や質疑応答をしました。高校生の発表ということもあり,多くの方々が熱心に質問をしてくれました。また,2名は口頭発表で,発表7分,質疑応答3分でした。質疑応答では
限られた時間の中で多くの方々から質問を頂きました。
多くの方々が難しい単語を使わずに分かりやすく話してくれたおかけで,生徒は積極的にコミュニケーションをとることができ,有意義な時間を過ごすことができました。
今後は,今回得た経験を自信に変えて大学進学後に国際学会で発表できるよう勉学に励む決意をしました。

2-5 東北地区での課題研究発表会

平成29年3月18日(士)・19日(日)の2日間にかけて,仙台白百合女子大学等を会場として「第1回東北地区SGH課題研究発表フォーラムin杜の都」が開催されました。東北地区の高校生約100名が一同に集まり,口頭(日本語/英語)及びポスター(日本語/英語)により,課題研究を発表しました。本校からは,3名が日本語による口頭発表,5名が英語による口頭発表,3名がポスター発表を行いました。発表後は,大学の先生方や他の麻校生等から,研究のまとめや
次の研究につながるような質間や助言をいただきました。
また,発表会の後に他校の高校生との交流の一環で,模擬国連活動を行いました。活発な討論や意見交換ができ,非常に有意義な機会となりました。

3 まとめ

フィールドワークについては,中高連携して北上川の上流から下流までを系統的に学ぶとともに,生徒一人ひとりが主体的に取り組むことができたと感じています。来年度以降も継続して,災害や開発による環境破壊について考え,環境保全活動を続けていく予定です。
外部発表については,国際学会や東北地区の発表会に参加することができました。参加費用や旅費がかかる中で,今回助成金を頂いたおかげで多くの生徒が発表し,討論を通して研究を深めることができました。特に英語による発表機会は少ないので貴重な経験をすることができました。来年度以降も継続したいと考えています。