2003年[ 技術開発研究助成 ] 成果報告 : 年報第17号

微小空間内に局在する増強電場を用いる超高密度・高感度蛍光分析

研究責任者

石田 昭人

所属:大阪大学 産業科学研究所 機能分子化学研究部門 助手

京都府立大学 助教授

概要

1.はじめに
 蛍光を利用した免疫分析や遺伝子分析は高感度かつ高速分析が可能であるため基礎科学から臨床まで幅広く応用されている。通常は96~1536ウェルのマルチウェルプレートが用いられ、試料の処理から定量までが完全自動化されて分析のハイスループット化に貢献している。さらに、直径百μm程度のドットを基板上に集積して蛍光分析を行うマイクロアレイの発展も著しい。しかし、基礎科学においては研究の急速な発展拡大、臨床においては各種のウィルス疾患やアレルギー疾患などの激増により検体数の増加は留まるところを知らない。最新の1536ウェルでも口径は1mm以上あり、マイクロアレイとはいうもののドットサイズは100μm以上もあるため、これらでは近い将来に対応できなくなることは容易に想像できる。従って、サブμmのサイズのウェルやドットを集積させたマイクロチップ上の分析を早急に実現しなければならない。しかし、ここには大きな壁が存在する。
 近年、CCDの性能向上により顕微蛍光分光はさほど困難ではなくなり、マイクロポンプやインクジェットプリンタの技術向上によりnl~plオーダの極微少量液体の取扱いも十分可能となった。しかし、試料体積が減少すれば励起分子数が減少するうえに外乱因子の影響は指数関数的に増大してしまう。したがって、マイクロチップ蛍光分析を実用化するには、1)蛍光試薬と酸素などの退色促進物質の相互作用を抑制するために閉じた微小空間に試料を封入し、なおかつ2)励起光のエネルギーを効率よく蛍光性分子に伝達するとともに、3)得られた蛍光を効率よく検出器に導入する方法論を開拓する必要がある。しかも、これらは強く相関しているので包括的な解決策が求められていた。
 そこで本研究ではその解答として、厚さ数百nm~数μmの金薄膜に穿けた直径数百nm、すなわち、励起光の波長と同程度のサイズの穴、および幅数百nmのスリットを「ナノウェル」として用いることを提案し、その有効性を実証することを目的として研究を展開した。金やガラスの表面は1)各種の蛋白や核酸を容易に修飾できるため、免疫・遺伝子分析の場として最適であるうえ、2)金薄膜に照射された光のエネルギーが数百倍の強度をもつ「表面プラズモン電場」に変換・増強されてウェルの内側に強く局在化し、内部に封入された試料の高効率励起を可能にする。さらに、3)ウェルが光導波路として機能するため蛍光の発散が抑制され開口部から高効率検出できる、というアドバンテージがある。
 本研究の鍵技術は「金ナノウェルによる表面プラズモン電場の局在化」である。金や銀薄膜に全反射条件で光照射すると光がプラズモン電場に変換・増強され表面を長距離伝播する。本研究責任者はこの電場を表面修飾分子の励起に応用した蛍光センサーや湿式太陽電池の研究を展開してきたが1)、その途上、金表面に故意に波長サイズの穴を穿けてみたところ、伝播してきたプラズモンが散乱されて穴の内部と周縁に非常に強い増強電場が発生することを見い出した。これをもとに「この穴を分析用ウェルとして応用できないか?」と考えたのが本研究のコンセプトである。
 このような増強電場を蛍光励起に応用することの意義は単に超高感度・高密度分析の実現に留まらず汎用性の面でもきわめて重要である。すなわち、同じ励起パワーで格段に強い蛍光信号が得られるならば、それは低価格の励起・検出系でも十分な信号強度が得られることを意味する。たとえば、高価なレーザや冷却CCDなどを用いることなく、安価な発光ダイオードやデジタルカメラ用CCDなどを励起・検出系に用いて安価な在宅モニター用の血清分析装置を開発し、高齢化した地域住民の健康維持に応用する、といったことも期待されるからである。
2.背景となる原理
2.1表面プラズモン共鳴の原理
 ガラスの表面にアルミやクロムなどの金属の膜を蒸着したものが鏡であり、表(金属側)から見ても裏(ガラス側)から見ても自分の顔が映って見える。これは入射光がほとんど全て反射されるからにほかならない。ところが金や銀を数十nmの膜厚で蒸着した鏡の場合、ガラスイ則からある角度で覗いてみると黒く見える。すなわち、鏡であるにもかかわらず入射光が反射されなくなるのである。このような条件では入射光は金属の自由電子の集団運動を誘起して表面プラズモンと呼ばれる電場に変換される2)。表面プラズモンの電場は光と類似した性質をもつが、表面から垂直方向には伝播せず、表面ごく近傍に局在する近接場である。一方、水平方向には可視光の場合、数μmも伝播する。表面プラズモンを分光に応用する際には図1のようにガラスプリズムの表面に金や銀の薄膜を形成して、プリズム側から光を照射する(ATR:全反射減衰法と呼ばれる)3)。複素誘電率の制限から実用的な金属は金と銀に限定される。この共鳴条件は膜厚や入射角に強く依存するほか、金属表面に分子を修飾した場合、その膜の屈折率の変化にもきわめて敏感に応答する。これを応用すれば抗原一抗体などの分子間相互作用のダイナミクスを観測可能であるため「表面プラズモン共鳴分光装置」は生化学研究には不可欠なツールとなっている4)。
2.2表面プラズモン電場による分子の励起と電場増強
 従来の表面プラズモン共鳴分光は単に金属表面の屈折率の変化を観測するものであり、表面プラズモンのエネルギーは最終的には熱となってしまう。前述のように、表面プラズモンの電場は光と類似した性質をもつため、蛍光性分子の場合は電子励起が可能なはずである。しかも、表面プラズモンの電場は入射光の電場の数十~数百倍も増強される「電場増強効果」をもつことが知られている5)。さらに、表面プラズモンの電場は表面近傍に局在し、長距離伝播するので金表面に修飾された分子を励起して蛍光分析を行うにはうってつけである。そこで、蛍光性試料としてポルフィリンの自己組織化単分子膜を用いて表面プラズモン励起を検証したところ、明瞭な蛍光が観測され、従来行われていた薄膜表面の直接光励起よりも遥かに容易に高感度が得られることが明らかになった1)。さらに、図2に示すように、蛍光の励起スペクトルは長波長へ行くほど増強され、表面プラズモンの増強電場が金表面上に修飾された蛍光性分子の励起に応用可能であることが実証された1)。
 そこで、本研究では金表面に光波長サイズの孔やスリットを作製し、伝播してくるプラズモン電場を散乱させるとともに孔の周囲と内部に強く局在させ、その局在電場を孔の内部に封入した蛍光性試料の励起に応用するとともに、孔の内部を免疫反応の場として応用する実験を計画した。得られた結果について以下に示す。
3.結果
3.1金ナノウェルの作製法確立
1)プロジェクション法
 金薄膜に孔を開ける方法として最も容易かつ安価で実現可能なプロジェクション法を応用した6)。これは影絵の原理で、蒸着源と基板の間に物体を置くことでその形状が投影された金薄膜が形成されることを利用するものである。本研究では市販の直径数百nm~数μmのポリスチレンラテックスを用いた。ラテックスを含む液を希釈して石英基板上に分散させ、ごくゆっくりと蒸発させた後、金を数十~数百nmの膜厚で蒸着し、さらに有機溶媒中で超音波洗浄してラテックスを溶解除去した。原子問力顕微鏡で観測したところ、図3に示すように、ラテックスの直径と同じ内径をもつ多数のナノウェルが金基板上に形成することができることが明らかになった。また、蛍光性分子の修飾に供する場合、一連の直径をもつラテックスを混合して蒸着を行えば複数の口径のウェルを同時に作製することも可能である。但し、原理上、ウェルの位置制御が出来ないのが難点である。
2)フォトリソグラフィー法
 フォトレジストをスピンコートした厚さ1μmの金薄膜にクロム製フォトマスクを用いて露光し、沃化カリウム水溶液によるウェットエッチングまたはアルゴンイオンエッチングによって幅数百nm~数μmのスリットを形成した。ウェットエッチングではスリソト側面の侵食が激しく、500nmのスリット形成が限界であった。もともとフォトマスクのパターン自体の限界が300nm程度なので金薄膜の場合はこれ以上細いパターンの形成は困難なようである。
3.2ウェルおよびスリットの分子修飾
 分子修飾の前に予備実験としてナノウェルおよびスリット内に修飾用溶液が充填できるかどうかを検証するため、まず、金薄膜上に希土類錯体(EuTEA)のエタノール溶液を塗布してカバーガラスを圧着し、蛍光顕微鏡で観測したところ、直径400nmのウェルおよび幅500nmのスリットから希土類錯体特有の蛍光が観測され、エタノール溶液が充填されていることが確認された。そこで、次に以下の方法でウェルへの試料充填または分子修飾を行った。
1)蛍光体薄膜による表面全体の被覆
 ナノウェルを形成した金薄膜の表面プラズモン励起において、伝播する表面プラズモン電場がウェルによって散乱され、ウェルの内部への電場局在を実証するため、金薄膜表面全体を希土類錯体(EuTFA)のエタノール溶液に浸し、キャスト膜を形成した。
2)ウェル内部への蛍光体の充填
 微小サイズのウェルを分析に応用するうえで、試料水溶液を特定のウェルに導入することが求められる。そこで、隣接するウェルにまで試料水溶液が干渉して汚染しないよう、ナノウェルを形成した後に金薄膜表面をデカンチオールで処理して疎水化を試みた。疎水化した金薄膜表面にBODIPY-TMRの溶液を展開して急速蒸発させると、ガラス表面が露出しているウェル内部のみに試料の液滴が残留し、アモルファス状のBODIPY-TMRを充填することができた。これをウェル内部に局在した表面プラズモン電場による励起実験に供した。
3)ウェルおよびスリット底面の分子修飾
 ガラス表面に金薄膜を強力に接着するために、チオール末端をもつシランカップリング試薬でガラス表面をあらかじめ修飾しておき、その上から金蒸着を施している。このため、ガラス表面が露出しているナノウェルの底面にはチオール基が植え込まれている。このチオール基とヨードアセトアミド基などの結合反応を利用して、ウェルの底面に蛍光性分子や免疫分析用の分子を修飾することができる。電場局在の実証用試料としてはチオール基に特異的に反応するBODIPY系の蛍光試薬を用い、また、抗原抗体反応の模擬実験用としてはあらかじめウェル底面にビオチン化を行い、つづいて蛍光標識したアビジン溶液を接触させてウェル内における両者の結合を観測した。
 チオール基以外にアミノ基を用いることも試みたが、アミノ末端をもつシランカップリング試薬でガラス表面の修飾を行った場合、ガラス表面に形成される膜の均一性が悪く、シランカップリング試薬がしばしば団子状となって後続の修飾反応がうまく行かない場合が多かった。ガラス表面の修飾反応を行っている他の研究者との議論でもアミノ化は非常に難しいとの声が多く、第一段階の修飾反応としてはチオール化が最も適当であると判断された。
3.3顕微分光
 顕微分光による蛍光像は倒立顕微鏡(Olympus IX-70)および本研究助成により新たに購入した冷却CCD(Diagnostics SPOT・Jr)を用いて観測した。励起光源と照明方法は後述するように実験に応じて適宜選択した。
1)ナノウェルによる表面プラズモン場の散乱とウェル内部への電場の局在化
 口径1μmのウェルを形成した金薄膜上に希土類錯体(EuTFA)をスピンコートした試料をガラスプリズムを介して波長400nmの紫色半導体レーザを用いて入射角70°でATR照明を行い、560nmカットオフフィルターで切り出した蛍光像を倒立光顕で観測した。図4に示すように、視野全体がATR照明を受けており、誘起された表面プラズモン電場によって金薄膜上の希土類錯体薄膜が蛍光を発しているが、所々に見られるウェルの内部が周囲の平坦領域と比較して格段に強い蛍光を発しているのがわかる。また、ウェルからコマ状のテールが見られており、励起光がウェルによって強く散乱されていることがわかる。このことから、金薄膜上を伝播する表面プラズモン電場がウェルのような微小構造体によって散乱され、ウェル内部に局在することが明らかになった。
2)ウェル内部への試料充填
 蛍光色素BODIPY・TMRを充填したナノウェルの透過および蛍光イメージを図5に示す。試料が充填されているウェルと充填されていないウェルが蛍光像で容易に区別できる。ウェルからはみ出している試料はごくわずかに過ぎず、隣接するウェル同士のコンタミネーションもないことから、インクジェットプリンタ用ノズルなどを使って試料の微小液滴を特定のウェルに対して噴射するような用途にも耐えうるものと思われる。
3)ナノウェルによるプリズムを用いない表面プラズモン電場の誘起
 プリズムを用いたATR照明は効率よく表面プラズモン電場を誘起できるが、大きなプリズムと厳密な入射角制御の必要性は装置設計上の自由度が低く、好ましいものではない。一方、金薄膜に形成した光波長程度の口径をもつウェルを用いれば、ウェルのエッジの効果によってプリズムなしで表面プラズモン電場を誘起できる可能性がある。そこで、底面に蛍光性分子を修飾したウェルを用いてその可能性を検討した。2.3)で示したように、ウェル底面に修飾されたチオール基と特異的に反応する蛍光試薬を用いてウェルの底面のみを蛍光修飾することを試みた。図6に蛍光試薬としてBODIPY-FL-IAを用いて底面を修飾した500nmウェルの蛍光像を示す。照明は400nmの紫色半導体レーザを用いて30度の入射角で金薄膜表面をグレージング照明し、蛍光観測はフルオレッセイン用のキューブを用いた。
単分子膜であり、しかもナノメータオーダの微小ウェルであるにもかかわらず、ウェル底面の蛍光が明瞭に観測されているのがわかる。さらに、ウェル内部では周縁部が強い蛍光を示しているのがわかる。凹凸をもつ金の構造体に光を照射すると、エッジ部分がプリズムなしで表面プラズモン電場を誘起することが知られている。このことから、今回観測された周縁部の強い蛍光にはウェルのエッジによって誘起された表面プラズモンの増強電場が底面に修飾された蛍光性分子の励起に関与している可能性が高い。BODIPY・FL-IA以外に、ローダミンやテキサスレッドなどの一般的な蛍光色素でも同様の結果が得られた。
4)ナノウェル中における抗原一抗体反応
 ナノウェル中における抗原一抗体反応を実証するため、抗原一抗体反応と同様にきわめて大きな安定度定数をもつビオチンーアビジンの結合反応の蛍光検出を試みた。ビオチンーアビジン系は免疫反応はもちろん、遺伝子分析においてもプローブ分子を修飾固定化するためのジョイントとして応用可能であることから実際の抗原一抗体ペアを用いる前の実証実験の対象として選択した。ウェルサイズの効果を検討するために一連の粒径のラテックスを混合してウェルを形成した。金の膜厚は100nmウェルのサイズは最小100nm~最大3μmである。上述のようにウェル底面のガラス表面には金薄膜を接着するためのSH基が修飾されているので、これと特異的に反応するヨードアセチル基をもっビオチン化試薬N・ビオチノイルーN'一ヨードアセチルエチレンジアミン(Molecular Probes社)を修飾し、表面を一旦洗浄・乾燥させたうえで、
テキサスレッドで修飾されたアビジン(ウルトラアビジンーテキサスレッド:Leinco Technologies社)の希薄溶液に浸漬してビオチン一アビジン結合を誘起し、テキサスレッド用蛍光キューブを用いる通常の落射照明で蛍光像を観測した。図7に示すように400nm-3μmのウェルからは明瞭な蛍光像が得られており、これらのサイズのウェルではウェルの底面に修飾されたビオチンと溶液中のアビジンが結合したことがわかる。一方、100nmのウェルは透過像では見えるものの、蛍光はほとんど見えない。ウェルのアスペクト比をなるべく大きくするために金薄膜の膜厚を100nmとしたため、粒径100nmのラテックスが超音波照射で抜けず、ウェルが形成されていない可能性もあるが、試料溶液に含まれる成分と容易に反応を起こすためにはやはり500nm程度の口径が必要であるといえる。励起波長を考慮すれば、表面プラズモン場が最も効率よくカップルするのは口径200nm前後のウェルと考えられるが、現時点ではウェルごとに光子数を計数する計測系がテスト中であるためウェルのサイズとウェルの面積当たりの蛍光強度の相関から明瞭な集光効果を確認するには至っていない。
4.結論
 以上の結果をまとめると、
 1)ガラス基板上にラテックス粒子を分散させ、その上から金を蒸着した後に粒子を除去することにより、金薄膜に光波長サイズの孔を形成することができた。
 2)フォトマスクを用いるリソグラフィーとウェットおよびドライエッチングによって幅500nm程度のスリットを厚さ1μmの金薄膜に形成することができた。
 3)ナノウェルの底面には容易に分子修飾が可能であり、しかも、ウェルの周囲にアルカンチオールを修飾し、疎水性を持たせてウェル間のクロストークを避ける方策の有効性が確認できた。
 4)500nm程度までのサイズならば、ウェルに液滴を乗せた場合、溶液試料中の分子とウェル底面に修飾された分子を相互作用させることが可能であった。
 5)ナノウェルによって金薄膜上を伝播してくる表面プラズモンの電場を強く散乱させることができ、その結果、ウェルの内部に電場が局在し、ウェル内部に充填された試料やウェル底面に修飾された分子を効率よく電子励起できることが明らかになった。
5.現時点で明らかになった課題と今後の展開
 1)口径100nmのウェルでは分子修飾がうまくいかなかった。これはウェルの形成自体が不完全である可能性が高いが、口径がこの程度にまで縮小されると液滴が内部に浸入していない可能性もある。紫外光励起で表面プラズモンによる増強効果を得るには100nm程度の口径が必要であるため、ウェルの形成と修飾の可否を検証する必要がある。
 2)表面プラズモンの増強効果の定量的な評価ができていない。励起光の波長とウェルの口径あるいはスリット幅と単位面積当たりの蛍光強度の相関を光量子計数法により精密に検証する必要がある。この課題について現在集中して研究を行っている。
 3)ナノウェルの精密作製法の確立が不可欠である。本研究ではナノウェルの応用を実証することを目的としていたため、簡易なプロジェクション法をおもに用いてナノウェルを作製した。しかし、この方法ではウェルの位置決めが不可能なため単一のウェルとして使うことは難しい。現時点ではマルチウェルプレートの底面に500nm程度のナノウェルを多数形成することで蛍光増強効果を得るのがナノウェルの応用法として最も現実的かも知れない。本格的にマルチウェルプレートのエレメントとしてナノウェルを応用するには電子ビームリソグラフィーを用いて規則的に配列を行う必要がある。とくに、ナノウェルを規則的に配列すると、特定の位置のウェルに表面プラズモンの電場が集中するアンテナ効果が発現することが指摘されている。その効果を得るうえでもナノウェルの精密作製法の確立が不可欠であろう。
 最後に、本研究で狙った光一金属一分子3者の相互作用の解明と応用は単に分析技術だけではなく、分子エレクトロニクスデバイスを始めとするナノテクノロジーの根幹となる重要事項である。光一金属、光一分子、あるいは金属一分子の相互作用については膨大な研究があるが、3者の相互作用の研究は緒についたばかりである。本研究責任者は小さな大学での孤軍奮闘ではあるが、この分野のパイオニアとなるべく、小粒ではあってもぴりっと辛い研究を展開することで日本のものづくりの立て直しに貢献すべく鋭意努力することを誓って本稿を終わらせていただく。