2002年[ 年報 ] : 年報16号

年報16号

中谷電子計測技術振興財団

概要

目次

設立の趣意
役員・評議員および事業の概要
平成13年度事業概要
I 技術開発に対する助成事業
技術開発研究助成金贈呈式の開催状況
II 調査研究に対する助成事業
III 技術交流に関する支援事業
平成11年度(第16回)技術開発助成研究成果報告
平成13年度技術交流助成成果報告
技術開発に対する研究助成状況
技術交流に関する助成状況


設立の趣意

 わが国経済社会の高度化は,1970年代以降急速に進展しています。これは,わが国の唯一の資源でもある恵まれた頭脳資源を,十分に活用することで達成されたものです。特にコンピュータを始めとするエレクトロニクス技術の発展が重要な役割を果たしてきました。
 これらのエレクトロニクス技術の発展は,優れた電子計測技術の基盤の確立か無くしてはありえません。今後わが国のエレクトロニクス技術の一層の発展を実現する上で,電子計測技術基盤の一層の強化か大切であります。電子計測機器がエレクトロニクスのマザー・ツールであるといわれる所以でもあります。
 政府におかれましても,その重要性を十分認識され,電子計測技術甚盤の確立のためにいろいろな施策を展開されております。
 このような客観的諸情勢から故中谷太郎初代理事長は,電子計測技術の発展を推進し,産業基盤の確立に貢献することを強く念顧され,昭和59年4月に財団法人「中谷電子計測技術振興財団」が設立されました。
 当財団は,技術開発・技術交流の推進,技術動向等の調査研究等を行うことにより,電子計測技術の基盤の確立に微力をつくす所存でございます。このような主旨をこ理解の上,当財団にご指導,ご協力を賜わりますようお願い申し上げます。


設立年月日 昭和59年4月24日
基金 6億2千万円

役員
理事長
三輪 史郎 財団法人沖中記念成人病研究所理事長 東京大学名誉

専務理事
家次 恒 シスメックス株式会社代表取締役社長

理事
浅野 茂隆 東京大学医科学研究所附属病院院長・敦授
輕部 征夫 東京工科大学片柳研究所教授 東京大学名誉教授
菅野 剛史 浜松医科大学副学長・附属病院長
中谷 正 シスメックス株式会社取締役
栗山 榮治 当財団事務局長

監事
秋山 純一 多摩大学・同大学院赦授(公認会計士)
田中照明 ASGマネジメント株式会社常務取締役(公認会計士)


評議員
川越 裕也 東大阪市立中央病院名誉院長
藤井 克彦 大阪大学名誉教授
斎藤 正男 東京電機大学工学部敦授 東京大学名誉教授
屋形 稔 新潟大学名誉敦授
八幡 義人 川崎医療短期大学教授 川崎医科大学名誉教授
戸川 達男 東京医科歯科大学生体材料工学研究所教授
雪本 賢一 シスメックス株式会社専務取締役
和歌 光雄 シスメックス株式会社常務取締役


事業の概要
電子計測技術の発展を推進し,産業基盤の確立を図ることにより,わが国経済社会の発展および国民生活の向上に資することを目的として,次の事業を行います。
■電子計測技術分野における技術開発に対する助成
電子計測技術分野における先導的技術開発活動を促進するため,これに助成します。
■電子計測技術分野における技術動向等の調査,研究
電子計測技術分野の実態および種々の問題について調査研究を行い,または,助成します。
■電子計測技術分野における技術交流に関する支援
電子計測技術分野における技術の交流を推進するため,内外の研究者等の交流に対する助成,シンポジウムの開催等を行います。
■電子計測技術分野に関する情報の収集,提供
電子計測技術に関する情報文献,資料等を収集整理し,その広汎な利用を図るための種々の活動を行います。

特定公益増進法人当財団は1998年9月に通商産業大臣より「特定公益増進法人」の認定を受けました。


平成13年度事業概要

I 技術開発に対する助成事業
 国際経済社会において、大きな位慣づけにある我が国にとって、国際的協調をはかりつつ、経済産業の発展を進めてゆくには、新たな局面に対処するための産業構造の変換をはかるとともに先導的技術開発の創出が急がれている。
 このため、当財団においては、中核事業として電子計測技術分野における先導的技術開
発活動を促進するよう、昭和59年度から大学及びこれに準ずる研究機関に対して研究助成
を実施してきたが、平成13年度の実施概要は、次のとおりである。

1.助成対象研究の募集
 産業技術の共通的・基盤的技術である電子計測技術は極めて広汎な分野に亘るが,その中で,健康で、明るい人聞社会を築くために重要な役割を果すと考えられる技術開発分野として,理学・工学と医学・生物学の境界領域としての学限的研究である「生体に関する電子計測技術」の進展がますます要請されている。
 かかる状況を勘案し,当財団では対象を次のように定めて,毎年9月末日を締切として助成対象研究を募集してきた。

対象研究課題 生体に関する電子計測技術
助成対象 独創的な研究であって,実用化が期待されるもの。または,実用化のための基盤技術となるもの。

2.審査委員会
 応募のあった助成研究申請書の内容について、菅野允委員長ほか7名の学識経験者からなる審査委員会において、再三にわたる慎重かつ、厳正な審査を行い、助成対象研究テーマを選定した。

3.研究助成金の贈呈式
 審査委員会の審査を経て選出された夫々の研究開発テーマの研究責任者に対して、技術開発研究助成金の贈呈式を、平成14年2月22日、芝浜松町にある世界貿易センタービルにおいて、多数の関係者、来賓を迎えて盛大かつ厳閑裡にとり行った。
 この際、各研究者より研究内容の概要を発表していただき、好評を博した。
 また、研究助成金の贈呈式後、祝賀を含めて、記念懇談会を開催し、相互に、よろこびと意見の交歓を行った。
 なお、平成13年度の研究助成件数は11件、助成金総額は1,980万円であった。


第18回(平成13年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)


技術開発研究助成金贈呈式の開催状況
(注:写真/PDFに記載)


贈呈書の授与・研究計画の発表
(注:写真/PDFに記載)


記念懇親会
(注:写真/PDFに記載)


II 調査研究に対する助成事業
 電子計測技術の促進を図るためには、電子計測技術分野の実態および種々の問題についての調査研究を行うことが重要である。
 平成13年度は、審査委員会の審査を経て、 大阪大学医学部保健学科・病態生体情報学講座・分子病理学教室の松浦成昭教授から申請された調査研究題目「再生医療分野における電子計測技術の利用に関する調査研究」について200万円を助成した。
 なお、技術開発研究助成金の贈呈式において助成金贈呈書の授与を行ったほか、松浦教授から調査研究の概要が紹介された。


III 技術交流に関する支援事業

1.技術交流助成事業
 電子計測技術の促進を図るためには、国際化時代に対応し、先端技術に関する内外研究者相互の国際交流を推進する必要があり、平成13年度は、次の事業を行った。これらの会議等において活発な技術交流活動が行われた。

(1)技術交流(派遣)に関する助成
 下表のとおり電子計測技術分野における海外で開催された国際会議に参加する研究者等の技術交流に対して助成を実施した。
(注:表/PDFに記載)


(2)技術交流(招聘)に関する助成
 下表のとおり電子計測技術分野における我が国で開催された国際会議等へ海外から研究者を招聘する技術交流に対して助成を実施した。
(注:表/PDFに記載)

2.技術交流研究事業
 理・工学と医学に関連する専門家が交流し、新たな観点から生体電子計測技術に関する研究課題について討議を行い、問題点と今後の方向を探求するための研究会として、 平成9年度から平成12年度まで開催された「21生体電子計測研究会」(主査 守谷哲郎 電子技術総合研究所大阪ライフエレクトロニクス研究センター長(平成12年度末現在))の報告書を、CD-ROM形式及び冊子形式で作成し、主な大学、関連機関等へ配布した。


平成11年度(第16回)
技術開発助成研究成果報告

1. 脱分極誘発色素を用いた laser photo-stimulation システムの開発と応用
2. 無拘束型心電図導出用パット電極センサの開発
3. デュアルコントラスト肺微小血管造影法の開発
4. マイクロカプセルによる臓器の自動描出と薬物ターゲッティングを兼ねた新しい超音波診断・低侵襲治療システムの開発
5. 血球計数器による末梢血および採取幹細胞分画での幹細胞簡便計測法の確立
6. 乳癌にともなうリンパ節生検用トレース装置の開発
7. 超高速超音波立体イメ ー ジングに関する研究
8. 細胞内におけるリン酸化依存的蛋白質間相互作用のイメージング
9. コヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡による生体組織の3次元局所空間分子分光分析
10. ワンチップ時間分解分光分析システムの開発と生体計測への応用


技術開発に対する研究助成状況
年度 贈呈式年月日 助成件数 助成金総額
昭和59年度 昭和60年2月28日 6件 1,600万円
昭和60年度 昭和61年2月25日 9件 2,100万円
昭和61年度 昭和62年2月27日 9件 2,050万円
昭和62年度 昭和63年2月26日 9件 1,950万円
昭和63年度 平成元年3月10日 8件 1,880万円
平成元年度 平成2年2月23日 10件 2,110万円
平成2年度 平成3年2月22日 10件 2,010万円
平成3年度 平成4年2月28日 12件 2,430万円
平成4年度 平成5年2月26日 10件 1,930万円
平成5年度 平成6年2月25日 11件 2,100万円
平成6年度 平成7年3月24日 11件 2,160万円
平成7年度 平成8年2月23日 9件 1,820万円
平成8年度 平成9年2月28日 10件 1,920万円
平成9年度 平成10年2月27日 10件 1,670万円
平成10年度 平成11年2月26日 10件 1,700万円
平成11年度 平成12年2月25日 10件 1,780万円
平成12年度 平成13年2月23日 9件 1,800万円


第6回(平成元年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第7回(平成2年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第8回(平成3年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第9回(平成4年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第10回(平成5年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第11回(平成6年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第12回(平成7年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第13回(平成8年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第14回(平成9年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第15回(平成10年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第16回(平成11年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第17回(平成12年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)


技術交流に関する助成状況

技術交流(派遣)に関する助成金贈呈者
(注:表/PDFに記載)

技術交流(会議)に関する助成金贈呈者
(注:表/PDFに記載)

技術交流(招聘)に関する助成金贈呈者
(注:表/PDFに記載)


編集後記

 日韓共同開催となった2002 FIFAワールドカップでは、サッカーに余り興味を持っていなかった方も含め、久しぶりに日本人全休が熱狂し、一体感を持つことが出来たのではないでしょうか。4年後が楽しみになった方も多いことでしょう。本年報16号がお手許に届くころには、その興奮も党めた頃と思います。この年報がこうして完成し、配布できますのは、成果報告を執筆して下さった先生方をはじめ関係者のご協力の賜物と、深く感謝申し上げます。

 2月に当財団の役貝に異動がありました。即ち、麻植監事がご退任され、ご後任にASGマネジメント株式会社常務取締役で公認会計士でもある田中照明氏が就任されました。麻植様には当財団の設立時に大変お世話になり、その後約17年に亘り監事として諸々ご指導をいただきました。この場をお借りし厚く御礼申し上げます。

 さて、本年報は当財団の事業報告及び成果報告を兼ねておりますが、今回は平成13年度の財団の活動状況と過去に行いました助成事業の成呆を紹介しております。

 本財団の中核事業である研究開発助成につきましては、2月に実施致しました贈呈式の内容をご紹介しているほか、第16回技術開発研究助成金を受領され、平成12年度に研究を実施された研究者の方々から寄せられた研究成果報告を掲載しております。技術交流助成事業では、これまでの派遣助成、招聘助成に加え、平成13年度には会議等に対する助成も実施いたしました。本年報ではこれらの成果報告も掲載しております。また、平成13年度からは調在研究助成も実施致しました。調査研究の実施は平成14年度に入ってからですが、次回の年報では成果の一部を紹介できるものと考えております。

 当財団の事務処理をパソコンベースにしてから、約2年が経ち、ようやく軌道に乗りつつありますが、世間並にウイルス付きメール等が時々送りつけられております。実は、当財団の対策は遅れていたのですが、運良く対策後に初のウイルスが送り込まれたため、大きな被害を受けずに済みました。また、他の方ヘウイルスを送ることを未然に防ぐこともできホッと胸をなでおろした次第です。ただし、不慣れであったこともあり初のウイルス駆除等には2日以上を費やす結果となり、正常に戻すまで業務が停滞し、関係の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしました。深くお詫び申し上げます。

 公益法人に対する社会の目は年々厳しくなっており、また、公益法人のデイスクロージャーの充実による業務運営の透明化および適正化が求められております。当財団では監督官庁のご指導もあって、平成13年10月から、当財団の事業計画、事業報告、収支予算、収支報告など、業務および財務等に関する資料をホームページに掲載しておりますので、ご参照下されば幸いです。

 当財団は、平成12年11月15日付けにて監督官庁から特別公益増進法人としてご認可をいただいており、当財団へのご寄附は免税となっております。電子計測技術の振興のための各種助成事業等を実施し社会に貢献している当財団に対しまして、今後とも暖かいご支援をお頻い申し上げます。

(6月末栗山記)