1989年[ 年報 ] : 年報03号

年報03号

中谷電子計測技術振興財団

概要

目次

設立の趣意
財団の設立5年目を迎えて
役員・評議員および事業の概要
I. 技術開発に関する研究助成事業
技術開発研究助成金贈呈式の開催状況
II. 調査研究助成事業
III. 技術交流に関する事業
昭和61年度(第3回)技術開発助成研究成果報告
昭和63年度技術交流助成成果報告


設立の趣意

 わが国経済社会の高度化は、1970年代以降急速に進展しています。これは、わが国の唯一の資源でもある恵まれた頭脳資源を、十分に活用することで達成されたものです。特にコンピュータを始めとするエレクトロニクス技術の発展が重要な役割を果たしてきました。
 これらのエレクトロニクス技術の発展は、優れた電子計測技術の基盤の確立が無くしてはありえません。今後わが国のエレクトロニクス技術の一層の発展を実現する上で、電子計測技術基盤の一層の強化が大切であります。電子計測機器がエレクトロニクスのマザー・ツールであるといわれる所以でもあります。
政府におかれましても、その重要性を十分認識され、電子計測技術基盤の確立のためいろいろな施策を展開されております。
 このような客観的諸情勢から故中谷太郎初代理事長は、電子計測技術の発展を推進し、産業基盤の確立に貢献することを強く念願され、昭和59年4月に財団法人「中谷電子計測技術振興財団」が設立されました。
 当財団は、技術開発・技術交流の推進、技術動向等の調査研究等を行うことにより、電子計測技術の基盤の確立に微力をつくす所存でございます。このような趣旨をご理解の上、当財団にご指導、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。


財団の設立5年目を迎えて

東亜医用電子株式会杜
代表取締役社長 橋本禮造

 激動の昭和から,萬物おしなべて平和への平成新時代となり,我が国を取まく杜会・経済諸環境は,あわただしく変容しつつあります。
 かかる中で,(財)中谷電f計測技術伽興財団は,設立5年目の節目を迎えました。
 昭和59年設立以降,先導的技術開発および,国際的技術交流への助成,新しい研究分野の調査等の事業を円滑に進め,実績を重ねてまいりました。
 このような成果をあげられました事は,ひとえに,関係して下さっております諸先生方および,当財団をご援助いただいております皆々様が,親身になってご指導,ご尽力を賜っておりますお陰でございまして,ここに,心から原くお礼を申しあげる次第でございます。
 また,当財団の設立者であり,東亜医用電r株式会社の創業者でもあります,故中谷太郎初代理事長が,電子計測技術の賑興をはかることにより,多少なりと社会にお役に立ちたいとの念願が,多くの方々のお力を頂戴しなから地道ではありますが,一歩一歩実現し
つつある事を思いご同慶に堪えません。
 東亜医用電子株式会杜におぎましては,創業以来,創遣性を発揮し開拓者精神をもって、ヘマトロジ一分野での世界一をめざすとともに,医療と人々の健康に貢献すべく努力してまいっております。
 一方で,今後共,財団の運営にご支援申し上げることにより,電子計測技術の発展を通して,いささかなりと杜会に寄与できれば幸甚と存じております。
 21世紀を目前にして,高齢化杜会をふまえ,翌かで明るい人間杜会をいかに実現するかが国民的課題であります。
 その一方途としては,電千計測技術を駆使して,人間を中心とする生体を解明することは,健康杜会を構築する桔盤となるとともに,新しい科学技術を創生する手かかりになると思われます。
 しかしなから,これらの課題を解決し具現化するには,容易ならざるものがあります。
 このためには,創造性豊かな科学技術をいかにして発掘し,研究開発を促進するかであります。
 また,固際的視野に立って、内外の研究者の力々が交流し,一体となって夫々の力を結集して研究課題をひもとくかでありましょう。
 さらには,常に将来の技術課題を真に把捏するための探究を怠らないことであると思います。
 中谷電子計測技術振興財団としては,5年間に培った甚盤のもと,この三つの方策を柱として助成事業を展開するため努力してまいりたいと思っております。
 おわりに関係者各位のご尽力に感謝いたしますとともに,今後共,一層のご指導,ご協力をお顧い申しあげます。


設立年月日 昭和59年4月24日
基金 6億2千万円

役員
理事長
木村 英一 前大阪市立大学学長・名誉教綬

専務理事
橋本 禮造 東亞医用電子株式会社 代表取締役社長

理事
梅垣 健三 星ガ丘厚生年金病院院長 前奈良県立医科大学学長・名誉教授
宇都宮 敏男 東京理科大学教授 東京大学名誉教授
中谷 正 東亞特殊電機(株) 経営企画室・東亞医用電子(株) 監査役
伊藤 健一 当財団事務局長

監事
麻植 茂 公認会計士
本田 親彦 公認会計士


評議員
川越 裕也 国立大阪病院第二内科医長
藤井 克彦 大阪大学工学部長
斎藤 正男 東京大学医学部教授
山崎 弘郎 東京大学工学部教授
屋形 稔 新潟大学医学部教授
三木 十三郎 東亞医用電子株式会社 常務取締役
太田 有郷 東臣医用電子株式会社取締役


事業の概要
電子計測技術の発展を推進し,産業基盤の確立を図ることにより,わが国経済社会の発展および国民生活の向上に資することを目的として,次の事業を行います。
■電子計測技術分野における技術開発に対する助成
電子計測技術分野における先導的技術開発活動を促進するため,これに助成します。
■電子計測技術分野における技術動向等の調査,研究
電子計測技術分野の実態および種々の問題について調査研究を行い,または,助成します。
■電子計測技術分野における技術交流に関する支援
電子計測技術分野における技術の交流を推進するため,内外の研究者等の交流に対する助成,シンポジウムの開催等を行います。
■電子計測技術分野に関する情報の収集,提供
電子計測技術に関する情報文献,資料等を収集整理し,その広汎な利用を図るための種々の活動を行います。


I 技術開発に関する研究助成事業
 国際経済社会において,貿易収支のアンバランスなどの諸問題により,かつてない大きな転換期に直面している我が国にむいて,自主技術による技術立国が提唱され,かつ先導的技術開発の創出が急がれている。
 このため,当財団にむいては,中核事業として電子計測技術分野における先導的技術開発活動を促進するため,大学及びこれに準ずる研究機関に対して研究助成を昭和59年度から実施してきた。その概要を次に述べる。

1. 助成対象研究の募集
 産業技術の共通的・基盤的技術である電子計測技術は極めて広汎な分野に亘るが,その中で,健康で、明るい人聞社会を築くために重要な役割を果すと考えられる技術開発分野として,理学・工学と医学・生物学の境界領域としての学限的研究である「生体に関する電子計測技術」の進展がますます要請されている。
 かかる状況を勘案し,当財団では対象を次のように定めて,毎年9月末日を締切として助成対象研究を募集してきた。

対象研究課題 生体に関する電子計測技術
助成対象 独創的な研究であって,実用化が期待されるもの。または,実用化のための基盤技術となるもの。

2. 審査委員会
 応募のあった助成研究申請書の内容を,中路幸謙委員長ほか6名の学識経験者からなる審査委員会において,再三にわたる慎重かつ,厳正な審査が行われ,助成対象研究テーマが選ばれた。

3. 研究助成金の贈呈式
 審査委員会の審査を経て選出された大々の研究開発テーマの研究責任者に対して,技術開発研究助成金の贈呈式を毎年,芝浜松町にある世界貿易センタービルにおいて,多数の関係者,来賓を迎えて盛大かつ厳粛樫にとり行われた。
 この際,各研究者より研究内容の概要を発表していただいているが,好評を博している。
 また,研究助成金の贈呈式後,祝賀を合めて,懇親会を開催し,相互に,よろこびと意見の交歓をしあった。

年度 贈呈式年月日 助成件数 助成金総額
昭和59年度 昭和60年2月28日 6件 1,600万円
昭和60年度 昭和61年2月25日 9件 2,100万円
昭和61年度 昭和62年2月27日 9件 2,050万円
昭和62年度 昭和63年2月26日 9件 1,950万円
昭和63年度 平成元年3月10日 8件 1,880万円


第1回(昭和59年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第2回(昭和60年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第3回(昭和61年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第4回(昭和62年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)

第5回(昭和63年度)技術開発研究助成対象研究
(注:表/PDFに記載)


技術開発研究助成金贈呈式の開催状況
(注:写真/PDFに記載)


贈呈書の授与
(注:写真/PDFに記載)


研究計画の発表
(注:写真/PDFに記載)


II 調査研究助成事業

1. 調査研究の目的
 社会の多様化,高齢化をふまえて,健康て明るい人間社会の構築か要望されている。
 このため,重要な役割を果すと考えられる技術開発分野として,生体に関する電子計測技術の進展か期待されている。
 かかることから.医学と理・工学の両面から重要研究課題を探究し,もって電子計測技術の振興をはかるための研究助成事業に資することを目的とする。

2. 調査研究委員会の構成
 東京医科歯科大学の戸川教授を委員長とし,医学と理・工学の専門家10名よりなる無拘束生体電子計屑I]調査研究会を構成し,これに助成し調査研究を実施した。

調査研究委員会 委員名簿
〔敬称略〕
委員長
戸川 達男 東京医科歯科大学 医用器材研究所 教授

委員
浅野 茂隆 東京大学医科学研究所 病態薬理研究部 助教授
岡井 治 杏林大学保健宇部 臨床生理 教授
小野 哲章 三井記念病院 MEサービス部 技師長
川上 憲司 東京慈恵会医科大学 放射線医学教室 助教授
清水 信 東京慈恵会医科大学 精神神経科 助教授
辻 隆之 東主医科歯科大学 医用器材研究所 助教授
土肥 健純 東京大手・工学部 精密機械工学科 助教授
舟久保 登 東京都立科学技術大学 管理工学科 教授
渡邊 瞭 東京大学 医学部 医用電子研究施設 助教授

3. 調査研究の対象
 生体計測における電子技術の応用は,コンピュータ画像処理なとの分野では非常に進んているが,日常の健康管理や慢性疾患患者の長期管理などの分野にはあまり例をみない。
 しかし将来を考えると,疾病の予防と日常の健康の管理が重要となることは明らかであり,そのために電子計測技術か導入されることが望ましいと考えられる。
 また,従来の生体計測技術のほとんどは,病院なとの特定の医療施設においてのみ使用できるものであったが,疾病の予防や健康管理のためには医療施設外の日常生活における生体情報の計測が必要となると考えられる。
 以上のことから,疾病予防および健康管理を目的とした医寮施設外を中心とした無拘束生体電子計測技術を対象として調査研究することとした。

4.調査研究の内容・方法
 無拘束電子計測について,心電図,循環動態,呼吸,神経・筋,その他の5分野に分け,これらについて,医学側委員5名,理・工学側委員5名か夫々,目的・対象,方法に区分して分担し,昭和61年度より昭和63年度の3年間に亘って調査研究を実施した。
 昭和61年度後半より昭和62年度にかけて.MEDLINE文献検索システムを利用して,1982年~1987年の間に関連する文献テーマを5分野毎に検索し,全体で約380テーマを抽出した。
 これらのテーマについて委員会において討議の上重要と思われる文献を各委員が選定し,詳細な文献内容を入手し.総合的に分類整理した。
 さらに委員会において.医学のニーズ面と理・工学のシーズ面から意見を交換するとともに文献の詳細内容について各委員か調査研究し,分野,区分毎にその概要を取まとめた。
 また,高齢化時代をふまえて老人家庭看護問題について東京都老人総合研究所の鎌田ケイ子氏より講演をいただくなど専門家との論議を交わした。
 昭和63年度において,これまでの調査研究結果をふまえて,各委員より無拘束電子計測技術に関しての課題について数回に亘って自由討論を実施した上で,近未来への技術研究課題についての提言を取まとめた。
 調査研究に関する分野,区分,および担当委員は次表のとおりである。

(注:表/PDFに記載)


無拘束生体電子計測への提言

無拘束生(本電子計測に関する文献内容の調査結果をふまえ,各委員により医学面(目的対象),理工学面(方法)の各面から近未来への提言を次のとおりとりまとめた。

1. 心電薗
(目的対象)
高齢者健康管理および在宅医療における心電図モニタリングシステム

浅野 茂隆

1. その必要性
 競争社会におけるストレスの増加と西欧型食生活への移行に加えて,就労者の高齢化が進んている。その結果,虚血性心疾患は増加して,これによる死亡は癌に続いて2位となり全死亡の18%を占めるようになっている。したがって,虚血性心疾患に対する健康管理は現代医寮では極めて重要な課題である。
 しかるに,本症は突発的発症と急変による初期死亡が多いことが特徴であり,その予防は決して容易でない。少なくともリスクファクターの多い対象者を選定して心機能のモニタリングを行うことにより,異常をいち早く診断し,CCUへの搬送が遅れないようにすることか極めて重要と思われる。特に,予後の悪い急性心筋硬塞に高率に移行することか知られる不安定あるいは安静時狭心症や無痛性で自覚症状の乏しい高齢者の狭心症では適切な治療を素早く行うことにより回復も可能であるので,このモニタリングシステムの重要性は高いと考えられる。

2. ホルター・モニタリングとその限界
 現時点で使用しうる心機能に関する無拘束計測器として,ホルター・モニタリングがある。本システムは,心電図の24時間記録とその一括評価を可能にしており,不整脈の発見・診断に極めて有用な武器となっている。すなわち、虚血性心疾患や心筋症患者などにおける不整脈の診断とその予後との関連の解析,心ペースメーカーの機能チェック,自覚症状が不整脈によるか否かの客観的診断のためには,なくてはならないシステムである。
最近では,健常者を対象に本モニタリングによる不整脈の出現調査を行うことの臨床的意義に関しても検討か進められつつある。これら不整脈の早期診断がどのように冶療面で有用となりうるかに関しては,今後なおフォロー,アップスタディを続けていかなくてはならない。
 しかし,ホルター・モニタリングは以下の点で医学的ニーズを必ずしも充分に満足しうるものではない。すなわち,最も重要な虚血性心疾患の診断には正確な情報を与えないことが多い。これはその解析に必要な心電図上のST部分が種々の要因によって歪みを生じ易いことによる。残念なことに,このような要因はモニタリングがとくに必要な活動的に重なり易い。更にまた,同システムは発作時の実時間における評価を重要視していないので,現状では患者の治療に十分に役立つ情報か得られるか否かについても疑問かある。

3.提言
 ニーズのプライオリティ,すなわち,健康管理のために何が必要な情報か,ならびにモニタリングの適応基準,すなわち,どのような患者を適用として選択すべきか,などについて,医学的に解明すべき点は残されている。しかし,上に述べた現状から考え得ることとして少なくとも,次の2点はモニタリングて可能となることが強く期待される。
1.虚血性心疾患の正確な診断。
2.実時間での診断と評価。
 1.については,FMレコーディングタイプの使用によってST部分の歪を少なくするなどの技術的な改善の余地はある。しかし,それ以上に期待されるのは,より正確な診断マーカーとしての血小板凝集能,心拍出量,動脈圧,超音波による心筋運動なとを同時にモニタリングできるポータブルシステムの開発であろう。
 2.に関しては,すでに一部で試みられている電話伝送モニタリングシステムの普及がある。また,小型自動解析装置による警報装置システムの開発も有用と考えられる。
 なお,これらの開発に向けた努力は患者への医学教育やCCUや救急体制の設備などの医療行政面の努力と連動することで,初めて患者へ利益をもたらすものであることは言うまでもない。


(方法)
新世代ホルター心電計
小野 哲章

(1)周波数特性の改良
 現在のホルター心電図の低域遮断周波数は,通常心電計の5~10倍と高い。このことは,心電図の遅い成分(ST部分やTi皮)の診断か重要な役目の一つであるホルター心電計の大きな問題点の一つである。
(2)解析機能付ホルター心電計(インテリジェント・ホルター)
 ホルター心電計のテープは解析機に掛けて解析して初めて診断の用に供せられる。この機能をマイクロチップ化して内蔵し,解析結果のみをテープなり,RAMなりに時刻とともに記録しておけば,上記1)の問題も解決できる。しかも,アナログデータを解析結果というデジタルデータに圧縮てきるので,テープ1本で2日~1週間の記録も可能になる。
この場合,解析機能は医師の選択を可能にすべきてある(さし当たりは,ST分析などの単機能がよい)。なお,全体のトレンドは別RAMに記録しておき,すぐ呼び出せるようにすると良い。
(3)テープのカード化
 上記2)に関連して.1日1カードの磁気カードまたはRAMカードに記録媒体を変更し,携帯機器の軽量化を計るべきである。
(4)良い電極,良いリード線
 ホルターに適した電極.誘導リードを研究すべきである。電極としては,長期使用に耐える耐久性(粘着性)とバイオコンパチビリティの両立を検討しなければならない。リード線に関しては.細<,軽く,やわらかく,切れない材質.構造が必要である。また,EMI対策を十分考えなければならない。
(5)本体のハード使用仕様
 携帯器本体は.落としても,ぶつけても,雨に濡れても壊れない構造を持たなければならない。このためには.可動部分は極力無くさなければならない。できれば,風呂場でもそのまま使える構造としたい。
(6)異常時のみ走行する機能
 今のホルターに.RAMによる20秒程度の先行心電図記録機能を設け,これと現心電図列とを比較して.違う場合のみテープが走行するようにする。


2. 循鳳薗態
(目的対象)
1. はじめに
辻 隆之
 循環動態の指標として血圧,心拍出量,心拍数か一般的であるが,心拍数は心電図として別項が設けてあるから,ここではおもに血圧について述べる。
 心拍出量はガス吸入法や胸郭電気インピーダンス法などで無侵襲(non-invasive)に計測てきるが,現状では計測装置か大きく無拘束(ambuIatory)では計測出来ない。したがって,無拘束血圧測定に関して,その将来性,計測の意義,機器の展開,データの解析,本法の応用範囲について私見を述べる。

2.循環器モニタの将来性
 高血圧症患者の管理とその社会的意義の重要性は医学的および医療経済的観点より内外て強調されている。高血圧症は症状かなくても早期に把握し適切に治療しないと.致命的な脳神経系および循環系疾患を誘発する。一度そうなるとその完全な回復は多くの場合望めず,後遺症を残して過大な医療費を必要とするようになる。
 血圧は一般に加齢とともに上昇することがしられている。老人が急速に増加しつつあり,また,急速な都市化の結果,ストレスか一因となった高血圧症が壮年労働者にも増加しつつあるわが国では血圧管理は家庭でも職場でも必要となりつつある。
 高血圧症そのものは絶対安静を必要とするような状態ではなく,潜在的病人,いわゆる半病人てある。そのために本物の病人にならないため,職場や日常生活での血圧状態を知るための携帯型自動血圧計のニードはますます高くなる。高血圧症は感染症のように根冶
されるような疾患ではないから繰り返し計測する必要があるので,観血的な血圧計測法は研究目的以外には使用されず,非観血的方法に比べ商品的意義は低いであろう。

3.血圧測定装置の意義
 血圧は最高血圧にもっとも臨床的意義がある。さらにできるだけ計測回数が多い(数分毎)ほうが,また血圧成分(最高血圧,平均血圧,最低血圧)が多いほうがよい。
 しかし平均血圧や最低血圧を計測するのに高価な,大型な重い機器にならざるをえないのなら,それより最高血圧だけに限定し,機器のコストと小型軽量化を取るべきである。
 重い装置はその装着ゆえに血圧に影響を与える可能性があり,高価な装置は差し迫った危険を自覚てきない高血圧症患者にとって機器の購入をためらわせて,董篤な病状の発症に至らしめる可能性があるからである。

4.機器の展開
 医療を医師だけか行う時代では,医療機器の大部分は医療サイド(病院,医院)にある。
半病人が増加しつつある将来は患者側にもそれらか必要とされる状況かいまより強くなる。
そのためには非専門家でも扱えるほど安全性が高くなる,すなわち無侵襲性がより高くならなければならない。またヒトは大きさか変わらないので,器械のほうが小さくなるしかない。
 無侵製的であれば連続的に計測でき,動くヒトを計測するためには携帯できなければならない。携帯するためには,半病人や子供や女性は非力だから,小さく軽くなければならない。要するに軽薄短小てある。
 例えばとう骨動脈の血圧を腕時計のような装置で計測でき,デジタルで記憶でき,それをプリンタに転送できるとよいであろう。

5.データの解析
 モニタはセンサ(計測機器部分)のみか重視されることが多いが,データが適切に解釈できるかどうかによっても価値か決まる。データの読みだしは現在の技術ではホルター心電計のような分離方式にならざるをえないであろう。
 データは多いほうがよいが.それか利用しやすい形になっていることが重要で.デジタルデータのほうが応用しやすいのでよい。
 他の血圧に関連する情報,すなわち心拍数、心拍出量,体温,体動.酸素消費量など.現状でも無侵襲で計測できるパラメータか同時に連続計測できれば,被験者の循環状態をさらに正確に解析できる。デジタル信号であればそれら相互の関係を処理するのは,最近の情報処理技術を用いれば可能である。
 生体情報は個体差が大きい。正常か巽常かの判定が被験者について可能なような,AI的な学習機能をもっていることも有用であろう。

6.応用範囲の拡大
 血庄測定の機会を増やすためには血庄計の設置場所を増やすことが有効であろう。血圧を計るために拘束するのではなく,やむを得ず,または快適に時間を過ごせる場所で同時に血庄を計測する。
 トイレや風呂場やベットに付属しているような血圧計を開発し,日常的な場所て血圧測定を日常的に行えるようにする。
 自転車や自動車にも血庄測定システムを設置し,運動時やストレス負荷時に計測する。
 公衆便所と同じ発想で,公衆血庄測定所を設けて血圧屑lj定の機会を増やす。

7. まとめ
 外来で計測される血圧は必ずしも一日の平均的な血圧を反映しているとはいえない。心臓や網膜にみられる高血圧性病変は外来ての血圧(直よりも,日内の最高血圧により依存しているので,それが計測できる無拘束無侵襲血圧計測記録装置の使用頻度が今後日常の診療のなかで高くなる。
 高血圧症は致命的な疾患てある心筋梗塞を誘発しやすいので臨床では本法とホルター心電図との併用によるモニタリングが増えることが予測される。
 本装置はさらに軽薄短小,小型化され,半病人のモニタに他の無拘束計測機器と組み合わせて用いられるのが好ましい。そのために無拘束心拍出量計の開発ニードも高まるであろう。


(方法)
戸川 達男
 将来の可能性として,無慢襲的方法と慢襲的方法が考えられる。循環動態の無侵襲的計測法は,血圧,心機能,末梢循環状態などを対象とし,健康管理,在宅医療一般の基本的情報として重要であり,慢襲的方法としては,心臓手術後の患者の在宅ケアなどに,植え込みセンサを用いて計測を行う可能性が考えられる。

1. 無優襲的血圧計測
 すでに,上腕に装着したカフを自動加庄する方式のものが普及してきているが,装置が重く,カフ加圧の違和感があるなどの問題かあり,改良か望まれる。しかし,この方式によるかぎり,装置の簡略化には限界かあるので,むしろ全く新しい方法を開発することが必要であると思われる。
 カフの装着部位を,上腕てなく指先.耳菜なとにすることにより,装置か若干小型化されることか考えられるが,身体活動を制限する恐れがある。他の部位でも.原理的には血圧計測は可能だと考えられるが,組織を圧迫するための装具を考えなければならない。
 むしろ,全く新しい方法として,日常生活において体表か圧迫される条件を利用して,血圧計測を行うことが考えられる。たとえば,臀部あるいは足底に圧と光電脈波のセンサを装着することにより,座位あるいは立位に.センサ部分に血圧を越える圧力が加わったとき,光電脈i皮の消失ことを感知して,血圧を推定することか考えられる。また,同様のセンサを便座に固定しておき.(更器を使用したとき自動的に血圧が計測される装置なども考えられる。

2. 無侵襲的心機能,末梢血流計測
 心拍出量の計測については,胸郭電気インピーダンス計測による方法が試みられてきたが,いまだに信頼性に問題があり,無拘束計測法としてはほとんど用いられていない。信号処理の工夫,あるいは他の情報と組み合わせることにより精度を上げることも考えられ
るか,あまり有望ではない。心拍出量の計測法としては他に簡便な方法がないので,全く新しい方法を開発するか,あるいは他の情報で代用することを考える必要がある。
 心機能の低下による循環状態の変化は,末梢血流の変化としてとらえられる場合がある。循環系は,重要臓器の血流を維持するように調節されているので,心拍出量が低下したときには,重要臓器の血流を低下させないために,生命維持にそれほど重要でない器官の血流を減らすように調節される。したがって,心拍出量低下のサインは,重要臓器の血流よりむしろ,生命維持にはあまり重要てない器官の血流に現れると考えられる。逆に,重要でない器官の末梢循環か保たれていることかわかれば,重要臓器の血流が十分であることの保証となる。このことから,末梢循環モニターの簡便な方法の開発が期待される。
 末梢循環の計測法としては,プレチスモグラフィー,レーザードプラー法,などかあるが,無拘束的計測には適さないのて,熱的計測などが有望てある。

3. 侵襲的方法
 無侵製的計測か困難な対象量,たとえば肺動脈圧のモニターなとに,従来から侵閲的計測法が用いられて来た。将来も,このような計測には侵襲的方法が必要てあると考えられるので,長期間植え込み可能なセンサの開発か必要である。すでに,密閉型シリコンダイヤフラム圧センサ,伝搬時間差方式の超音波血流計なと,長期間植え込み可能なセンサか開発されているが,さらに容易に使用できるものか望まれる。
 植え込みセンサは,手術時に術後の計測のために植え込んで使用するほか,人工臓器たとえば心臓ペースメーカーなどにあらかじめ組み込んでおいて,必要に応じて体外に信号を送るような可能性も考えられる。すでに心拍応答型ペースメーカーとして各種センサー付きのものが開発されているので,その情報を体外に送ることは困難てはない。このほか,冶療のために体外に挿入,留罹される器具なとは,侵襲的計測に利用できる可能性がある。

4. 検討が期待される循環機能センサ
(1)静脈血液量センサ
 心臓の基本的機能は,静脈に還流した血液を完全に動脈に送り出すことであり,その機能が維持されているか否かは,心房に貯流している血液量によってわかるはずである。この目的で中心静脈圧の計測が臨床におこなわれているが,静脈系の圧は小さく,身体運動
による変動か大きいため,無拘束て計測することは困難である。そこで,心房壁あるいは大動脈壁の伸展を心房あるいは血管外から計測することか考えられる。これは侵襲的方法によらなければならないが,心血管系の内圧を直接計測するのに比べ,センサが血液に触
れない点で有利であると考えられる。
(2)動脈壁炭酸ガスセンサ
 動脈炭酸ガス農度は,生理的循環調節において化学受容器で検知されている重要な情報である。患者モニターとしては経皮的電極による方法が実用化されているか,無拘束計測は困難である。しかし血管内にセンサを挿入することは,長期の使用には問題が多い。そこで,炭酸ガスが組織内においては比較的拡散しやすいことを利用し,動脈壁の外から血管壁を通して計測する可能性があるのではないかと考えられる。ISFETなどの化学センサの応用が期待でき,たとえドリフトなどの問題かあっても,採血による検査結果を用いて補正は可能である。
(3)ずれ応力流量計センサ
 大血管の血流計測のため植え込み型血流計か試みられているが,電磁血流計,超音波血流計などいずれも能動的計測のためのエネルギーを必要とし,完全植え込みの装置に適さない。受動的方法として,血管壁の受けるずれ応力を計測することは受動的に可能であるはずであり,代用血管にあらかじめ装着しておくことが考えられ,生体の血管に装着することも可能ではないかと考えられる。
(4)リンパ循環モニタ
 リンパ系は体液循環の一部であり,重要な機能を持っていると考えられるが,不明な点も多い。リンバ循環を長期間モニタした報告は見られないが,もし可能になれば研究上重要であるばかりでなく,患者の全身状態の指標として有用となると考えられる。


3.呼吸
(目的対象)
川上 憲司
 呼吸は,心機能に比べて,周期性変動に乏しく,体動なとの影響を受けやすい。また,得られる情報も,ECGに比して,少なく,呼吸の深さ,回数などが主体となっている。
従って,病院など,ベットサイドでの重症患者における呼吸モニタは,ICU,RCUで盛んに行われているが,fieldでの応用は進んでいない。そこで以下のような提言がなされる。

(1)呼吸の有無のチェック
 fieldでは,事故時以外に問題となることは殆どないかICUやRCUにおいては重要なモニター項目である。
 未熟児,SIDS(Sudden infant death syndrom)の危険のある症例,重症呼吸・循環器疾患例,ARDS(Adult respiratory didress syndrom,成人型呼吸切迫症候群)外科手術後など入院症例か対象となる。
(2)換気量のモニタ
 重度呼吸環境障害の日常生活にとって重要である。特に作業との関連は童要で,例えば,坂道歩行や,階段昇降時の換気量の変化を知ることは,低肺機能者の呼吸管理にとって大切である。
 また,一般健康人はもとより,低肺機能者にとっても,運動時の換気量変化のモニタは運動処方にとって不可欠である。
(3)睡眠時無呼吸
 最近突然死やピックウィッキャン症候群との関連において睡眠時無呼吸の問題か童要視され研究がすすめられている。
 ベットサイドのみならず,家庭においても睡眠の深さなとの情報とともに,解析されねばならなしヽ。
(4)血液ガスのモニタ
 低肺機能者にとって,血液ガスの情報は健康管理に欠かすことかできない。
 現在は,皮膚電極を用いてPO2PC02の測定か行われているが,更に精度の高い測定法が望まれる。
(5)酸素消費量,呼吸筋酸素消費量,呼吸仕事量
 いずれも運動能力,耐久力のチェックに必要であり,健常人はもとより,心肺機能低下例にとっても,これらの情報をモニタすることは童要である。
(6)肺循環(肺脈波,肺血流量,肺動脈圧,肺血液量など)
 呼吸の仕事は,酸素を摂取して,それを有効に,血中に移行させることにある。
 換気の仕事は保たれていても.肺循環系に異常かあれば,pO2は上昇しない。
 一方,肺循環系は体循環と異なり,胸郭内に収納されており,血圧lつをとっても容易に測定できない。従って経胸郭的に計測しうる手段の開発か望まれる。
(7)肺内水分量
 肺内水分量は,左心不全によって増加し,血管外水分量の貯留は肺水腫を引き起こし.ガス交換障害の大きな原因となり得る。
 肺水腫を早期に発見することは,心肺機能障害を未然に防ぐことになる。
(8)横隔膜筋電図
 呼吸筋の1つで,重要な役割をになっている横隔膜の働きをモニタする筋電図は,呼吸筋の疲労を知るのに必要である。筋無力症例においても.呼吸筋の活動をモニタしていく必要がある。
(9)右心機能
 右心機能は,心機能の頃に入るか,肺機能障害につづいて起こるところの肺性心では,右心機能も,問題になってくる。
 左心系の異常に比較してECGにおける情報も少なく,右心機能の鋭敏な評価法か,望まれる。


(方法)
渡辺 瞭

1. 目的
呼吸計測は,モニタ技術の立場から下記の点で重要である。
(1)生命を維持する基本的な機能であること。
(2)加令と強い相関を以って低下する機能であること。
(3)エネルギー消費と密接な関係かあること。
(4)精神作業負担との関連性があること。
 開発の方向としては,新規のセンサ開発は勿論てあるが,従来からある技術にしても,モニタに便利な簡易型に改良していくことが必要である。また,センサ技術ばかりでなく,計測結果の情報処理,モデルの導入などにより,直接的には計測できない情報の抽出方法の開発は同程度に童要である。

2. 応用分野
次に,上に述べた応用分野と,用いられる技術との関係について述べる。
(1)生命維持に関連しては,換気量の測定とバルスオキシメータ等による血液の測定とを組合せてモニタしていくことが望ましい。乳児突然死症候群(SIDS)については,予測か最も大切てあり,呼吸と心拍の情報を組合せて予測する方法も発表されている。
(2)加令との関連では.換気量や.呼吸と心拍数との相関情報を長期的にモニタしておくことは有用であろう。
(3)エネルギー消費に関しては,運勤負荷による換気量の変化パターンのモニタは,心拍数変化と共に心肺機能の簡便なチェックとして役立つと考えられる。
(4)精神作業負担により,呼吸数または心拍数変動が変化するので.そのモニタとして利用できる。

3. 方法論
 方法論的には,日常生活時のモニタにそのまま{吏えるような簡便な装置や,新しい情報を抽出するための適切な情報処理方式の開発は今後の課題である。
(1)センサ
換気量は,インピーダンス法または誘導コイル法によってある程度定量的に推定できる。非定量的なモニタで十分な場合は.静電容量変化を利用した小形発振器の皮膚への貼付や.マイクロ波を利用した非接触的方法も使える。また呼吸と心拍数の相関を調べる時は.同時に心拍数を.心電図用の電極か指尖脈波によりモニタすることが必要である。これらのセンサをシャツやベストに組込んで使えるようになれば便利であろうが.測定技術上の問題かある。
(2)情報処理
呼吸と心電図のR-R間隔の変化の相関関係の強さや,位相関係から,自律神経系の診断ばかりでなく.SIDSの予測もある程度可能であるといわれている。
また精神作業負担によるこれらの変化の関係も検討されている。従って.情報処理に関しては,今後,新しい技術の開発がかなり期待できる。
(3)モデル
モデルを利用して.計測値から生体内部状態を推定することも考えられるが,無拘束生体計測においては得られるデータの種類か少ないため.現在のところあまり有望とはいえない。

4. 神経・筋
(目的対象)
神経学・精神医学領域
清水 信

1. 自動解析の問題:
 医学領域で脳波およびpoligraphyが利用されるのは主として,てんかんの診断・予後の観察,脳の器質的疾患(炎症・外傷・腫瘍・循環障害・変性疾患なと)の診断・予後の観察,睡眠時異常現象の診断,睡眠研究,精神・神経薬理学的の研究などである。従来から一般に脳波検査では比較的短時問内(30分前後)の記録を行う場合が多いが,一部のてんかん性疾患,睡眠の質に関する研究(含,睡眠薬・睡眠時異常現象の研究)では10数時問ないし数10時間にわたる記録か必要な場合かしばしば起こって来る。特にroutineな検査では発見し難い障害や新しい分野の開発ではこの種の記録法を行なう必要かしばしば生ずる。現在脳波の解読は臨床的にはほとんど視察的な方法に頼っている。短時間記録に限って言えばこの方法が便利で有用であるが,長時間の記録を総合的に解析する場合は視察的な方法は時間的にも労力の上でもきわめて負担がおおきく,そのためにこの種の方法の必要性が大きいにもかかわらず臨床応用は限られているのが現状である。機器による自動的な解析はいろいろ試みられているが,十分実用に耐えるものは今の所まだ開発されてい
ない。もし,脳波関係の臨床医学者とelectronicsの専門家が緊密な連係のもとにこの分野での開発を行なうならば,今日臨床医学の強い要望に応えうるsystemの開発は十分可能な段階にある様に思われる。

2. 呼吸・循環器 mnitoring:
 近年,睡眠時の異常現象の一つとして注目を集めているものに睡眠時無呼吸症状群がある。この現象は特に老年者の不眠あるいは過眠と関連が深く,臨床研究も広い範囲で行なわれつつある。この場合も上記の長時間睡眠記録と呼吸記録の組合せが必要になり,睡眠段階と呼吸状態のmonitoringが必要になる。睡眠状態での研究では,記録のために装着する機器が各種の生理的現象に影響を与えて自然の状態をゆがませてしまう可能性がある。
 従来の呼吸monotoringの方法はこの点でかなり問題がある。実際には詢郭の周囲にトランスジューサーを巻いて,胸郭の拡大~縮小による電気抵抗の変化を測定したり,鼻孔にサーミスタを取り付けて呼吸による温度の変化を測定する方法が用いられているか,対象者はベットに横たわっているのて呼吸によるベット上のいくつかの点あるいは面の動きをモニターすることで,被験者に殆と影響を与える事なく呼吸数を測定する方法を開発する事はできよう。一つの実際的な提案として,ベットあるいは座布団大のwaterbedあるい
はairmatを利用する無拘束呼吸monotoringの開発が考えられる。すなわち,被験者をその上で就寝させ,呼吸なとに伴う体動による圧の変動を解析し,リズムによって呼吸,心拍などの成分に分けるのである。この方法が成功すれば睡眠時の呼吸数や心拍数を,被験者の身体に電極を装置する事なく測定することが可能になろう。
 また類似の方法によって,やはり老年者などの不眠のもうひとつの原因として近年関心を集めているrestless leg syndromeのscreeningも可能になろう。
 これらの,測定の精度から言えば多少粗雑であっても,簡便にしかも被験者に何の影響も与える事なく用いうる測定装置と,自動解析装置の組合せが実用化されれば,なんらかの疑いのもたれる多数の患者のscreeningに威力を発揮することは疑いない。この種の装置が家庭に持込めるようになれば睡眠時の異常現象などの診断と治療がある程度まで外来で可能になり,その有用性は更に大きなものになろう。
 これらは,今日の新しい医療に求められている健康者のための医寮,予防的医療への広い応用も考えられる。

3. その他
 深部脳波測定:脳波は脳の電気活動を非侵閲的に測定する点できわめて優れた方法である。しかし現在の脳波測定は脳のごく表面的な電位変化を記録しているに過ぎない。脳の深部の病巣に由来するさまざまな電位変化を捉えるには.脳外科的な方法で深部電極を刺入しなければならないが,実用性に乏しく,特殊な例か動物実験で用いられるに止まっている。鼻孔や咽頭から電極を挿入して脳底部に近い部位から脳波を測定する方法もあるが,技術的に困難でartifactも多く,殆と用いられていない。
 一つの想定として.X線CTスキャン撮影と同し様に,複数の電極から得られた電位変動を同時に処理する事によって,ある程度の深さの電位変動を記録する事が可能になるのではないだろうか?こうした方法かもしも可能になれば,てんかんの診断率は当然向上するであろうし.出血・梗塞などの部位診断.その他の器質病変の局在が機能の変化として捉えうる事になり.脳波検査の用途と有用性が革命的に拡大される事は疑いない。


(方法)
舟久保 登

1. 脳波の測定手段
 現在脳波を測定しようとすると,コロジオン技法による円板電極が長時間安定性から唯一のものとなっている。またこの出力はμVオーダであるから前置増幅器を必要とし,その際線の振れの電極への影響や線長に起困するノイズ防止のため電極の近くに置かねばな
らず,前置増幅器は頭髪中に設けるなとの工夫かされる。さらに多くの脳波測定においては,国際的電極位置に複数の電極を配置することも必要である。
 しかしこれらは熟練のいる厄介な作業で,家庭内なとで行うにはもっと簡便な手段が望ましい。近年世間では「かつら」についての技術が飛躍的に進歩している模様であり,それを活用し「電極かつら」と呼べるような測定具は出来ないものだろうか。

2. 脳波の記録媒体
 無拘束(ambulatory)に脳波を計測する場合,測定したデータをどうするかが1つの大問題である。取った端から無線や有線でセンターヘ送り処理するのが理想的に見えるか,再生時間圧縮の手法が使えないなど必ずしもそうでなく,それに到達距離とか経済性の制約から,最初考えたほどの移動性は得られない。そこで取得したデータを一先ず記録・蓄積する方法か主に使用されてきた。この際現在利用されている媒体は,ほとんど全部がオーディオ用カセットテープである。
 ところでオーディオの世界では,最近その媒体がカセットテープからCD(コンパクトディスク)に移行している。したがって脳波の記録媒体としても,次の候補にCDを検討する価値があろう。この場合の利点をいくつか列挙すると以下のようである:タイミング情報挿入可能,ランダムアクセス,高密度,ワウ・フラッタがない,ノイズに強い,ディジタルデータ,将来的に表情などのビデオデータも記録てきる。

3. 脳波の判定法
 ここでの文献調査においては本主題についての内容がもっとも豊富にあった。その目的は一言でいってプレスクリーニング(pre-screening)にある。無拘束な脳波測定は通常終日行われるが.いつ起こるか予測できないけれども.てんかん症の発作波形など医学的に意味のある部分はそれほど多くない。そこで全ての時間にわたるデータを専門医が観察することは無駄なわけで,重要と思われる箇所だけを機械に予め探させようとするのである。
 そして実際これに対しては.いくつかの興味深い方法が見出された。一方医学専門家の話によれば.この種のシステムはまだ現場に導入されておらず.しかしもしこれか実現したとすれば.いまの人間だけのやり方と比較し非常に効果的だろうという。したがってこの機会に一歩進め,自分達のデータについて発表されている方法の追試を行い.実際に使用する際の問題点を明確にするのは良い試みと思う。別の場所で実施すれば新しいアイディアが浮かぶかもしれず.結果には大いに関心がある。特に睡眠薬投与関連で.終夜にわたる睡眠脳波を自動解析し睡眠段階の分類ができれば.非常に有効とのことであった。

4. 脳波の利用分野
 無掏束な脳波の計測か利用されている分野は,調査文献による限りほとんどの場合てんかん症である。それではてんかん症の患者か人工比どの位存在するかというと.約1%とのことである。勿論これは議論の余地のない重要な診断対象であるが,もし脳波計測が加えて別の利用分野も有するならば.よりニーズが増え,その計測技術の進歩・普及に一層の有利な状況が生み出されるであろう。
 脳波は脳機能の発現を反映する情報であるから,ずいぶん各種の利用が考えられる筈である。調査の中でも睡眠状態監視.手術中における脳血圧値の間接的な推定などが指摘されていた。またさらに日常に近い(したがって無拘束かつある程度の普及を伴う)利用分野には.老人におけるせんもう(意識のにごり)の検出やai皮に基づく酪酎状態の検査他も考えられる。さらにX線CTの原理などを援用し.多数の電極データから視床や視床下部を含む深部脳波の測定かできれば.利用分野は飛躍的に拡大しよう。

5. 脳波の限界とその補完方法
 脳波は脳の動作状態を表現しているに違いないが,その様式は相当大局的なものである。
したがって脳神経医,精神医学者など脳の機能に関係する多くの人々からは,その限局性不足のゆえに余り高い評価が得られていない。しかし脳に関する情報の中で.もっとも簡単に取得可能なものか脳波であることも事実である。そこでこの長所を生かす道を探るべきであろう。脳波自身のデータに出来るだけ局所的な情報を入れる方法には,脳波トボグラフィ(空間分布図).誘発電位法がある。
 もう一つのやり方は,局所性欠如の欠点を補う他の方法と共存して使うことである。それには当面脳磁図,ボジトロンCT.MRIなどが挙げられよう。脳磁図は.脳波が電圧を浪rJっているのに対し.本質的に電流を測定するものである。よって方向定位性があり,また電極を直接頭皮に接触せずに測定できる利点を持つ。一方ポジトロンCTは普通血液中に同位元素を注入する侵襲型の手段をとるが,目標の位置精度は最大であり.MRIはこの点に関し中間的な特性を有する。これらを単に併置するのでなく.コンピュータを利用した統合型のシステムとし.脳波だけの場合でも過去のデータについての相関などを通し,対局所情報の補填ができれば有効て面白い。加えてこの場合には画像パターンの情報だけでなく,同時に存在する音情報なども考慮に入れることが有効である。

6. 筋電図の利用法
 調査した文献中には,筋電図を単独に取り上げた論文は見当たらなかった。ただ1件あったのは脳波による睡眠状態監視に関連した,REM状態なと眼球運動検出のための話題である。これは多分調査のキー項目に,「ambulatory(無拘束)」が入っていたことにもよろう。
 一般的に人間の動いている部分に必ず筋肉運動か関与しているのを考えれば,その利用範囲は非常に広いと思われる。この時筋電図を周波数モニターし,例えばH波の有無などが重要な情報を与える。高齢化社会また交通災害などいろいろと危険の多い社会において
運動の不自由な人が増えている現在,筋電図の利用は今までにない展望を持っていると考える。

5. その他
(目的対象)
その他に関する家庭モニタリング
岡井 治

1. はじめに
 この項に当たるものは,心電図,循環動態.呼吸.神経・筋を除くものである。これらを対象とした家庭用モニタリング・システムを考えると2つが挙げられる。1つはハード的なもの.他はソフト的なものが見込まれる。ハード的なものとはこれまで扱われてきた計測システムである。ソフト的とは苦痛を訴える人の自覚症状をコード化し,パソコンで処理してもう1つの医学情報とするものである。

2. ハード的家庭用モニタリング・システムの現状と将来への提言
 これまでの文献のなかで,家庭モニタリング・システムとしてこの項に属し,しかもふさわしいものは,心電図に用いる電極の改良,代謝,脳庄,食道のPH.胎児運動などの計測システムのほかに糖尿病患者の治療と血糖値モニタリング・システムが検討されている。種々の装置について一般に小型化,軽量化,あるいは実時間の計測化により質的な向上が計られているが,本質的なところの無侵襲非観血的および無拘束計測にまで改良が進められている例は少ない。この点さらに検討する必要がある。
(1)電極の改良:生体情報を計測するための電極は,求める信号だけを捉えるのか理想であるが,実際には多くの雑音が混入する。このため電極の面積を大きくし,ゴムなどを用いた柔らかい電極をつくることにより体動などからくる雑音を減少させている。欲をいえば,温度変化や体動などによる基線の変化がない電極で長時間安定した生体情報を高感度直流増幅器により増幅記録できることが必要である。
 もっとも,現状では電極を使った生体情報は,直流増幅器でほとんと増幅できない。そこで次のような直流の増幅方法が考えられている。すなわち,生体の電気現象は必ず磁気現象をともなっている。したがって,超電導量子干渉素子(SQUID)を用いて微弱な生体磁場を捉えることにより,その直流分まで計測できるようになってきた。心臓から発生する磁場は約10-7(Cガウス)で心磁図として,脳から発生する磁場は約10-8G(ガウス)で脳磁図として,また筋からでる磁場は約10-7Gで筋磁図として計測している。
(2)代謝の計測:作業者の酸素消費量を連続的にモニタリングすることにより長時間におよぶ作業の質と量を時系列的なエネルギー代謝率の推移からリアルタイムに評価できる。実際に経時的な代謝量の変化を計測できるようになったか,もう少し小型化することにより重労働時に邪魔にならない,すなわち拘束の少ない装置の開発が期待される。
(3)脳庄の計測:初期的な研究であるが両側側頭部に円弧状の金具をつけ,金具の歪から脳圧も計測しようとするものである。ほかに乳幼児用として大泉門に置いたペイパー・ストレインゲイジから脳圧の計測を行っている。これにより医学的に重要な情報がえられる。研究は初歩的なものであるか,乳幼児の場合センサーの固定で苦労している。一般にセンサーの生体への装着などか簡単で脳圧の絶対値が正確にもとめられる装置の開発か望まれる。
(4)食道pHの計測:アンチモンの単結晶の導入によりサイズの小さな電極(1.6mm)を食道に留置することによりpHの計測ができる。このことで以前より被験者にかかっていた負担かかなり軽減された。センサーの小型化なとにより,かなり患者の負担は軽減されているが,センサーの有効時間がみじかいなどの欠点がある。食事のときなどにも違和感を与える。これら欠点の少ないセンサーの開発が要望されている。
(5)胎児の運動の計測:胎児の呼吸運動や胎動などを無侵製的に計測することは,胎児の健康状態を知るのによい方法である。超音波を利用したテレメータにより胎児運動を捉えるこの装置は,ほぽ満足できるもので,産科領域て広く使われるようになってきている。さらに小型軽量化が進めば理想に近くなる。
(6)糖尿病における治療と血糖値の計測:在宅治療の最も必要な病気は糖尿病であり,これを欲する患者も多い。とくに妊娠している患者でインスリン依存性の場合には正常な血糖値を維持するように適切な量のインスリンを与えなければならない。このため手指あるいは耳菜から観血的にとった血液から血穂値を計測している。これをもとに計算された適切な量のインスリンを腹壁皮下組織に特別な機械により注射して治療している。このように毎日長期にわたって検査と治療を繰り返さなければならない。したがって,蚊の吸血メカニズムなどを利用することにより,できるだけ非観血で無拘束に近い方法で血糖の検査と治療ができることが望まれる。

3. ソフト的家庭用モニタリング・システムの現状と将来への提言
(1)問診システム:これまで工場労働者や作業場における労働者の健康管理のため,あるいは公害による苦情をもつ人々の健康状態を調べるために種々の問診システムが開発されている。これまでに開発された問診システムを一般家庭用に改良し,家庭にいる人の愁訴をコード化.ランキング化する。このデータを参考にし,前述のハード的家庭用モニタリング・システムでえたデータをもとにして適当な医学的指示を与える。
(2)計測システムの付属として:これまで述べてきたハード的モニタリング・システムの各計測システムに付属して,この問診システムを付ければ計測システムの機能はさらに拡大する。例えばホルター心電計の使用中に患者の反応を同時に記録すれば,この心電図の分析価値はさらに大きくなる。このように機器の操作法や患者への注意.患者の反応などか付け加えれば,患者本人のためだけてなく医療関係者の治療行為のために大きな助けとなるであろう。


(方法)
その他の領域への提言(工学的側面)
土肥 健純

1. はじめに
 心電図循環動態呼吸,および神経.筋の領域においては.現在モニタされている測定対象の多くは古くから重要視されており,かつ明確なものか多いため.研究や開発はかなり系統的に行われている。それに対して,それ以外の領域におけるモニタリングは.その対象が必然的に種々雑多となり,その研究や開発の多くは単独になりやすく.そのため系統的に分類することは.はなはだ困難となる。また,この「その他の領域」におけるモニタリングの研究対象は,当然ながら関連のない個々独立なものの集合となってしまう傾向にあるが,本来は「その他の領域」におけるモニタリングの対象のほうが前記の領域における測定対象よりもはるかに多くなるはずである。従って,従来は前記のように測定の重要度が高く,かつ研究や開発が容易な領域におけるモニタリングが主として行われてきたが,今後は徐々にではあるが,従来手のつけられなかった領域におけるモニタリングの研究やセンサの開発が行われるようになると思われる。
 今後研究や開発が重要になると思われるいくつかのモニタリングについて,その問題点や重要性などについて若干の提言を以下に述べる。

2. 圧力測定
 圧力測定における血圧測定,特にそれを無侵襲的あるいは無拘束的に測定することは,循環動態において重要なモニタリングであるため多くの研究がなされ,かつセンサ自身の研究も多くなされている。一方,この領域以外の圧力測定,例えば脳圧,脊髄圧,内耳圧,眼圧など,生体内の圧力を無侵襲的あるいは無拘束的に測定することは,検査,診断,治療,研究とあらゆる医学の領域において必要かつ重要である。しかし,血圧測定用センサの応用を除くとその研究開発には技術的に困難な点が多いため,実現されているものは極めて僅かである。
 今後これらの領域における特殊な圧力のモニタリングとして,その基礎となる新しい測定方法やセンサの開発は不可欠であり,特に直径0.1mm以下の超小型圧カトランスジューサの開発,拘束的であっても無侵襲的に生体内部の部分的絶対圧を測定する方法の開発などはその応用の広さからみて重要である。

3. 濃度測定
 濃度センサを用いたモニタリングとしてReflux患者のPHモニタリングのように大きな変化量の計測は以外と容易であるが,その反面体液中の物質濃度の微小変化や長時間にわたる緩慢な変化を正確にモニタリングするセンサは常に安定性の面で問題かあり.PHセンサを含めて真に満足のゆく性能を有するものは存在しないといっても過言ではない。
 体液中の物質濃度測定はPHセンサのみならず,イオンセンサ.グルコースセンサ.ガスセンサ.免疫センサ,生化学的活性物質センサなどの開発は残念ながらその重要性のわりには進んでいない。確かにISFET(イオン選択性電界効果型トランジスタ)は,電極反応部とその微小信号を増幅する回路とを一体にしてその性能を向上させているが,現在のこの種のセンサはその測定原理から頻繁にキャリプレーションを必要とするという決定的な弱点かあるため,電圧や電流測定のように一度調整すれば常時絶対測定が可能とはいかな
い。したがって,そのような欠点を克服したセンサの開発を測定原理自体から見直して行うべきであろう。
 また.これらのセンサは体液をサンプリングする必要がある場合が多いため.センサの開発とともにサンプリング方法の開発も重要であろう。とくに最近よくいわれている蚊の吸血機構を応用した採血方法などはよい例であり.応用範囲は極めて広いため,その開発意義は極めて大きいと言えよう。

4. 温度測定
 生体内部の部分的温度測定は,炎症をおこした疾患臓器や疾患部位の検出や確認にも応用可能であるため,単にハイパーサミア療法に際して必要であるのみならず,各種の疾病の診断や治療にも有用である。したがって,生体組織の温度とその電気伝導度との関係から,多数の皮膚電極を用いて生体内温度分布状態を無侵襲的にモニタリングする方法は精度的に問題はあるものの今後の発展か期待される生体計測の分野である。

5. その他の測定
 医療に必要と思われる「その他の領域」におけるその他の測定として,生体形状の測定,特定組織の位置測定,身体・臓器なとの運動測定などが挙げられる。
 生体形状測定は体の表面形状よりは,体内臓器や腫瘍などの病変部の形状測定のほうがモニタリングという点からは重要である。特に形状測定と位置測定とを組合わせることにより,癌のような病変組織に対する術前の診断や術後の経過観察において,病変組織の位置と大きさを容易に観察,モニタリングすることは極めて有用であると思われる。この様な測定装置の実用化は現段階では甚だ困難であろうが,理屈上では病変組織に選択的に付着・吸収され,かつX線CT,MRI.超音波などにより検出可能な薬品の使用により,実現は可能である。

 一方,身体各部位の動きのモニタリングは四肢,眼球,心臓,心臓弁,胃腸などとその適応範囲は広いが,その測定原理は夫々異なるであろう。特にこの領域では無侵襲,無拘束測定という意義が極めて大きく,かつ連続モニタリングが重要な対象であると言える。

6. おわりに
 生体のモニタリングの対象は循環系,神経,筋肉系,呼吸系などの分野において大いに行われているが,それ以外の領域においても種々のモニタリングが行われていたり,あるいは現在は行われていなくとも強い要求があるものも多い。そして,このようなものは,計測対象の数は非常に多いのに対して,各々の対象となる数は上記の領域に比べて極めて少ないものとなろう。即ちメーカとしては,多品種少量生産ともいうべき部類に属するものであろうか,今後はこの種のモニタリングが生体計測の分野で広がり,かつ重要となると思われる。


III 技術交流に関する事業
1. 技術交流助成事業
 電子計測技術を促進するためには,国際化時代に対応して,内外の研究者相互の先端技術の国際的交流が不可欠である。このため次のとおり,国際的会議等への出席者に対して助成を行った。
 これらの会議等において活撥な技術交流活動が行われた。

技術交流に関する助成金贈呈者
(注:表/PDFに記載)

2. 生体電子計測研究会
 理学,工学と医学,生物学との境界領域にある学際的研究は,医用生体工学をはじめバイオテクノロジー等,広くそのニーズがますます隆まっている。
 このため,かかる分野における共通的,基盤技術である「生体電子計測技術」に関する研究課題について,関連する専門家の研究者が交流し,ニーズ,シーズに関して討議し,今後の方向等を探求することを目的として,当財団内に,生体電子計測研究会を昭和60年12月に設置した。
 本研究会は、東京大学医学部の斎藤正男教授のご指導を得て,懇談会方式にて年間4回程度開催し、開催にあたっては、医学・生物学と理・工学関係の話題提供者を交互に定めて自由活達に討議を進めてきている。研究会のメンバーは、下記のとおり12名である。
 以下に研究会の開催状況を示す。

生体電子計測研究会メンバー (50音順:敬称略)
岡井 治 杏林大学保健宇部 臨床生理 教授
小野 哲章 三井記念病院 MEサービス部 技師長
川上 憲司 東京慈恵会医科大学 放射線医学教室 助教授
関谷 富男 防衛医科大学校 医用電子工学講座 講師
多氣 昌生 東京都立大学 工学部 電気工学科 助教授
辻 隆之 東主医科歯科大学 医用器材研究所 助教授
土肥 健純 東京大手・工学部 精密機械工学科 助教授
西村 正信 土浦協同病院 消化器内科 医長
舟久保 登 東京都立科学技術大学 管理工学科 教授
守谷 哲郎 電子技術総合研究所 材料部 材料物性研究室 主任研究官
山下 衛 筑波大楽 臨床医学系 麻酔グループ 助教授
渡邊 瞭 東京大学 医学部 医用電子研究施設 助教授

生体電子計測研究会開催状況
(注:表/PDFに記載)


昭和61年度(第3回)
技術開発助成研究成果報告

心臓・血管内血流速度ベクトル分布イメージング装置の開発
基礎体温自動計測、ンステムの開発
サーモグラフィー用室温動作赤外線撮像素子の開発
レーサーラマン分光法に基づく白内障予知システムの基礎的研究
磁性体微粒子によって散乱される光の偏波面ゆらきを利用した免疫反応の超高感度検出に関する研究
超音波位相追従法による血管追跡型超音波パルスドプラ血流計の開発
生体内における筋活動のX 線回折法による計測技術の開発
レーザー顕微蛍光分光測定法による単一細胞内力)レシウムイオン濃度測定法の開発
超高感度カメラと画像処理技術を用いた細胞内カルシウムイオンの動態・解析システムの開発