2016年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(海外派遣)・鈴木 規之

研究責任者

鈴木 規之

所属:慶應義塾大学大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻 修士課程1年

概要

1)会議又は集会の概要

MEMS2016 は微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems、MEMS)分野における最大規模の国際学会である。対象としている分野はセンサ、バイオ、光学、機械工学など多岐にわたり、生体情報センサや体内への埋め込みチップなど医療分野への応用が期待できる研究を含め、最新の研究成果が発表される。

今回は中国上海にある Shanghai International Convention Center において開催された。毎回厳しい査読審査が行われ、今回も約 840 件の投稿されたアブストラクトのうち、採択された論文が約 250 件と発表の質は非常に高く保たれている。シングルセッション形式で行われる本会議は参加者同士でのやりとりの機会が豊富にあり、アジア、欧米諸国をはじめとする世界中から集まる研究者間の技術交流を大いに促進している。

 

2)会議の研究テーマとその討論内容

本会議において報告された研究成果を大きく分類して、発表内容とともに以下に示す。それ以外には4 日間会議の初めに招待講演が行われた。

  • Optics:レンズやディスプレイをはじめとする光学素子に関する発表が行われた。

  • Fabrication & Materials:無機化合物、有機化合物や細胞を組み合わせマイクロスケールでの複雑な構造の作製に関する発表が行われた。

  • Resonators:共振器の作製法に関する発表が行われた。

  • Microfluidics:マイクロスケールにおける流体に関する発表が行われた。

  • Pressure sensors:圧力センサに関する発表が行われた。

  • Medical Microsystems:体内で用いるフレキシブルデバイスなど医療機器に関する発表が行われた。

  • Cell Cultures:擬似的な臓器などの人体環境の作製に関する発表が行われた。



 

3)出席した成果

本会議において「 MICROFLUIDIC PATTERNING OF HEMISPHERICAL DOME-SHAPE PHOTONIC COLLOIDAL CRYSTALS FOR WIDE-VIEWING-ANGLE REFLECTIVE DISPLAY」という発表題目で初日のポスターセッションにおいて 2 時間のポスター発表を行った。

発表した研究内容はコロイドをディスプレイとして応用するためにドーム形状にパターンする方法である。粒子径の揃ったコロイド粒子が結晶化することによって作製されたコロイド結晶は特定の波長の光を反射する。コロイド結晶により反射された光は色素の発色に比べ反射光率をよくすることが可能で、バックライトを必要とせず消費電力が少ない反射型ディスプレイへの応用が期待できる他、結晶の空隙に刺激応答性のゲルを埋めることでグルコース濃度や温度の変化を色で表示する生体化学物質センサ素子への応用の基礎技術としても有望である。この結晶での発色には角度依存性があり、見る方向によって視認される色が変わってしまうという問題があった。そこで本研究では結晶の形状を半球のドーム状にすることにより、同じ色で見える視野角を広げることを可能とした。ドーム状にパターンされたマイクロ流路内にコロイド溶液を流入し、マイクロ流路の遠心と溶媒の蒸発によりマイクロ流路と同様の形のコロイド結晶を 2 種類作製した。複数の角度から分光測定により、反射スペクトルを計測した結果、角度を変えても反射波長のピークが変わらないことが確認できた。

  • 時間の発表において約 20 人参加者の方との質疑応答を行った。本研究で扱うコロイド結晶は今回参加した人にとっては馴染みのない物質であるため、コロイド結晶の性質や発色の原理についての多くの質問があった。一例として

  • なぜ角度依存があるのか→角度が変わると光路差が変わり反射波長が変わるため

  • 粒子の材料は何か→ポリスチレンを利用。シリカでも可能である。

  • なぜ結晶化するか→溶媒の蒸発により粒子が自己組織化的に結晶化する。

  • ほかに応用できるのか→空隙に刺激応答性のゲルを充填すると温度やグルコースに対するセンサとして応用できる。


といった議論を行った。以上の議論から多くの人に自分の研究に興味を持ってもらうとともに、自分の研究を人に伝えるときにどこを強調し、どこを詳しくすると人に伝わりやすいかを今後の発表に生かす上で貴重な経験をすることが出来、有意義な発表時間を過ごすことが出来た。

また自分以外の発表で説明されたデバイスの作製方法や評価方法など今後の自分の研究に活かせる情報を収集することもできた。

 

4)その他

3日目の夜に学会が主催する懇親会が催され、参加者が一堂に会した。その場においては著名な研究者や同年代の研究者と交流をすることができ有意義な時間を過ごすことが出来た。

 

(注:写真/PDFに記載)発表時の様子

(注:写真/PDFに記載)3 日目のバンケットの様子