2016年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(海外派遣)・金澤 裕樹

研究責任者

金澤 裕樹

所属:徳島大学大学大学院 医歯薬学研究部 医用画像情報科学分野 助教

概要

1)会議又は集会の概要

欧州放射線会議(European Congress of Radiology: ECR)は、毎年 3 月初旬に開催される放射線医学に関する国際会議である。主催団体は、European Society of Radiology (ESR)であり、その使命として、一般市民の医療ニーズを提供し、絶えず放射線利用の質の向上に努めながら、科学研究・教育・訓練を支援することを掲げている。その会員数は約 63,000 人以上で、ヨーロッパで最大かつ革新的な会議として位置付けされている。私の参加した ECR2016 は、参加人数は 25,998 人と開催終了後に Web ページにて発表があった。

 

2)会議の研究テーマとその討論内容

この会議で発表した研究テーマは、拡散強調 MRI における高 b 値 DWI 上の信号対雑音比(SNR) を改善するために、ライス分布の確率密度分布関数(PDF)を用いた SNR の補正方法の開発について報告を行った。その内容は、ファントム実験を行い、信号の推定値を、各 DWI データからライス分布関数のフィッティング曲線を用いて計算し、異なる撮像シーケンスの測定値と推定値との間の補正率を評価した。結果として、高 b 値の時の標準偏差値と平均信号値との比(つまり SNR)は、全ての 3.0 未満であった。雑音推定により、DWI の詳細な情報を得られるかが討論の焦点となった。

 

3)出席した成果

本発表は、単一指数関数の信号減衰を模擬したものである。しかし、生体では多指数関数の信号減衰を示すことが多いので、本手法の適応を調査する必要があることがわかった。さらに、拡散強調画像は単に画像を取得するだけでなく、様々な解析法を駆使した機能画像としての有用性が臨床的知見からも証明されていた。また、高品質の拡散強調画像は、臨床的にもますます重要になってくることを確認出来た。

 

4)その他

Electronic Presentation Online System(EPOS)の発表で、領域や国毎に選出された口述発表は、大変興味深く聴講出来た。特に、国別のセッションは、母国語での発表形式であったので、活発な意見交換が可能であった。また、医療機器展示や各ベンダーの講演を通して、人工知能( Artificial Intelligence; AI)を採用した医療機器や、クラウドを用いたビッグデータの解析など、近年のデータマイニング技術の進歩と重要性を再確認することが出来た。さらには、日本や米国の学会と違い、超音波断層撮影装置の機器展示や発表が多いことが少し疑問であったが、欧州では、保険診療や MRI などの所有台数の制限から超音波画像診断が主役になっていることを、欧州の研究者と話して有意義な情報が得られた。

(注:写真/PDFに記載)

会場 2 階から撮影した会場風景写真。エントランスは、開場から閉館まで賑わっている。このエントランスを中心に教育講演、口述講演、電子ポスター発表、機器展示ブースへとアクセスできる。

 

(注:写真/PDFに記載)

機器展示ブースの写真。X 線管球と画像検出器がロボットのように動く。動きは、プログラムされており、人はもちろん、物体なども検知する事が可能である。