2016年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(海外派遣)・梶本 武利

研究責任者

梶本 武利

所属:神戸大学大学院 医学研究科 生化学分子生物学講座 助教

概要

1)会議の概要

2015 Cell Biology ASCB Annual Meeting(2015 年アメリカ細胞生物学会年会)は、アメリカ合衆国・サンディエゴのサンディエゴコンベンションセンターにおいて 2015 年 12 月 12 日から 5 日間の会期で開催された。本会議は、細胞生物学の基礎研究の分野では世界最大の学会と言われており、世界各国から細胞生物学分野の研究者が一堂に会する会である。今大会で 55 回目を迎え、7カテゴリーのシンポジウムにおいて 17 題、26 カテゴリーのミニシンポジウムにおいて 231 題、15 カテゴリーのサブグループシンポジウムにおいて 146 題、123 カテゴリーのポスターセッションにおいて 2429 題の合計 2823 題の最新の報告がなされ、活発な議論が交わされた。さらに世界各国から 234 社の企業が参加し最新技術の発表や展示が行われ、産学の貴重な交流の場となった。

 

2)会議の研究テーマとその討論内容

本会議では、”Extracellular Vesicle Assembly” のセッションにおいて、”Sphingosine 1-phosphate signaling on multivesicular endosome triggers sorting of protein cargo into exosomes”というタイトルで発表を行った。

ポスターの貼り付けは発表前日の夕刻に行うため、発表当日は早朝からすべてのポスターをチェックすることができる。私の質疑応答タイムは午後 1 時 30 分から午後 3 時までであった。10 分前にポスター付近にスタンバイしたが、直後から早速質問を受け、発表終了時間の午後 3 時を過ぎても質疑応答は続き、結局ポスター展示の終了時間に近い午後 5 時近くまで活発なディスカッションが続いた。発表の内容は、大きく 3 つのパートに分けられる。1)我々の研究対象であるスフィンゴシン 1-リン酸(S1P)シグナリングが一般的な細胞膜上での機構と独立して後期エンドソーム上に存在すること、2)後期エンドソーム上での S1P シグナリングの活性化がエクソソームへの積荷タンパク質のソーティングを引き起こすこと、3)ナノサイズの微小膜小胞であるエクソソームの積荷タンパク質の密度定量法の開発、である。エクソソームは近年癌や神経疾患などの診断・治療のターゲットやドラッグデリバリーへの応用などで大変注目されており、今回は前記 2)および 3) を中心にディスカッションを行う目的で会議に参加したが、予想通りエクソソームに関する質問が全体の 8 割以上を占めた。

 

3)出席した成果

前述の通り、私自身の研究発表では大変活発な議論が交わされ直接的に有益な情報交換を行うことができた。また、すぐにでも共同研究を始めたいという申し出も受けることができた。今後の国際的な共同研究への発展が大いに期待される。

私が主に参加したエクソソーム関係のシンポジウムでは、エクソソームマーカーの診断・治療への応用やエクソソームのドラッグデリバリーツールとしての利用などに関する最新の知見が報告され、有意義な情報を数多く得ることができた。ただエクソソームに含まれる積荷の測定方法に関する報告は少なく、各種エクソソーム技術の実用化へ向け、今後エクソソームの積荷の新規測定法の研究が益々求められると感じた。

 

4)その他

サンディエゴコンベンションセンターはダウンタウンの中心にあり、1 日のプログラム終了後は皆横断歩道を渡って、会場目の前の歴史豊かな活気あふれる通り、ガスランプクォーターへと流れていく。日本と同じ、研究交流夜の部の始まりである。

 

最後に、技術交流助成交流プログラム【海外派遣】の援助を賜り、2015 Cell Biology ASCB Annual Meeting に参加する機会を与えて下さいました、公益財団法人中谷医工計測技術振興財団に深く感謝申し上げます。

 

(注:写真/PDFに記載)会場デッキからの眺め

(注:写真/PDFに記載)自身の発表