2016年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(海外派遣)・小山 稔生

研究責任者

小山 稔生

所属:金沢大学大学院 自然科学研究科 機械科学専攻・博士前期課程

概要

1)会議又は集会の概要

AIM(Advanced Intelligent Mechatronics)は、新しい研究成果や将来性のある発明、メカトロニクスに関連したアプリケーションやロボティクス、コントロール、オートメーションやそれらに関連する分野の各国の専門家を集め、議論する学会である。IEEE Robotics and Automation Society(RAS), IEEE Industrial Electronics Society(IES) 及び、ASME Dynamic Systems and Control Division(DSCD)が本学会のスポンサーとなっている。AIM はメカトロニクスに関する IEEE/ASME の学会である。本学会は今年度で 14 回目の開催となる。1997 年には東京で開催され、1999 年アメリカ(アトランタ)、2001 年イタリア(コモ)… …と続き、本年度は 2015 年韓国(釜山)での開催となった。本年度は 31 国 456 件の応募があり、313 本の論文がアクセプトされた。これらの論文は 48 つのセッションに分類され、それぞれのセッションにて発表された。セッションに関しては以下の通りである: actuators, sensor and sensing system, MEMS, modeling and design of mechatronic systems, control application, humanoid robots, biomechatronics, micro/nano manipulation, mobile robots, legged robots, human machine interfaces, parallel mechanisms, robot dynamics and control, medical robotics, rehabilitation robotics, energy harvesting & storage, alternative power sources and many other frontier fields of mechatronics.

 

2)会議の研究テーマとその討論内容

私の研究テーマは Medical Robotics であり、題名は手術用吸引器に取り付け可能な力センサシステムの開発というものである。その内容は、手術用吸引器にレトラクター及び力センサの機能を付与することで、吸引器とレトラクターの器具持ち換え時間を短縮するだけでなく、レトラクター使用時の力を測定できることから、安全に使用できるというシステムを開発するというもの。したがって開発した力センサは吸引器に取り付け可能でありレトラクターとしても使用できる構造になっている。手術器具であるため除菌滅菌を簡単化する、コストを削減するなどの理由より、電気装置の使用を廃止した。一般的な力センサにはストレインゲージが用いられており、本研究では用いられないため、力計測原理に力の可視化技術を用いた。方法は力を負荷したときの力センサ内の Pole と呼ぶ部分の移動量をキャリブレーションしておくことで、Pole の移動量から力を測定するというものである。本研究において開発した力センサの特徴は、「吸引・レトラクト・力センシングの 3 つの機能を持つ」「力の可視化技術を用い、術者に力のフィードバックをする」ということがあげられる。発表の際、開発した力センサシステムの力検出部の構造上、曲面に対しても使用できるかどうかが議論となった。どのような形状の面に対しても、センサの Contact part                                             と呼ばれるレトラクトする部位の中央に力が集中する構造になっているため問題なくレトラクト及び力センシングが可能であるという回答をした。また、実際の状況での評価をすることで可能であることを証明していくという課題があることを解答するとともに、課題を早急に解決することが必要だと再認識した。

 

3)出席した成果

出席の目的のすべてを達成することはできなかったが、ⅰ)他国との研究方法の違いを知る、ⅱ)海外の研究調査、ⅲ)経験を積む、という目的は達成した。他国との研究方法の違いを知ることについて、他国の研究者と議論をすることで、今後の課題となりうる問題を知ることができた。問題に関しては上述した通りである。海外の研究調査においては研究発表を通して数多くの研究を知ることができ、私自身の研究に役立つものや、同研究室の研究者にとって利益となる研究の情報も得ることができた。自身の研究に役立つものとして、触覚提示装置の研究やフレキシブル触覚センサの研究などがあげられる。またスリップ検知に関する研究やフレキシブルアームに関する研究は同研究室の研究者にとって利益 となる研究内容であったと考えられる。ほかにも、音(リズム)を用いたリハビリテーションロボットの開発やイオンを用いたアクチュエータの研究など様々な研究があり、それらは我々の研究にはあまり関係しないが、内容や研究プロセスなど非常に興味を引くものが多々あった。これらの研究はいずれ 我々の研究のヒントを与えてくれると感じた。経験を積むことに関して、海外での学会発表は非常に貴重な経験となった。様々な国の研究者に対し研究内容を伝え、意見を頂き議論をするという経験は今後の研究発表をより潤滑に行うために役立つと感じた。また意見交換により自身の研究に対する意見や他の研究者の研究における姿勢、施設、プロセスなどを伺うことができた。それらの意見は今後の研究に十分役立つ利益であると感じた。

 

4)その他

(注:写真/PDFに記載)

研究発表の様子。30 人ほど収容可能な個室での発表。発表時間は約 20 分間。発表 15 分、質疑応答 5 分。1 セッションに 6 つの研究発表が行われる。

(注:写真/PDFに記載)

バンケットの様子。他の研究者との交流の場として様々な研究者との交流を深めた。研究発表で聞くことができなかった研究者の研究を聞いたり、時間内に質問できなかった研究についての質問をこの場で行った。