2016年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(海外派遣)・寺﨑 健人

研究責任者

寺﨑 健人

所属:九州大学大学院 医学系学府 保健学専攻

概要

1)会議又は集会の概要

今回で 14 回目の開催となった国際放射線防護学会国際会議(IRPA)の開催地は、南アフリカのケープタウンで、アフリカ大陸で初の IPRA 開催となった。IRPA は 4 年に 1 度開催され放射線防護の分野では最も権威のある会議であり、その設立目的は放射線防護に携わる世界の研究者や技術者の情報交換と技術向上を援助し、人類の福祉のため放射線の医療、科学、工業技術への利用を図ることである。第 14 回のテーマは”Practicing Radiation Protection~Sharing the experience and new challenges~”(放射線防護の実践~経験の共有と新たな挑戦~)ということで、医療や産業での放射線利用に長い歴史のある南アフリカで、世界中の放射線防護の知識や技術を共有し、現実にある課題に挑戦していこうという意味が込められた。

 

2)会議の研究テーマとその討論内容

本会議では放射線防護に関連する様々な分野の研究について議論がなされていた。口頭発表の内容としては、放射線物理・化学・生物学といった基礎的なものから、放射線検出、放射線作業従事者や公衆の被ばく防護、小児の患者に対する放射線管理、ラドンや自然放射線、線量計測、線量の最適化など放射線防護にまつわる多岐にわたる分野の研究が取り上げられていた。今回の IRPA14 では、医療現場における水晶体の被ばくに関する研究、福島第一原発事故や、今年で事故から 30 年が経つチェルノブイリ原発事故に関する討論が多く見受けられた。

 

3)出席した成果

国際放射線防護委員会(ICRP)が 2011 年に水晶体の等価線量限度を引き下げたこともあり、現在進行形で国際的に眼の水晶体の線量計測に関する取り組みが進められている。医療現場においては、IVR という X 線透視などを使用しながらカテーテルを体内に挿入して行う低侵襲の治療法があるが、この治療の増加に伴い手技に従事する放射線診療従事者の被ばく線量の増加が懸念されており、本会議においても IVR 中の従事者の水晶体被ばくの実態や防護の取り組みについて報告がなされていた。

今回私が IRPA14 で発表した内容は、IVR などの比較的高線量率な被ばくを伴う検査において、従事者の被ばく状況をリアルタイムに把握することを目的とした半導体検出器の特性評価である。放射線防護はもちろんのこと、医学的、また工学的な立場の研究者の方々と貴重な議論を交わすことができ、今後検出器のさらなる改良に有用な情報を得ることができた。

 

4)その他

この度は貴財団の技術交流助成に採択頂き、心より御礼申し上げます。今回、放射線防護分野で最も権威ある IRPA に学生ながらにして参加するという、大変貴重な経験ができたこと、また、会議において世界の研究者たちと今後の研究の一助となる情報交換ができたことを大変有難く感じております。これもひとえに、貴財団からの助成によるものと深く感謝しております。今後もさらに研究を発展させて、よりよい成果を得られるよう精進してまいります。

(注:写真/PDFに記載)発表ポスターの前にて

(注:写真/PDFに記載)ポスターセッションの様子