2016年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(海外派遣)・井口 泰成

研究責任者

井口 泰成

所属:大阪大学大学院 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 修士2年

概要

1)会議又は集会の概要

the Annual Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics は 、 The American Society for Mass Spectrometry (ASMS) が一年に一回開催する世界最大の質量分析学の会議であり、毎年 6,500 人以上の研究者が参加し、約 3,000 件の研究内容がポスターや口頭などで発表される。参加する研究者は教育機関をはじめ、民間企業や政府の所有する研究室に所属している。質量分析自体の技術や装置のみならず、化学や地質学、法医学、生物学、物理学に関する基礎研究などについても議論が行われる。

 

2)会議の研究テーマとその討論内容

私は質量分析における試料のイオン化法、および生成されたイオンの導入法について研究を進め、得られた成果を報告した。従来、質量分析における液体試料のイオン化にはエレクトロスプレーイオン化法が一般的に用いられてきたが、試料中の不純物が目的試料の検出感度を低下させることが知られている。私は、不純物の影響を受けにくいとされる赤外レーザー照射によるイオン化法を、液体試料の質量分析に応用することに成功した。更に、減圧容器を制作してイオン源の圧力を低下させることにより、装置内へのイオンの導入効率を高めることにも成功した。この技術が発展することにより、従来では不純物の除去に膨大な時間を必要とした細胞膜中のタンパク質試料の解析スピードを著しく高めること ができ、新薬開発のブレークスルーに繋がることが期待できる。

 

3)出席した成果

国際会議に参加することにより、質量分析学における最新の動向について知ることができ、また多くの方々に自身の研究を知っていただくことができた。近年、従来法とは異なる様々な新しい質量分析イオン化法が提案されており、私が研究を行っている赤外レーザーイオン化法も質量分析学における重要な技術革新に繋がることが期待できた。一方で、研究成果発表の場では世界中の研究者から様々なアドバイスをいただくことができ、今までとは異なった視点で研究を見つめ直し、新たな方向性を見出すことができた。

 

4)その他

レーザーを用いたイオン化技術の応用として、イメージング質量分析に関する議論が盛んに行われていた。イメージング質量分析では平面状のサンプルに集光したレーザーを照射し、走査することでイメージを得る手法である。従来法では乾燥させた生体試料に紫外レーザーを照射していたが、私が研究を行っている赤外レーザーイオン化を応用できれば、ウェットな生体試料から直接イメージを得ることが可能であると考えられた。今後も様々な研究分野に関心を持ち、自身の研究の新たな方向性を見出していきたい。

(注:写真/PDFに記載)
64th ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics のポスターセッションにて説明を行う様子