2016年[ 技術交流助成 (日本招聘) ] 成果報告 : 年報第30号

平成27年度技術交流助成成果報告(日本招聘)・上原 弦

研究責任者

上原 弦

所属:金沢工業大学 先端電子技術応用研究所 所長・教授

概要

1)はじめに(招聘の概要)

平成 27 年 10 月 7 日~8 日、台湾中央研究院・台湾中央大学・金沢工業大学合同脳磁計応用研究会を

開催した。本研究会の開催にあたり、台湾中央研究院及び台湾中央大学から 2 名の研究者を招聘した。

 

2)被招聘者の紹介

Prof. Ovid Tzeng

米国ペンシルベニア州立大学にて Ph.D を取得後、カリフォルニア大学リバーサイド校に勤務。1990 年に台湾に戻った後、国立中正大学にて学部長や国立陽明大学学長を歴任。2002 年から台湾中央研究院にて副学長として勤務。国立中央大学、国立交通大学、国立清華大学、国立陽明大学で形成する台湾連合大学システムの校長を 2006 年から勤める。また、2000 年から 2012 年の間、台湾教育部大臣をはじめ台湾政府における教育関係の中核役職を歴任。

専門は認知心理学、言語・注意・記憶・読解過程に関する神経科学。1994 年、台湾中央研究院・院士に選出される。

 

Prof. Denise Wu

台湾中央大学認知神経科学研究所( Institute of Cognitive Neuroscience, National Central University)の所長・教授であり、認知神経科学が専門。米国ライス大学にて Ph.D を取得後、ペンシルベニア大学に勤務。2005 年に台湾中央大学に移り、2014 年から現職。

2014 Outstanding Research Award, National Central University, 2013 Distinguished Research Award, National Science Council, Taiwan など多数受賞。

 

3)会議または集会の概要

本研究会は 10 月 7 日からの二日間にわたり開催され、脳磁計を利用した認知言語学に関する研究や脳磁計の新しい応用等について計 18 件のテーマが発表された。参加者は日本・台湾両国から計 37 名を集めた(うち台湾から 13 名参加)。

 

4)会議の研究テーマとその討論内容

本研究会では、主に言語に関係した脳活動に関するテーマが取り上げられた。招聘した Wu 教授からは”Neuroimaging explorations of Chinese sentence processing” と題して、中国語における文字(漢字)や文章を読解する際の脳活動イメージングに関する研究手法や最新の結果をご紹介いただいた。来日したグループからはこの他にも、漢字を読む際の視覚的左右分化効果に関する研究、第二外国語の習得時における言語スイッチングに関する研究、瞬きと記憶に関する研究、超低磁場 MRI に関する研究など、幅広いテーマについてご講演いただいた。

日本からも同様に、金沢大学、脳情報通信融合研究センターの研究グループから言語認知時の脳機能解明に関する発表があった。中でも小児の言語習得に関する金沢大学の三邉教授らは子ども専用の脳磁計を利用している世界でも数少ない研究グループであり、脳磁計による計測方法や解析手法等についても活発な議論がなされた。

 

5)招聘した成果

脳磁計が期待されている活用のひとつに、言語獲得過程の解明による発達障害の早期発見がある。今回の研究会ではこの観点から、脳磁計の活用を積極的に勧めてきた言語学研究者を招聘して意見を交換することができた。今回の議論を活かし、発達障害の早期診断につながる脳磁計の高度化を進めることができると期待される。

また、今回招聘した Tzeng 教授からは、”Introduction of Cognitive Neuroscience Laboratories in Taiwan”と題して台湾における認知神経科学関係の研究グループのほか、オーストラリアやヨーロッパ各国との国際的な共同研究における取り組みについて紹介していただいた。日本からも金沢工大の脳磁計開発における技術者側からの取り組みも紹介された。ユーザーとディベロッパー間での相互理解や交流も深まり、脳磁計の応用・開発の両面における研究協力につながっていくものと期待している。

 

6)その他

研究会終了後、金沢工業大学先端電子技術応用研究所(石川県金沢市)に場所を移し、研究室の見学ツアーを開催した。研究設備や脳磁計に関する最新の開発アイテムの見学を通じ、相互の技術・意見交換をおこなうことができた。

 

(注:写真/PDFに記載)Ovid Tzeng 教授

(注:写真/PDFに記載)Denis Wu 教授

(注:写真/PDFに記載)金沢工業大学  先端電子技術応用研究所  見学ツアーにて