2017年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(海外派遣)・熊本 康昭

研究責任者

熊本 康昭

所属:京都府立医科大学大学院 医学研究科 細胞分子機能病理学

概要

会議等名称 SPIE Photonics West BIOS
開催地 Moscone Center, San Francisco, CA, US.
時期 平成 29 年 1 月 27 日~2 月 3 日

1)会議又は集会の概要
2017 年1 月28 日?2 月2 日の期間に、生体医用光学の6分野(Photonics Therapeutics and Diagnosis; Neurophotonics, Neurosurgery, and Optogenetics; Clinical Technologies and Systems; Tissue Optics, Laser-Tissue Interaction, and Tissue Engineering; Biomedical Spectroscopy, Microscopy, and Imaging; Nano/Biophotonics)で合計 46 の会議が開催され、2275 件の口頭・ポスター講演(主催者発表)が行われた。会場に併設された企業展示「BIOS EXPO」及び「Photonics West EXPO」では、大小 200 以上の光学機器・素子メーカーによる最新技術の紹介が行われた。

2)会議の研究テーマとその討論内容
Clinical Technologies and Systems の Advanced Biomedical and Clinical Diagnostic and Surgical Guidance Systems XV において、Rapid and Accurate peripheral nerve detection using multipoint Raman imaging の講演を行った。
本発表では、まずラマン散乱光により末梢神経を無標識・低侵襲・正確に検知できることを示した後、開発した多点ラマン散乱同時計測技術を利用する末梢神経迅速検出・可視化法を紹介した。この手法では、計測視野内の 3.5 mm × 3.5 mm 領域の 32 点にレーザー光を同時集光し、各点から発するラマン散乱光を 32 本のファイバーにより別々に収集し分光器に入射する光学系を構築することによって、神
経を含む生体組織の複数箇所のラマンスペクトル迅速取得を実現した(図)。測定時間 5 秒で得られたス ペクトルを解析することにより、ラット摘出神経を 97.5%の正確度で検知・可視化できるようになった。質疑応答では、ラマンスペクトルの多点同時測定光学系の詳細、神経測定における光照射パワー、および臨床応用に向けた今後の取り組みについて、聴講者らと活発に討論を行った。
自身の講演以外では、非染色生体光計測法の組織分析応用、従来の光計測技術の発展(高速化、低収差化、広視野化、3次元化など)、及び最新の非染色生体光計測法に関する講演を聴講し、これらの研究成果の今後の可能性について議論を行った。

図:多点ラマン散乱同時計測技術を利用する神経迅速検出法(発表資料一部の抜粋)(注:図/PDFに記載)


3)出席した成果
生体医用光学分野の世界最高峰の国際会議の1つであるSPIE Photonics West BIOS において講演を行うことによって、密度の高い討論を行うことができた。これにより、ラマン散乱による迅速かつ正確な神経検知・可視化技術の臨床応用における課題および今後の改善策について考えを深めることができた。
自身の講演以外では、ラマン散乱や自家蛍光などを利用する非染色生体組織分析・判別技術の講演を多数聴講し、非染色神経検出法の改善につながる計測技術およびデータ解析技術を学ぶことができた。また、企業展示では、非染色生体光計測に不可欠であるレーザー光源技術について、技術開発動向を把握できた。

写真1:発表の様子 写真2:会場の様子(注:写真/PDFに記載)


4)その他
本開議の参加にかかる渡航費及び滞在費をご助成下さった公益財団法人中谷医工計測技術振興財団には心より感謝申し上げます。