2017年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(海外派遣)・藤本 和也

研究責任者

藤本 和也

所属:京都大学大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻

概要

会議等名称 MEMS 2017
開催地 アメリカ合衆国 ネヴァダ州 ラスベガス
時期 平成 29 年 1 月 22 日~1 月 26 日

1)会議又は集会の概要
The 30th IEEE Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 2017)は微小電気機械(MEMS) に関連する研究分野における最新の研究・技術開発に関する情報交換を目的として米国電気電子学会 (IEEE) が主催する、関連分野において最大規模の国際学会です。今回は 876 件の投稿から 86 件の口頭発表および 262 件のポスター発表が採択され、4 日間に渡って発表・討論が行われました。また、分野を代表する研究者による招待講演も行われ、研究分野の現状、今後の展望についての議論が行われました。

2)会議の研究テーマとその討論内容
本会議のテーマは微小電気機械システム (MEMS) の設計、製作および応用に関する研究分野であり、関連する広範な分野の研究が報告されます。特に近年では、微細加工を利用して生体分子の検出や計測 を行うことや、微小デバイス内で制御された環境を細胞の研究に利用することが注目され、多くの研究 が報告されています。臨床検査に関する研究では、原理の実証にとどまらず実際の検査、運用まで射程 として研究が行われています。また、物理・化学的な原理に基づくセンサーの研究・開発や微細加工技 術、材料特性の評価などの広く医工計測に関連する分野の研究についても多数の報告がなされました。これらの内容に関して、異なるバックグラウンドを持った研究者によって口頭発表・ポスター発表それ ぞれについて討論が行われました。

3)出席した成果
報告者が発表した内容に関して、多くの研究者とディスカッションすることができました。本学会の特徴の一つは、ナノ・マイクロデバイスに関する研究を基調として、ナノスケールでの物理・化学現象を専門とする研究者から細胞・タンパク質などの生体物質に関する研究を専門とする研究者など広い分野の研究者が参加していることであり、それぞれに異なる背景に基づいた議論から、実験手法の改善点や将来的な応用に関して新たな考えを得ることができた点で大きな成果を得ることができました。
また、現在各国で進んでいるマイクロ・ナノデバイスに関する研究について広範な知見を得ることができました。特に医工学に関連する内容に関しては、病原体やバイオマーカーの検出などの臨床的な用途と、細胞機能の詳細な解析や生体器官の再生・形成過程に関する研究などより基礎科学・将来的な応用を目指した方向性との 2 つに大別することができます。前者ではすでに現場で使用されている例が複数報告されており、試料量の低減や所要時間の短縮が可能であることから、今後も多くの用途で開発が進むことが期待できます。また後者に関しても、1 細胞・1 分子レベルでの生物学的な知見を背景として、微小な試料を扱うことが可能なマイクロ・ナノデバイス技術の利用は今後極めて重要な分野となると考えられます。このような研究をより進展させるために、医学・生物学に深い理解と微細加工や微小環境における物理現象に関して異なるバックグラウンドをもつ研究者が緊密に協力することの重要さを実感しました。

4)その他
本会議に出席することで、報告者の研究内容を発展させていくために有益な議論を行えました。また、多くの研究者と面識を得ることができ、研究者として成長するために大きな経験を得ることができました。この場を借りてこの機会を与えていただいた中谷医工計測技術振興財団に謝意を表します。