2017年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(海外派遣)・佐藤 龍

研究責任者

佐藤 龍

所属:慶應義塾大学大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻 修士一年

概要

会議等名称 MEMS2017
開催地 アメリカ、ラスベガス
時期 平成 29 年 1 月 22 日~1 月 27 日

1)会議又は集会の概要
MEMS2017 は微小電気機械システムの技術を基盤に、流体デバイス、化学、医療の分野に関する最も権威ある国際学会の一つであり、アメリカ、アジア、ヨーロッパと全世界から多くの研究者たちが集まる会議である。今回が 30 回目の開催となる本学会はアメリカ、ラスベガスの Rio Las Vegas Hotel and
Casino で開催された。今年度も 900 件近くのアブストラクトが投稿されており、研究者からの関心の深さが伺える。その中でも、流体センサーやバイオメディカルに向けた微小機械技術などに関する研究が半数近くを占めており、医療や医工計測への貢献も期待される。本会議はポスター、オーラルの方式で行われ、どちらのセッションでも研究者同士のやり取りが盛んにおこなわれており、技術交流が促進されている。

2)会議の研究テーマとその討論内容
本会議は大きく分けて 10 の研究テーマに分類される。
・Mechanical、 thermal、 and magnetic sensors and actuators、 and system
・Opto-mechanical microdevices and microsystems
・Fluidic microcomponents and microsystems
・Microdevices for data storage
・Microdevices for biomedical engineering
・Micro chemical analysis systems
・Microdevices and systems for wireless communication
・Microdevices for power supply and energy harvesting
・Nano-electro-mechanical devices and systems
・Scientific microinstruments
私の研究は Manufacturing for BioMEMS に分類され、”FIBER-SHAPED ARTIFICIAL TISSUE WITH MICROVASCULAR NETWORKS FOR BOTTOM-UP TISSUE RECONSTRUCTION”という
研究題目でオーラル発表を行った。再生医療の分野で、三次元的な組織を人工的に構築する際に組織内部に栄養や酸素を運搬するための血管網を構築する技術が必要になっており、そのための単位構造として血管網を内包したひも状肝組織の構築を行った。本研究では、組織の径や細胞の比率を調整することにより、血管網構築のための条件の最適化を行った。また、組織同士を組み合わせて培養することにより、組織間での血管網のつながりを観察した。
発表後の質疑応答において多くの議論を行った。一例として、
・血管網をより長く維持するためにはどうすればよいか。
→間葉系幹細胞と共培養を行う。
・血管網内に流れを作ることはできるのか。
→組織を培養したのちにマイクロ流体デバイスと組み合わせることよって試みる。
・ほかの細胞による組織内に血管網を構築することは可能か。
→組織を構築する際の細胞を変えることにより可能。といった議論を行った。

3)出席した成果
オーラル形式での発表だったため、非常に多くの研究者の前で発表することができ、自分の研究を広く周知させることができた。また、質疑応答でも多くの意見を交換することができ、今後の自分の研究に対して非常に有益な情報を得ることもできた。また、他の研究者が発表しているセッションに参加することで、多岐にわたる分野における最新の研究についての知見を深めることができた。その中でも、リソグラフィ技術を用いて神経組織から直接信号を検知するデバイスや、プリンタ技術とボトムアップ組織工学を組み合わせた組織構築のためのプリンティング技術の研究などが興味深かった。本会議で得た経験や、他の研究者たちとの交流は本会議に参加しなければ得ることができなかったものであり、非常に有意義な成果を得ることができたといえる。

4)その他
懇親会の場やほかの研究者たちと食事を共にすることなどにより、研究についてや、それ以外のことについても交流を図ることができ、非常に有益な経験をすることができた。