2017年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(海外派遣)・吉田 光輝

研究責任者

吉田 光輝

所属:慶應義塾大学大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻 修士2年

概要

会議等名称 MicroTAS2016
開催地 アイルランド、ダブリン
時期 平成 28 年 10 月 9 日~10 月 13 日

1)会議又は集会の概要
MicroTAS2016 はマイクロ・ナノスケールにおける流体デバイス・材料・化学・生物に関連する最も権威ある国際学会の一つであり、全世界から最先端の研究に従事する研究者達が集まる会議である。今回はアイルランドのダブリンにある Convention Center Dublin で開催された。今年度も 1000 件を超えるアブストラクトが投稿されており、その関心の高さが伺える。特に、細胞やマイクロ流体デバイスなどを用いた医療・バイオ技術の発表が多く、医療や医工計測への貢献も期待されている。パラレルセッション形式で行われ、数多くの発表が行われる本会議は多くの研究者とのやりとりの機会が豊富にあり、アジア、欧米諸国をはじめとする世界中から集まる研究者間の技術交流を大いに促進している。

2)会議の研究テーマとその討論内容
本会議は大きく分けて 9 つの研究テーマに分類される。
・Cell Separation and Analysis
・Cells, Organisms, and Organs on Chip
・Commercialization
・Diagnostics, Theranostics, and Translational Medicine
・Fundamentals in Microfluidics and Nanofluidics
・Integrated Microfluidic Platforms
・Micro- and Nanoengineering
・Sensor & Actuators,and Detection Technologies
・Separations, Reactions,and Other Applications for Microfluidics
私の発表は、Micro- and Nanoengineering セクション内の Novel,Smart,and Responsive Materials に分類され、”FUNCTIONALIZED CORE-SHELL HYDROGEL MICROSPRINGS FABRICATED WITH BEVEL-TIP MICROFLUIDIC CAPILLARY”という研究題目でポスター発表を行った。自然界にはコアシェル型スプリング構造によって魅力的な機能を有している微生物が数多く存在し、それらを模倣するためにハイドロゲルで機能性スプリングを構築する手法を提案した。スプリングは竹槍状先端から液体を射出しながらゲル化することで構築する。機能の付与のために、射出する前の微細管内で機能性材料との二重同軸層流を形成することで、機能性材料を内包したスプリングを構築した。
2 時間半の発表の時間内に様々な質問があった。一例として、
・スプリングはどうして構築できるのか
→先端の異方性によるゲル化の時間差に依存する
・伸縮機能を付与することができるのか
→磁性ナノ粒子内包及び磁場印加によって可能である
・使用できる材料に制限はあるのか
→疎水性の材料だと層流が形成できず、難しいといった議論を行った。

3)出席した成果
多くの学会参加者との議論に加えて今回ポスター賞にノミネートされていたためこの分野で権威の ある研究者数名に発表、質疑応答する機会を得ることができた。賞を受賞することはできなかったが、緊張感のある中でポスター発表することができ、今後の発表に活かす上で貴重な経験を得ることができた。また、他の学会参加者の発表を聴き、議論することで、最新の研究に関する情報やマイクロ・ナノスケール分野の知見を深めることができた。毛細管現象を応用することで簡便な医工計測を実現するデバイスの研究や、振動を用いた細胞のマニピュレートの研究などが興味深かった。自身とは異なる領域の研究者も多く、自身とは違う視点からの物事の捉え方や知識を吸収することができ、非常に価値のある機会であった。このような機会は国際会議に出席しなければ得ることができないため、本会議に参加した成果は大きいと考える。

4)その他
学会主催の懇親会にも積極的に参加し、台湾の学生を始め様々な研究者との交流を図り、研究以外の事も話すことができ、有意義な時間を過ごすことができた。