2017年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(海外派遣)・皿上 順英

研究責任者

皿上 順英

所属:大阪大学大学院 工学研究科 環境・エネルギー工学専攻

概要

会議等名称 17th International Congress on Neutron Capture Therapy(ICNCT17)
開 催 地 アメリカ合衆国・ミズーリ州・コロンビアミズーリ大学コロンビア校
時 期 平成 28 年 10 月 2 日~10 月 7 日

1)会議又は集会の概要
第 17 回国際中性子捕捉療法学会学術大会(17th International Congress on Neutron Capture Therapy(ICNCT17))は 2016 年 10 月 2 日から 7 日までの 5 日間、米国・ミズーリ州・コロンビアで、中性子捕捉療法に関連する最新の技術や臨床結果を議論し、中性子捕捉療法の継続的な発展に貢献することを目的に開催された。本会議は偶数年毎に開催され、今年で第 17 回目を迎える中性子捕捉療法の
分野における世界最大の国際会議である。化学、物理、生物、臨床の 4 つのセッションで構成され、臨床医学、放射線生物学、中性子工学などの諸領域を専門とする世界的に著名な医学及び工学の研究者が集い、中性子捕捉療法に関する国際的な研究の進展と進捗状況を共有することを目指している。

2)会議の研究テーマとその討論内容
報告者は「Gadolinium effect estimation of GAGG for BNCT-SPECT」という題目でポスター発表を行った。
近年、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT: Boron Neutron Capture Therapy)の実用化に向けた研究が世界各国で進められている。BNCT の実用化において、どの程度の治療効果があるのかを治療中に知ることは重要であるが、その計測は非常に困難であることが知られている。そのため我々は BNCT において、治療中にリアルタイムで治療効果を 3 次元的に見ることができる BNCT 用 SPECT 装置(BNCT-SPECT)の開発を行っている。
本研究では GAGG と呼ばれるシンチレータを計測素子として用いることを提案した。GAGG シンチレータは近年開発されたシンチレータで、BNCT-SPECT 装置に応用可能なほどの高い性能を有することが分かったからである。昨年度の研究により、基礎的な特性については BNCT-SPECT 装置を実現する要件を満たすことが確認された。
しかし問題点は GAGG に Gd(ガドリニウム)が含まれていることであった。Gd は非常に強力な中性子吸収材であり、その吸収反応により大量のガンマ線が放出されることが知られている。そのため、本報告では Gd の中性子捕獲反応による寄与がどれほど含まれるのかを 3 次元モンテカルロシミュレーション計算によって数値的に評価した。その結果、Gd による影響は少なく、Gd が含まれていても十分にBNCT の治療効果の計測が可能であることを確認した。今後は、GAGG を BNCT-SPECT の要素検出器として実際に装置開発を行っていく。

3)出席した成果
我々の研究が世界で注目されていること、また BNCT の研究は日本が世界をリードしていることを再認識した。今回のセッションでは 1 時間のコアタイムでの討論だったが、コアタイム外でも多くの研究者とディスカッションすることができた。特に本研究と同様の目的で、違ったアプローチで研究されている報告があり、その研究者から装置開発に対する助言を頂いた。
初めての国際会議の出席で、英語で研究者とディスカッションをするという非常に刺激的な経験ができた。さらに自分の英語力を鍛え、スムーズに英語でのディスカッションが出来るように精進したいと感じた。

4)その他
本会議が開催されたコロンビアはミズーリ州の学術の中心地で、いわゆる大学町だった。そのため若者が多く、海外の学生の生活風景を見ることが出来て新鮮だった。また学会日程中の excursion ではオザーク湖を観光し、クルージングをしながら海外の研究者と交流する機会が得られ、非常に有意義な時間を過ごせた。
最後に、このような有意義な発表と国際会議への参加の機会を与えて頂いた中谷医工計測技術振興財団様に深く御礼申し上げます。