2017年[ 技術交流助成 ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(海外派遣)・海保 実則

研究責任者

海保 実則

所属:東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 修士1年

概要

会議等名称 IEEE MEMS 2017
開 催 地 Las Vegas
時 期 平成 29 年 1 月 22 日~1 月 26 日

1)会議又は集会の概要
本会議は半導体微細加工技術をベースに小型のセンサーやアクチュエータなどの素子を構築するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)および、それをバイオ・化学分野に転用した Micro Fluidics の研究者が一同に介する本分野最大の国際会議である。本会議は bio & medical MEMS, Physical Sensor、MEMS Actuator, Micro Fluidics などのセッションに分かれており、MEMS 技術の応用範囲の広さが伺える。

2)会議の研究テーマとその討論内容
私は本会議において「Parylene based Flexible Glucose Sensor Using Glucose-Responsive Hydrogel(血糖値応答性ゲルを用いたパリレンフレキシブル血糖値センサー)」という題で発表を行った。本研究では今まで固いPCB で作っていた血糖値応答性ゲルベース血糖値センサーを 10μm ほどの薄くて柔らかいパリレンを用いて作製し、埋め込まれた動物が動き回っても組織へのダメージが小さくなる ようなデバイスを形成した。こうした埋め込み型の血糖値センサーは、患者の血糖値計測の手間を省く と共に組織へのダメージを減らし、命にかかわるような急な血糖値の変化を測定できる点で重要である ことを主張した。

3)出席した成果
2 時間のポスターセッションの中で、30 人ほどの研究者や企業の方々が私のブースを訪れてくれ、かなりの手ごたえを感じた。同じくパリレンを用いたデバイスを作っている方から、より簡便な作製プロセスについてのアドバイスを頂いたり、メディカルデバイスを作っている方から、プロセスの残留物(レジスト等が残っていると埋め込んだときに毒性がある)の評価の方法などについてのアドバイスを頂くなど、今後のデバイス改善の参考になった。小型のデバイスを材料の製膜から始めて自前で作れ、かつ埋め込み実験までできている研究室はまだまだ少なくin Virto での実証実験に留まっている医療デバイスも多いということが分かった。
また、他の研究者のポスター発表も積極的に聞きに行くことでも様々な知見が得られた。センサーを作っている人が出していたデータから、繰り返し使用可能回数や、耐久性、電気特性の評価など、今後行うべき実験の目処が立ったり、自分の実験系に使える素材が他にあることを確認したりなど、有意義な情報を得ることができた。

4)その他
国際会議に参加し、世界中の MEMS の研究者と交流を持ち、この業界の最先端のトピックに触れるとともに自分の研究の立ち位置がよくわかりました。自分のポスター発表を見に来てくれた人には「面白い研究内容だった。続きを楽しみにしている」という旨の言葉をかけて貰え、今後の研究に対する意欲が高まりました。海外渡航並びに宿泊費を助成してくださった中谷医工計測技術振興財団様に、この場を借りて感謝の意を表明させていただきます。ありがとうございました。

現地のポスター発表会場のようす。250 ほどのポスターが立ち並ぶ(注:写真/PDFに記載)

口頭発表会場。ここでは各研究者の口頭発表を始め、招待講演や優秀者の発表なども行われた(注:写真/PDFに記載)