2017年[ 技術交流助成 (海外派遣) ] 成果報告 : 年報30号補刷

平成28年度 技術交流助成成果報告(日本招聘)・山本 義春

研究責任者

山本 義春

所属:東京大学大学院 教育学研究科 身体教育学コース 教授

概要

会議等名称 8th International Workshop on Biosignal Interpretation (BSI2016)
開催地 大阪国際交流センター
時期 平成 28 年 11 月 1 日~11 月 3 日

1)はじめに(招聘の概要)
国際ワークショップ BSI2016 の招待講演者として、Patrice Abry 教授、Fabio Babiloni 教授ならびに Thomas Penzel 教授の 3 名を招聘し、招待講演をお願いした。

2)被招聘者の紹介
Patrice Abry 教授は物理学、信号解析、および医工学が専門であり、現在の主な研究テーマはウェーブレット変換を応用した生体信号時系列の解析である。生体信号時系列の新たな解析法を開発するともに、その医学的応用についても研究している。
Fabio Babiloni 教授は脳科学および計算工学が専門であり、現在の主な研究分野は脳計測データ解析である。皮質脳波データの結合性の分析およびブレイン・コンピュータ・インターフェイスの開発を行っている。
Thomas Penzel 教授は物理学者および生理学者であり、現在の主な研究分野は睡眠科学および睡眠医学である。Penzel 教授は睡眠障害の診断と睡眠時呼吸障害の病態生理について、国際的な研究プロジェクトを多数推進している。当該分野における重要な成果として、睡眠時呼吸障害と循環器疾患の因果関係の解明、睡眠時呼吸障害の新しい治療法の開発、経頭蓋電気刺激が睡眠および覚醒に与える影響の解明などがある。

3)会議または集会の概要
本ワークショップは国際医療情報学連盟(IMIA)、国際医用生体工学連合(IFMBE)が共催する国際ワークショップで原則 3 年に 1 度開催され、今回で第 8 回目を数える。本ワークショップは、生体機能の解明や医療診断精度の向上に資する生物医療データのモデリング、解析、評価に関する研究発表の場を提供し、当該分野での国際的な人的交流を促すことを目的とする。

今回のワークショップは、大阪国際交流センターを会場として、平成 28 年 11 月 1 日~3 日の 3 日間開催された。参加者総数は 118 人であり、そのうち海外 12 ヵ国からの 34 人の参加があった。論文発表は、合計 81 件(口頭発表 47 件、ポスター発表 34 件)であった。

4)会議の研究テーマとその討論内容
本ワークショップでは、以下のセッションを開催した。
11 月 1 日(火)
8:30-10:30 最新の信号解析手法の生体医工学応用
11:00 - 13:00 心電図および心拍変動
14:30 - 16:30 結合性と因果性
17:00 - 18:30 ポスター・セッション
11 月 2 日(水)
8:30 - 10:30 睡眠ダイナミクスの解析
11:00 - 13:00 人間行動の信号処理
14:30 - 16:30 医療判断
16:30 - 18:00 ポスター・セッション
11 月 3 日(木)
9:30 - 12:00 シンポジウム“From dynamical disease to disease dynamics: Predictive medicine in the era of data science”
13:30 - 15:30 ブレイン・コンピュータ・インターフェースのための信号処理
16:00 - 18:00 脳信号解析
11 月 1 日の「最新の信号解析手法の生体医工学応用」のセッションにおいて、Patrice Abry 教授に「分娩時の胎児心拍変動解析」と題するご講演をいただいた。この講演では、胎児心拍数モニタリングの最新の解析技術についてお話いただいた。
11 月 2 日の「睡眠ダイナミクスの解析」のセッションにおいて、Thomas Penzel 教授に「睡眠研究における信号記録と非線形信号処理」と題するご講演をいただいた。この講演では、睡眠研究における計測技術および信号処理技術についてお話いただいた。
11 月 3 日の「脳コンピュータインターフェースのための信号処理」のセッションにおいて、Fabio Babiloni 教授に「認知脳科学の工学応用のためのブレイン・コンピュータ・インターフェイス」と題するご講演をいただいた。この講演では、ブレイン-コンピュータ(ブレイン-マシン)・インターフェイスの応用の可能性についてお話いただいた。

5)招聘した成果
世界的に著名な 3 名の研究者にご講演いただき、国内外の研究者とともに活発な議論が行われた。さらに、これらの講演に関連した一般演題の発表を通じて、我が国の技術や研究成果を被招聘者ならびに海外の研究者に知っていただくことができた。今回のワークショップは、国内の研究者、特に、学生を含む若手研究者に素晴らしい刺激を与えた。

6)その他
Thomas Penzel 教授は 10 月 31 日に名古屋市立大学で開催された講演会 Leading-Edge Biosignal Processing for Sleep Science に参加し、特別講義を行った。
BSI2016 の記念写真(11 月1 日大阪国際交流センターにて撮影)。最前列の左から5 番目がPatrice Abry 教授、7 番目が Thomas Penzel 教授、8 番目が Fabio Babiloni 教授。