2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

天文学習における教材開発と天体観測を通じての地域貢献

実施担当者

穂積 正人

所属:兵庫県立舞子高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 本校の屋上には天文ドームがあり、20cm反射望遠鏡が設置されています。屋上からは、遠くに明石海峡大橋を見ることができます。周囲は、新興住宅地として年々開発が進み、町並みが明るく観測に向く環境とはいえませんが、天気の良い日には、3等星程度までは確認できます。また、その階下には、プラネタリウムが上映できるように、天井が丸くくりぬかれた部屋があり、ドームと共に、授業・部活動・観望会等で使用しています。


2.背景
 「ハヤブサ2号機の打ち上げ成功」「日本人宇宙飛行士の国際宇宙ステーションでの活躍」など宇宙や天文に関するニュースも多く、たくさんの方々が興味関心を持たれているように感じます。小学校では、4年生から天文分野を学習することになり、早くから興味関心を持つ子ども達がいます。しかし、最近、天頂付近にひときわ明るく輝いている木星の4大衛星や金星の満ち欠けについて知っている方々は少ないと思います。
 天文と我々の生活は切っても切れない関係にあり、環境防災の面からも、地元の方々や小中学生にも興味関心を持っていただく機会として、観望会・太陽観察会・プラネタリウムの上映を行っています。


3.本校の取り組み
①兵庫県立大学西はりま天文台(兵庫県佐用町)との協力で「小惑星を見つけよう」をテーマに、主な小惑星の写真撮影を行い、軌道計算や周期等を求めました。これらは、日本天文学会ジュニアセッションなどで発表を行いました。昨年度から、「系外惑星の観測」に挑戦中です。系外惑星が1995年に発見されて以来、次々と発見されています。昨年4月にはNASAにより地球によく似た惑星が公転しているという発表がありました。このニュースに刺激を受け、我々も見つけ生物生息可能性を探ろうと観測を行うことになりました。
②天気の良い昼間には、太陽の観測を行っています。可視光線では、主に黒点の観測を行い、Hα望遠鏡を通して、プロミネンスの活動を観測し、写真撮影を行っています。
③「はりま宇宙講座(全国の天文施設が、星空案内の専門家を育てるプログラム)」を受講して、高校生ではめずらしい「星空案内人」の資格を取得させています。
④プラネタリウムエアードームの製作を行いました。遮光シートを貼り合わせてドーム状にして、サーキュレーターで送風しながらふくらませ、内側でプラネタリウムの上映を行います。衣装ケース程度に折りたため、移動が可能で、現地で簡単に組み立てができます。すでに何度か一般観望会で活躍し、人気を得ています。「星なかまの集い」で製作発表を行い、「森本奨励賞」を受賞しました。


4.平成26年度の主な活動
【4-5月】新入生に対しプラネタリウム上映指導、太陽黒点撮影指導,前年度の「準案内人」取得者を対象に「案内人」への実技試験の練習及び実技試験の受験,プラネタリウムドーム製作
【6月】文化祭(プラネタリウム上映・太陽観察)
【7月】「高校生天文活動発表会」で活動発表
【8月】「プラネタリウム解説体験」に参加オープンキャンパスで、日頃の成果を発表、太陽観測やプラネタリウムの上映,大阪教育大学「ブラックホール天体へ挑戦しよう」に参加,兵庫県立大学「日本一の望遠鏡を使って天体観測」(2泊3日)に参加
【9月】はりま宇宙講座受講開始(2月まで毎月2~3講座受講)
【10月】西はりま天文台にて2泊3日の合宿「系外惑星の観測」「写真撮影」
【11月】「益川塾科学シンポジュウム」で研究発表,西はりま天文台にて2泊3日の合宿
【12月】西はりま天文台にて2泊3日の合宿
【1月】西はりま天文台にて1泊2日の合宿
【2月】はりま宇宙講座「認定式」,「兵庫サイエンスフェア」で研究発表,「星なかまの集い」で研究発表、「森本奨励賞」受賞
【3月】「日本天文学会ジュニアセッション」で研究発表,「高校生天体観測ネットワーク全国集会(Astro-HS)」に参加


5.Mitakaの上映
 Mitakaは、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクトで、地球から宇宙へ宇宙空間を自由に移動して、時には、惑星や恒星に立ち寄りながら、宇宙の様々な構造や天体の位置を見ることができます。具体的には、偏光メガネをかけ、3Dのカラー映像を見ることにより、目の前に迫ってくるような迫力のある映像をご覧いただけます。解説や操作は、「星空案内人」の資格を持った生徒を中心に行います。校内だけでなく、小学校やコミュニティセンターなどで上映を予定しています。


6.まとめ
 プラネタリウムやMitakaの上映で部員が操作や解説することで、部員の知識技術の向上や社会性の研鑽に努めていくとともに、地域貢献事業の一つとして取り組んでいきます。同時に、観望会(昼間は、太陽観察会)を開催するとことにより天文教育の普及にもつながると考えています。