2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

大阪からはじめる宇宙開発 ~ 「まいど 2 号」をめざして ~

実施担当者

飯田 広史

所属:東大阪市立縄手中学校 教諭

概要

1 はじめに
 東大阪市は全国一の工業密度を誇る“モノづくりのまち”である。2009年には、市内の中小企業を中心とする東大阪宇宙開発協同組合が、小型衛星「まいど1号」の打ち上げに成功し、「宇宙開発」に新たな一歩を築いた。
 この地域の特色を活かし、本校ではH22年度以降「宇宙」と「科学技術」をテーマに「星空観望会」や「ロボット教室」を行ってきた。これらの取り組みの中で、「具体的な課題に対してチームで協力して問題解決を図り、発信する」という経験をした生徒の成長を目の当たりにした。H26年度は大阪府下の中学校で同様の取り組みを行った。これにより、大阪の地域産業を支える人材の育成を図った。


2 取り組み内容
2.1 遊びから課題解決へ
 年度初めに「宇宙開発」をテーマに活動する生徒を募集したところ、1年生3人、2年生7人、3年生3人の計13人が集まった。それぞれをチーム分けして、4~6月にかけてはロボット教材を使って、自由に遊ばせていた。
 7月からは、国際ロボットオリンピアード(以下WRO)に出場することと競技ルールを伝え、具体的な課題に対してチームで解決策を探るという活動にシフトした。
 また、7月23日にはおなじくWROに出場する中学校へ行き、合同練習会を行った。これにより同年代のライバルに刺激され、よりモチベーションが上がった。
 そして8月23日にWRO大阪大会に出場し、大阪3位、5位、8位と好成績を残した。
 ここまでにより、遊びの延長であったロボット教材が、チームで具体的な課題に取り組むためのツールとなった。
この結果、別の課題が与えられたときにスムーズに問題解決活動を進めていけるようになった。
2.2 「月」という研究テーマ
 WRO後、「月面探査機をつくるにはどうすればいいだろう?」というテーマを与え、それを考えるためには何よりも「月」について知ることが何よりも大事であることに気付かせた。
 そして月を調べるために、大阪教育大学天文台を訪問し、「宇宙を研究とは?」というテーマで講義をしてもらい、その後、天文台の望遠鏡で星空観察を行った。(しかし、悪天候により実際に望遠鏡での観察は行えなかった)
2.3 月面開発ロボットコンテスト
 これらを踏まえて、以下のような目的で「月面開発ロボットコンテスト」を行った。

・大阪の地盤産業を支える次世代の人材育成
・同じ目的をもって他者と競い合うことで、主体的に学ぶ力と方法を習得する
・簡略化された課題から様々なことを想定・表現し、導いた仮説を発表する力を養う
・仮説を専門家の立場から評価してもらい、問題解決のための方法の深化を図る

 この活動に、大阪市立天王寺中学校・追手門学院大手前中学校が参加してくれた。
 活動の流れは以下のとおりである。
 ロボットコンテストのフィールドとルールはあらかじめ作成しておき、ガイダンスや合同調整会の時に、すべてのチームが「フィールド調査」や「テストラン」を行い、あとは各校で月面探査機を開発した。
 また、ただ単にロボットを動かすだけではなく、「なぜ自分はこんなロボットを作ったのか?」という観点でそれぞれがプレゼンテーションを行った。
 特にプレゼンテーション後には、大学や高専などから「宇宙開発」「天文学」「ロボット工学」などの専門家を招いて、それぞれの目線で発表を評価してもらい、コメントもいただいた。
 その後、「まいど1号」の開発者の方に講演もしてもらった。


3 まとめ
 以下、生徒たちの感想を要約する。
・今回は2人チームで活動したためそれぞれの責任が大きく、気づけばコンテスト前日だった。
「やっぱチームワークは大事」って思った。
・パワーポイントの作成や発表、質問された時の答え方難しかったです。
・身近なところで東大阪市の中小企業がすごいものを作っていることに驚きました。

 今回の取り組みを通して、課題に対してチームで挑み、競い合うという体験ができた。また、大阪の地盤産業にも目を向けることができた。
 今後も継続的にこのような取り組みをしていきたいと考えている。