2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

大学と連携した自然科学探究活動

実施担当者

大澤 哲

所属:兵庫県立兵庫高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 本講座は本校未来創造コース1年生41名を対象に27年9月から始まり、火曜日に実施している本校学校設定科目「創造基礎」の一環として実施した。講師として神戸大学大学院 人間発達環境学研究科の伊藤真之教授と8名の大学院生から指導・助言をいただきながら、院生が実際に大学されている研究に沿って探究活動テーマを設定し、5~6人のグループに1名の院生が指導者としてゼミ形式で探究活動を行った。本講座も今回6年目を迎え、今年度は院生の指導意欲と生徒のモチベーションが例年以上に高く、約半年かけて非常に有意義な探究活動を行うことができた。


2.実施内容
 伊藤教授ならびに大学院生に直接指導していただいたのは以下の4回で、それ以外の時間は各研究グループによる自主学習によって研究を深めた。
<1回目:9月29日>
院生による研究内容のプレゼンテーションおよび研究内容の質疑応答
・院生の研究内容から5~6人グループでどの研究に沿って探究活動を行うかを各グループで議論
・後日、探究活動テーマと指導していただく院生が決定

<2回目:10月13日>
グループ別での院生によるゼミを開講
・院生の研究内容について詳しい講義を受け、グループで行う探究活動に向けてのゼミを実施
・探究活動の進め方や仮設の設定

<3回目:11月17日>
神戸大学にて探究活動テーマに沿った実験実習を実施
・大学の研究室にて院生指導での実験実習
・実験実習データを基にデータの解析方法や考察などのアドバイスをいただく

<4回目:2月16日>校内にて発表会を実施
・探究活動の成果をパワーポイントで発表
・伊藤教授と院生からアドバイスをいただく

 上記以外の授業では、毎回の授業において院生からグループ学習へのアドバイスならびに生徒からの学習活動の報告をメールにて行い、院生の指導中心で探究活動を進めた。
 なお、上記校内発表会実施前の1月30日に本校の兄弟校でもある神戸高校総合理学科1年生との合同交流発表会を実施した。この発表会は今回3回目となるが、自然科学の探究活動を行う両校が互いに交流を深め、刺激を受けながら、今後の学習によりモチベーションを高めるうえでも貴重な発表会となった。


3.探究活動テーマ
 今年度の探究活動テーマおよび探究内容は以下のとおりである。
1班:蛍光X線による原子の分析
蛍光X線を用いて身近な物質の組成を調べ含まれる金属について考察した
2班:花に来る虫からわかる昆虫生態
花に来るハチとハナアブの体のつくりや行動を比較しその生態を考察した
3班:薄型フォースセンサを用いた把持力測定
薄型フォースセンサを用いて回路を作成しコップを持った時の把持力を考察した
4班:環境DNAを用いたアユの産卵期の研究環境DNA分析法を用いて川にすむ鮎の
DNA量を測定し、鮎の産卵期を推定した
5班:ひずみゲージによる把持力の測定
ひずみゲージを用いて回路を作成しコップを持った時の把持力を考察した
6班:宙から降りそそぐ宇宙線
宇宙線の通過位置を測定し天頂角分布をグラフ化して宇宙線のエネルギーを求めた
7班:高分子素材「アルギン酸ナトリウム」の利用アルギン酸ナトリウムを用いてぽよぽよ水の膜形成を検証し地球環境水を考察した
8班:クレーターカウンティング法による月の年代測定月の観測を行ってデータを取得し、データの分析から月の年代を推測した


4.まとめ
 大学院で行われている最先端の研究に沿って、若い優秀な研究者の指導の下8つのグループで探究活動を行ったが、どのグループも院生の献身的なサポートと動機づけのお陰で、非常に楽しくかつ本講座の大きな目的である生徒主導で有意義な講座を実施することができた。また、教授や院生と良好な関係を築きながら未来創造コースが大切にしている人と人との繋がりを深めることができ、将来自然科学の専門的な研究機関で研究するイメージを持つこともでき、本講座の目的を達成した。