2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

地域から自然環境と人間の共存を考え、持続可能な未来を拓く「環境コース」の運営

実施担当者

有馬 和宏

所属:山口県立周防大島高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 平成27年度本校に設置する「環境コース」では、地元周防大島の豊かな自然環境を題材とし、科学的知識や自然を学ぶ手法や態度を身につけることを目標としている。
 そこで、平成27年度環境コース選択者を対象に、「子ども科学教室」の開催、「安下庄海の市」への参加、「第4回平成26年度瀬戸内海の環境を考える高校生フォーラム」での発表、
「郷土おおしま発表大会」での発表を実施した。


2.実施内容
(1)「子ども科学教室」の活動内容
 地元小学校で開催した「子ども科学教室」では高校生が教師役となり小学生に地域の自然に親しませつつ、科学的知識を学ばせた。
①指標生物の学習(図1)
 指標生物を基に地元の海や生物を写真や図を用いて説明した。
②磯の生物に触れる体験(図2)
 事前に採取した地元の磯に生息する貝や海藻を実際に小学生に触れさせながら、生物の名称や特徴を説明した。
③樹脂封入標本作り(図3)
 時間が経つと固まる透明な樹脂と磯で採取した貝殻や海藻を使って標本を作成した。
(2)地元行事「安下庄海の市」における展示
 地元行事で、多くの人が訪れる「海の市」で、「子ども科学教室」を実施した。ここでは、周防大島の海にすむ生物などの自然環境を、観光客や地元の方々など多くの人に紹介できた。特に、樹脂封入標本について関心が高く、様々な質問を受けた。(図4)
(3)活動の発表
 兵庫県立尼崎高等学校主催の「第4回平成26年度瀬戸内海の環境を考える高校生フォーラム」、地元の中高合同開催の「郷土おおしま発表大会」において、「子ども科学教室」の活動を発表した。
 「高校生フォーラム」では、理科教育先進校の先生方から激励や助言を多数いただき、生徒は活動への意欲をさらに高めた。「郷土おおしま発表大会」に参加した中学生に向けて、環境学習の魅力を発信できた。(図5)


3.まとめ
 「子ども科学教室」を小学校と安下庄海の市で行うことで、生徒の科学への関心が高まったり学習したことを発信する技術・意欲が高まったりした。次に、生徒の感想を挙げる。
○「子ども科学教室」で行った指標生物の講義を通して、小学生に地元の海の美しさをはじめとする自然環境に関する知識を視覚的に学ばせることができた。
○磯の生物に触れる体験では、最初、小学生は緊張気味であったが、声掛けをしていると、進んで生物に触れ歓声を上げたり、生物の名称を自ら尋ねてくれたりするなど、積極性が出てきた。
○標本作りは、身近な生物を手元に残る形にすることができ、科学的手法に親しむことができた。
○「地域に密着した環境教育活動の実践」(子ども科学教室)を高校生フォーラムで発表し、他校の生徒と交流することで、非常に刺激的な体験ができ、次に行う活動のアイデアが浮かんだ。
○「郷土おおしま発表大会」では、島内の4中学校の中学生に地元の海の美しさや磯の生物の魅力を伝えられた。
 今回の取組において、上記のような活動を通して小学生をはじめとして地元の環境への関心を喚起することが可能であるということがわかり、環境教育の所期の目的は果たせたと考える。特に、小学校での活動には手ごたえを感じており、今後、小中高を見通した環境教育活動につなげていくことが課題である。小学校で高まった関心を基に、中学校では環境を守るための知識を学び、高等学校では環境を守る手法を実践的に身につける必要があり、今後、中学校での「子ども科学教室」の実施や高等学校でのさらなる活動充実を検討したい。