2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

中学生ロボット競技会「藤岡ロボチャレンジ 2014」の取組み

実施担当者

河井 崇平

所属:群馬県立藤岡工業高等学校 機械科主任

概要

1.はじめに
 この度は、貴財団より科学教育振興助成金をいただき本当にありがとうございました。本助成金のお陰で「藤岡ロボチャレンジ 2014」を盛大に開催することができました。簡単ではありますが、藤岡ロボチャレンジの紹介をしたいと思います。
 「もっと工業高校を中学生や中学校の先生に知ってもらいたい」というのは私たち工業高校の教員が常日頃感じている事である。「それにはものづくりの楽しさを知ってもらおう」との思いから、平成19年文化祭の企画の一つとして近隣の中学生に参加を呼び掛け、中学生ロボット競技会を行った。競技内容はすり鉢状のコートの中心部にある卓球ボールをとり出し、所定の場所にいくつ運べるかを競う競技である。「あり地獄から脱出せよ」とのテーマを掲げ、参加を募ったところ、参加ロボットは少なかったが、皆アイディアをこらしたロボットを持ち寄って充実したロボット競技会を行うことが出来た。文化祭は3年に1度なので翌年は藤工フェアの中で開催し、平成22年まで毎年開催した。
 同年、本校のある教員から、「本校と同じように中学生ロボット競技会を盛大に行っている工業高校がある」「参考にさせてもらい、本校のロボット競技会を大幅にリニューアルしてはどうか」と提案があり、同年12月、その競技会を見学に行った。神奈川県立向の岡工業高等学校である。
 見学は私と電子機械科の教諭2人で行った。川崎市内の中学校から約76台、200名以上の中学生が参加して、盛大に行われていた。主催担当の先生の話によると、このときは3回目の開催だったが、回を重ねるごとに入学希望者が年々増加していったそうだ。
 この向の岡工業高校のロボット競技会を大いに参考にし、私たち藤岡工業高校では平成23年11月22日、競技会の名称も「藤岡ロボチャレンジ 2011」と改め、競技内容も一新し、リニューアルした中学生ロボット競技会を開催することができた。


2,準備委員会発足から当日まで
 次に、向の岡工業高校見学から今日に至るまでの経過を述べてみたい。
 向の岡工業高校見学のあと、校内に準備委員会を立ち上げた。メンバーは学科主任の3名と数名の工業科教員で構成され、準備に取り組んだ。
 競技会の名称の検討、開催日程の検討、競技内容の検討、コートの作成、中学校へ案内と募集、競技会の運営体制(教員・本校生徒)、競技会の進行、藤岡市へ後援依頼、来賓招待等の準備に当たった。
 競技内容は向の岡工業高校とほぼ同じ内容で行わせてもらうこととした。概要は次の通りである。
(競技内容 写真2)
 ①第1ステージ(写真手前)にあるアルミ缶とペットボトルを指定エリアに分別・搬送する。
 ②次に橋を渡り、第2ステージ(写真奥)にあるテニスボールとフィルムケースを指定エリアに分別・搬送する。
 ③第2ステージにあるゴルフボールとフィルムケースを第1ステージの指定場所に積み上げるとボーナス点。
 ロボットのパーツは中学校側の負担を少なくし、より多くのロボットに参加していただくため、参加中学校に無償で提供した。
 そして最も懸念されたのが参加台数である。より多くの中学校からより多くのロボットに参加してもらわないと開催する意味がない。そこで、地元中学校の技術科の先生に相談したところ、非常に協力的で、市内の中学校に声を掛けていただける事になった。その先生の尽力により近隣中学校8校から19台のロボットが参加することとなった。
 また、藤岡市教育委員会と藤岡市からも後援を頂くことができ、更に群馬県教育センターの技術科指導主事の先生を来賓として招く事ができた。
 当日は、工業科職員24名とスタッフ生徒35名で運営に当たり、以前のロボット競技会に比べ、規模も大きく盛大に行うことが出来た。どの中学校もアイディアを凝らし真剣に取り組んでいる姿が印象的だった。


3、今年度で4回目の開催
 2年目、更にいいロボット競技会にするために、先ほどの中学校の技術科の先生に意見を伺った。先生からは「中学校の先生にはロボットを作ったことのない先生もいるので、ロボット製作講習会をやったらどうか」との提案を頂き、検討の結果、8月にロボット製作講習会を開催した。この講習会に参加すれば、1日でほぼロボットが完成するので、あとは持ち帰ってから改良を加え、より強いロボットにすれば競技会に参加できることになる。
 ロボットの部品は全てこちらから提供し、ロボットの製作もこちらが指導するので、中学校の経費の負担は軽減し、ロボットの経験がない先生でも講習会にさえ生徒を連れてきていただければロボットが完成するので、中学校側にとっては非常に参加しやすいロボット競技会になった。その効果があってか、多くのロボット競技会が近年参加台数が減少傾向にあるのに対し、4回目である今年度の藤岡ロボチャレンジは参加台数が大幅に増加したのはうれしい限りである。


4,成果と課題
 まず成果としては、当初の目的である「中学生に、ものづくりの楽しさを知ってもらう」は充分に達成できたと思う。
 ロボット製作講習会の参加状況は次の表の通りある。毎年参加する中学生は増加している。特に今年度は9中学校から131名の中学生が参加した。参加した中学生は皆真剣に、そして楽しくロボットの製作をすることができた。そして完成したロボットが動いたときは本当にうれしそうで、達成感に溢れていた。

【ロボット製作講習会参加状況】
  中学校 中学生
H24 5校 43人
H25 6校 87人
H26 9校 131人

 競技会当日の参加台数は下の表の通りである。今年度は参加台数・参加中学生ともに大幅に増加した。これは藤岡ロボチャレンジが参加しやすい競技会であると同時に、中学生にとって非常に有益で、得るものが大きいことによるものと思われる。

【藤岡ロボチャレンジ当日参加状況】
  台数 中学校 中学生
H23 23台 9校 52人
H24 19台 7校 64人
H25 21台 6校 73人
H26 34台 8校 124人

 中学校の取組を見てみると、参加しているのはほとんどが科学部で、本競技会に参加することが、中心的活動になっているようである。朝練習をしている学校もあり、保護者会を作った中学校もあり、中学校がいかに本気で取り組んでいるかが感じ取れる。
 参加した中学校の先生の話によると、本競技会への取組みを通し、ある生徒は高専に進学し、またある生徒は将来ロボットを作る仕事がしたくて、高校では制御関係の科目を選択し頑張っているとのことである。このロボット競技会がキャリア教育としての役目を充分果たしていることが実感できる。
 今後の課題は、何よりも資金である。ロボットのパーツは本校が無償で支給しているので今後続けていく上で安定した資金源が必要になってくる。本年度、貴財団から助成をいただくことができ本当に感謝している。