2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

中学校科学部活性化事業における千葉市科学館ボランティアの参画

実施担当者

西村 安正

所属:千葉市教育委員会 生涯学習振興課 科学都市戦略担当

概要

1 はじめに

本年度も本市は「科学都市ちば」を目指し、子どもから大人まで、すべての市民が日常生活の中で科学・技術を身近に感じることができるよう科学都市戦略の推進に取り組んでいる。
本事業は、千葉市科学館ボランティアが参画することにより、中学校科学部活性化を図ることを目指して取り組んだ。

2 科学館ボランティア参画と科学部活性化

2-1 科学館ボランティア参画の意義

平成25年度より実施してきている中学校の科学部活性化事業は今年度で4年目が終了する。
「科学部員数」「科学部数」の調査は3年前より実施し、その結果は以下のとおりとなっている。

(注:グラフ/PDFに記載)

人数の変遷は、「科学部員数」「科学部数」ともに、平成27年度減少したが、平成28年度には上昇している。平成27年度は「科学館ボランティア参両推進」の初年度である。その翌年に「部員数」「部数」が増加していることは、「科学館ボランティア参画推進」が「中学校科学部活性化」に繋がるという可能性をさらに高めていると考える。
そこで、本年度も「科学館ボランティア参画」をさらに進め「中学校科学部の活性化」を図っていきたい。

2-2 ボランティア参画の方向性(2年次)

本年度、初年度実施した事業に加え、市内中学校科学部対象にプログラミング講座を開設した。プログラミングは、今後の教育界に加速度的に普及することが考えられる。千葉市の各学校に設置されているパソコン(以下pC)にはプログラミングソフト「スクラッチ」がインストールされている。しかし、そのソフトを活用し、児童?生徒へ指導をしている教員は今のところ、非常に少数である。一方、千葉市科学館(以下、科学館)には科学閤係の企業や研究機関などを退職され、PCの「プログラミング」に関する分野に明るいボランティアの方々が多く登録されている。
そこで、本年度は昨年度の実施事業に加え、科学部のある中学校へ希望を募り「科学館ボランティア」による「プログラミング講座」を開設した。

本事業を通し、「科学部部員」のプログラミングの技能向上はもちろん、科学部活性化に繋がる「教員の指導力向上」も期待した。

3 本年度より開始した事業

3-1 出張プログラミング講座

ア プログラミング講座計画
科学館ボランティアによる、「プログラミング講座」は名称を「出張プログラミング講座」とし、次の計画で進めることとした。
①案内文書配布(科学部16校PC部19校)
案内文甚を配布し応募を募った。しかし、本事業は初年度ということと、科学館ボランティアの負担を考慮し右の条件可能な学校とした。

(注:表/PDFに記載)

②応募学校日程調整
応募してきた学校と科学館との日程調整を行い。実施日を決定する。


③実施・評価
プログラミング講座を実施し、科学館ボランティア・教育委員会・科学館職員で振り返りを行い、指導の改善を図る。
イプログラミング講座の実際本年度は3校、各2日、計6Sの「プログラミング講座」の計画が立てられた。※表l参照

(注:表/PDFに記載)

講座1回目
講座1日目はボランティアが「プログラミング」についての概要を説明し、実際にプログラミングを体験できるソフト「ス
クラッチ」を体験する講座であった。最初の説明が終わると、多数のボランティアが、キャラクターを歩かせるプログラムを、
科学部員、個々に指導をした。そのため、科学部員達はすぐにソフトの使い方を身につけることができた。講座の最後には、ボランティアがプログラムした「ゲーム」「音楽」等を提示し、次回の意欲を高めた。

講座2回目
講座2日日は、「音楽」「アニメーション」等々をプログラムすることと、「m-Bot」というプログラミングにより動くロボットを提示した講座であった。2回日の講座となると、生徒達はどんどんプログラムを進めていき、講座最後には出来上がったゲーム等を発表したり、ロボットに奥味を示したりした。

講座1回目の感想
・初めてプロクフミングをしてどうなるか、少し心配でしたけれど、作ってみたら想像以上に楽しくて面白かったです。
・今回初めてプログラムを作ってみて、もっと難しいものだと思っていたので、こんなに「ささつ」とできてしまい、とても驚きました。

講座2回目の感想
・本日は前回に引き続き、スクラッチ講座をおこなっていただき、ありがとうございました。今回の譜座でいろいろなものを得られました。音楽を使ったスクラッチは難しかったですが、面白かったです。本当にありがとうございました。
・2回のスクラッチ講座を通して、またプログラムヘの興味がわいてきました。普段はPCが苦手で家で使うことはなかったのですが、今回の謂座で学んだことを活かして家でも実際に使ってみたいと思いました。

4 2年目を迎えた事業

4-1科学館ボランティア研修会(5/21)

2年目を迎えた本年度も科学館ボランティア研修会を実施した。参加したボランティアは13名だった。研修は児童対象の理科教室での指導経験豊かな元短大講師の先生より、科学・エ作教室で活動する時の留意点特に安全面への具体的な配慮、事故・けがなどのときの対応さまざまな児童生徒に対する対応と指導のコツ等についての講話を実施した。受講したボランティアからは「大変内容の豊かでわかりやすい講義だった。今後も参考にさせて頂きます。」や「公民館で小学生を対象とした講座を企画するので、大変参考になった。」など、研修の成果が感じられる感想が多く寄せられこれから自分たちが実施していくセミナーについて見通しや自信がもてているようだった。

4-2 科学部員研究セミナー(6/11)
「研究テーマを見つけよう」

ア セミナーの様子
第1回目のセミナーは、科学館を会場に、市内3校から科学部員(24名)が参加した。テーマは、「個人研究のテーマ探し」として、科学館副館長から研究テーマ作成の留意点についての講話をいただいた。また、助成金で購入した「学校貸出用の理科備品」を展示し、使用法などの紹介も併せて行った。学校予算では買えない理科備品を購入し、科学部に貸し出すことで、日々の部活動の充実を図るとともに、各自で取り組む個人研究にも役立ててもらおうと考えた。セミナー終了後、部員は課題探しをするために、科学館内の展示施設を見学したり、同日に開催されていた「青少年のための科学の祭典」の体験ブースを巡ったりした。

イ 参加した生徒の感想・体験を通して、科学を学べました。・様々な備品を見て、今後の研究の構想が思い浮かびました。

4-3 第2回科学部員研究セミナー(7/11)
「センサー電圧計を製作し使ってみよう」

ア セミナーの様子
第2回のセミナーは、市内の中学校理科室を会場に「センサー電圧計を製作し使う」活動を行った。市内5校から科学部員(49名)が集まり、センサーの仕組を学んだ後、科学館ボランティア(10名)のサポートを受けながら熱心に電子工作の製作、実験に取り組んだ。

イ 参加した生徒の感想
・最初はセンサーと言われても「自動ドアで使われているものかな?」と思いました。しかし、実際はいろいろなことができる(明るさ、温度など)ということを知り、サーモグラフィーなど多くの物にセンサーが役立っていることがよくわかりました。
・温度や明るさを電流で測れるのはすごいです。「はんだづけ」が結構できるようになりました。

4-4 第3回サイエンスクラブ・アセンブリー(10/15)「科学部交流会」

ア セミナーの様子

サイエンスクラブ・アセンブリー(以下アセンブリー)は市内の科学部員が集合し、各部の活動報告や研究発表を発表しあったり、簡単な実験・エ作を一緒に楽しんだりする、年に一度の「科学の祭典」である。今年度も市内6校から82名の科学部員と7名の科学部顧問が集まり、充実した内容のもと、盛会のうちに一日を終えることができた。このアセンブリーにおいても出張講座として、科学館長と科学館ボランティア6名が中心となり「プログラミング」の良さやプログラミングロボット「m-bot」を科学部員に紹介した。

イ 参加した生徒の感想
・様々な学校の様々な研究?実験を知ることができ、とても楽しかったです。また、やりたいと思います。
・「スクラッチ」が面白そうだったので、自分の家のパソコンにダウンロードして、プログラミングをしたいです。
・他校の活動内容を知ることで、自校の活動範囲分野の拡大を模索できました。文化祭などの出展の参考になり、考え方が深まりました。今まで興味がなかった分野への興味が深まりました。

4-5 火星ローバーコンテストin千葉(12/3)

本年度も「第18回火星ローバーコンテストin千葉」が、きぼ一るを会場にて開催された。参加チーム数は過去最高の64チームとなった。学校単位では市内7校が参加し、科学部員の参加人数は62名にもなった。各チームとも、試行をこらしたローバーをもちより、上位入賞を目指した。科学館ボランティア6名は、故障したローバーの修理方法をアドバイスするなど、様々な面で参加者の支援をした。大会当日に、ローバーが故障し、困っていた参加者が科学館ボランティアから修理方法を支援してもらい、ホッとした表情を浮かべていた。

5 まとめ

2年間にわたりボランティア活動を推進してきた結果、各イベントの質的な向上を図ることができた。特に「プログラミング講座」は参加した科学部員から「またやりたい」等の感想が多く出された。また、科学部員をはじめ顧問の教員の意欲も裔まる事例も見られるようになった。具体的には、2月に2校が連絡を取り合い、自主的に「科学部の活動」「面白実験」「作成したプログラミング」を紹介し合うような取糾がなされた。2年飢、ボランティアの支援をかり、始めた事業が、確実に生徒・教員主体の活動へと移行していることは大きな成果といえる。今後もこの「活性化の芽」を大切に育て「科学都市ちば」を目指していきたい。