2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

ロボット競技における鋼フレームの有効性に関する研究

実施担当者

宮原 雅和

所属:群馬県立太田工業高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 近年、全国で様々な競技会が開催されている。本校が参加している全国高等学校ロボット競技大会は、いわゆる「ロボコン」と呼ばれるもので、どのチームもほとんどが軽量で強度のあるアルミフレームを採用している。しかし、本研究ではアルミよりも安価で強度の高い鋼を利用してフレームを製作することの有効性について調べていく。


2.アルミと鋼の比較
 アルミや鋼と一言で言っても、様々な種類があるがここで比較するものは一般的な材料のものを表している。

(注:表/PDFに記載)

 以上のことから、フレームに鋼を使用した際の利点・問題点をまとめる。

(注:表/PDFに記載)


3.大会ルールと設計案
 今年度のルールは、以下の写真に写っている白い牛乳ボトルを相手コートに飛ばし、赤い缶詰は自コートの特定の場所に置くことで得点を競い合う。ロボットは2種類製作し、人間が操作する『リモコン型』が白い牛乳ボトルを、自動制御で動く『自立型』が赤い缶詰をそれぞれ担当しなければならない。


4.設計案
これらの条件を満たした上で、生徒が考えた設計案と製作したロボットが下記のものである。

(注:図/PDFに記載)


5.完成したロボット

(注:図/PDFに記載)


6.改良点
 当初、すべてのフレームを鋼で製作したところ、重量が規定重量である18kgを越えてしまった。そこで、強い荷重の掛からないストック&発射機構のフレームのみをアルミで作り直し、下記の写真のように変更することで重量の問題を解決した。
 鋼で製作した場合、この部分のフレームは1.95kgだったのに対し、アルミでは0.68kgまで軽量化されている。


7.考察
7.1鋼の強度に関して
 高い強度を持つ鋼でなければ、今回のフレーム形状を実現することは出来なかった。材料をアルミから鋼にすることで、今までに無い形状のフレームも設計することが可能である。
 また、設計経験の乏しい高校生は荷重に耐えられないフレームを作ってしまう場合が多い。しかし、材料が鋼になることで強度が増し、高校生の設計の未熟さを補ってくれる長所が生まれた。
7.2フレーム同士の固定に関して
 従来のアルミでフレーム同士を固定する場合、ボルト・ナットを用いることが多い。それは、アルミ溶接が非常に高い技術を求められるからである。しかし、材料を鋼にしたことでガス溶接などの比較的簡単な溶接を利用することが出来、作業の容易さだけでなく接合部の強度も高めることが出来た。
7.3重量について
 強度の高い鋼の特性を活かし、少ないフレーム量で製作することで重量増加にも対応できると考えていた。しかし、実際には重量オーバーとなり、一部分をアルミで製作しなければならなくなった。
このことから、駆動部などの高い荷重が加わる部分は鋼で製作し、比較的強度のいらない部分はアルミを利用するという『ハイブリッドフレーム方式』が最も適していると考えられる。


8.まとめ
 『ロボット作り=アルミ』という固定観念に囚われず、様々な可能性や手段を考えることが大切であると気付かされた。アルミの製造方法が発明されてから約130年あまりが経つが、鋼を含む鉄の文化は紀元前から2000年以上に亘って人々に受け継がれてきた。古いものと新しいもの、それぞれの長所を活かしてものづくりを進めていくことがこれからの時代には必要であると考える。