2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

サイエンス・セミナー成果報告(津西サイエンス・パートナーシップ・プログラム)

実施担当者

鈴木 隆明

所属:三重県立津西高等学校 教諭

概要

実施の主旨
 本校の国際科学科を中心とした小中高接続・連携体制による、地域への科学・理数教育の発信及び環流と、地域の人材育成体制の構築を図る。
 次世代の科学・技術を開発することのできる「科学する心」や「探究心」を持ち、論理的思考力、創造力及び倫理観を兼ね備えた科学技術系の人材を育成する。
特に本年度の実施においては、小学校、中学校との連携を深めることを基軸として『サイエンスセミナー』を中心に実施した。


全体計画
コース1「風力発電」…三重大学工学部連携
参加生徒数21名
コース2「燃料電池」…三重大学工学部連携
参加生徒数14名
コース3「太陽光発電」…三重大学工学部連携
参加生徒数12名
コース4「勢水丸乗船実習」…三重大学生物資源科
参加生徒数5名
コース5「サイエンスセミナー」…小学校2校連携
三重大教育学部附属小学校5・6年生20名
本校生徒14名津市立西が丘小学校 5・6年生24名
本校生徒14名
特設コース「サイエンスセミナー」…中学校2校連携
鈴鹿市立天栄中学校 中3生16名
鈴鹿市立鼓ヶ浦中学校 中3生24名
本校生徒1名
SPP発表「本校学校説明会」時にP,Pにて
本校生徒3名
同「本校学校見学会」時にP,Pにて
本校生徒3名


実施経過報告
4月6日…第1回SPP推進委員会
事業概要・年間計画検討・役割分担等の決定
4月8日…保護者説明(当事業に関する説明)
4月24日…生徒対象オリエンテーション
事業概要の説明・各研究テーマ・年間計画等の紹介、説明。各コース希望調査。
5月8日…第2回SPP推進委員会
各コース担当等の検討・記念講演会等
6月11日…第3回SPP推進委員会
各コースの日程、事前学習等
6月20日…コース4「勢水丸乗船実習」事前研修
三重大学 木村准教授による事前研修
(三重大 生物資源学部校舎)
7月3日…コース1「風力発電」
本校教員による事前指導(本校)
7月3日…コース3「太陽光発電」
三重大学 三宅教授による事前指導(本校)
7月14日…コース2「燃料電池」
三重大学 今西教授による事前指導(本校)
7月30日~7月31日(1泊2日)
…コース4「勢水丸実習」(海洋実習)
三重大学 立花准教授による伊勢湾内での乗船実習
8月5日…コース2「燃料電池」実習(三重大)
三重大学 総合研究棟 今西教授による実習
8月6日…コース3「太陽光発電」(三重大)三重大学 三宅教授による実習
8月7日…コース1「風力発電」
青山高原ウィンドパーク(風力発電施設)見学
三重大学 鎌田准教授による実習(三重大)
8月20日…本校学校説明会において「サイエンスセミナー」の生徒によるP,P発表を実施
(中学生及び保護者約1200人)
8月26日…本校学校見学会において「サイエンスセミナー」の生徒による発表を実施
(中学生及び保護者約20名対象)
8月31日…第4回SPP推進委員会
事後指導等について
9月1日…コース2「燃料電池」事後指導
三重大学 今西教授による事後指導(本校)
9月18日…コース3「太陽光発電」事後指導
三重大学 三宅教授による事後指導(本校)
9月18日…コース4「勢水丸乗船実習」事後指導
本校教員による事後指導(本校)
10月15日…天栄中学校での「サイエンスセミナー」
本校の先生による科学の実験実習の出前講座
10月16日…鼓ヶ浦中学校での「サイエンスセミナー」
本校の先生と生徒による科学の実験実習の出前講座
10月16日…コース5「サイエンスセミナー」事前指導
10月20日…第5回SPP推進委員会
SPP記念講演会、サイエンスセミナー打合せ
10月30日…津西SPP記念講演会(本校・全校参加)
名古屋大学 田所 敬一准教授
「三重県の地震・津波被害を考える」
11月7日…コース5「サイエンスセミナー」(小学校)
三重大学教育学部附属小学校
津市立西が丘小学校
11月2日~12月13日…P,P制作。発表練習
11月12日…サイエンスセミナー事後指導
12月14日…津西SPP校内生徒成果発表会
中谷財団堀川様・県教委河合指導主事参観
1月26日…第6回SPP推進委員会
本年度の反省と、来年に向けた改善策等

実施報告
1 「サイエンスセミナー」三重大学教育学部附属小学校
11月7日(土)14:00~15:30
地域連携の一環として5・6年生を対象に、本校の生徒
18名が小学生に対し科学実験を披露した。
 実験の楽しさを伝える工夫や、わかりやすい資料の準備等を通して、プレゼン能力の涵養に加え、「教える」ことでの知識の定着と科学への興味・関心を深化させた。
 事前指導は、実験の準備、練習とプレゼンの準備を本校担当教諭とともに行った。三重大学附属小学校でのサイエンスセミナー当日は、小学生及び小学生の保護者も多数参加。「液体窒素を使った実験」1・2では生花や風船を凍らせて、空気の体積やボールの弾力性の変化等を体験させた。
「時計反応」3では、化学反応が時間の経過とともに繰り返し起き、それに伴って液体の色が変わることを見てもらった。今回新たな実験として「高速ピンポン」4・5を取り入れ、真空状態の筒内のピンポン球が真空を破ることにより超高速で飛び出す実験を行った。轟音とともに飛び出したピンポン球が空き缶を打ち破る様は、大変興味を引くものとなった。「人工イクラ」5・6では化学薬品と絵の具でカラフルなイクラ状のものを作る実験を行った。小学生が色の組み合わせなどを楽しみながら実験し、できあがった人工イクラを各自容器に入れ、持ち帰った。

2「サイエンスセミナー」津市立西が丘小学校
11月7日(土)14:00~15:30
 三重大附属小学校と同日に実施。「液体窒素」と「人工イクラ」は同じ実験であったが、今回新たに「炎色反応」と「音の実験」を加えた。
 「炎色反応」8では、様々な物質が燃焼する際に発する色の違いを実験し、花火等の原理の説明を行った。
 「音の実験」9では、糸電話を使った音の伝わり方やスピーカーから音が出るしくみなど、児童を交えて実験し、普段の生活の中で何気なく触れている「音」についての理解を深めることができた。
 これらの実験を通し、日常と科学を結びつけるきっかけ作り、科学に対する興味関心を一層深めることのできる取組となった。

3「サイエンスセミナー」鈴鹿市立天栄中学校
10月15日(木)14:00~15:30
 昨年度まで小学校のみで実施してきたセミナーを、本年度より中学校2校と連携をした。
 天栄中学校では、本校教諭1名が中学3年生16名に対し「音」の伝わり方や音波や音の振動のしくみなどを実験をしながらパワーポイントを使い説明した。小学校での実習よりも高度な内容で、高校から大学入試レベルの内容ではあったが、中学生の持つ知識や実験の中でわかりやすく解説し、中学生でも分かる、という楽しさを通して科学に対する興味関心を喚起した。

4「サイエンスセミナー」鈴鹿市立鼓ヶ浦中学校
10月16日(金)14:00~15:30
 鼓ヶ浦中学校では、教諭1名と本校生徒1名で実験を披露しながら、化学実験の面白さや危険性に触れながら、中学生レベルの理科をわかりやすく展開した。特に液体窒素を使用した実験では、温度と物質の弾性の関係や、小学生では難しい温度と電流の流れ方の関係などの実験を行った。
 本校の教諭と一緒に実験を行った本校生徒は、自分自身の出身中学校で、実験等の披露や解説を行いながら、高校での生活や学習状況等も交えながら、後輩との交流を図った。中学生には、科学の面白さや高等学校に対するイメージ作りとしてのキャリア教育の一端を担うことができた。

5「津西SPP生徒成果発表会」本校
12月14日(月)15:30~17:00
 本校にて「津西SPP」全体の成果発表会を実施。来賓に中谷財団の堀川様、三重県教育委員会の河合様、三重大学教授三宅様、同今西教授様を迎え、グループ毎にパワーポイントによる発表または、ポスターセッションによる発表を行った。
 本年度は、成果を伝えるためのプレゼンテーション力の向上にも注力し、発表準備に時間を多く使った。
 結果P,Pの出来映えや、生徒の発表の様子等昨年と比較し数段レベルアップしたため、来賓の方々からの講評の中で、生徒の取組状況や発表の様子に多くの賛辞をいただくこととなった。


総括と今後の課題
 本年度は、これまで行ってきた小学校との連携に加え、中学校との連携を2校で実施。また、本校の学校説明会や学校見学会の折に、昨年度の「サイエンスセミナー」等の生徒発表の機会を設け、中学生やその保護者に対し、本校の科学に対する取組を広く伝えることができた。
 また、発表を通して着実にプレゼン能力が向上していく状況も見ることができ、大きな成果があったと考えている。今後は、学校が用意したコース以外に、生徒自らが課題をみつけ、課題解決に向け大学等との連携を図る
「探求型」の班を創設し、課題発見、課題解決能力の向上を目指していきたいと考えている。
 生徒はこのたびのサイエンスセミナー等の実験実習を通して、科学に対する視野が広がり、理解も深まった。また発表や多くの人との関わりの中でコミュニケーション能力やプレゼン能力も培われたと考えている。今後の進路選択や将来設計の一助として、地域の人材育成に大きな成果があったと自負している。