2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

コウノトリと共生する地域づくりに関する研究~三保地区コウノトリ放鳥拠点における生物調査~

実施担当者

安原 正晃

所属:兵庫県立和田山高等学校 教諭

実施担当者

谷口 正夫

所属:兵庫県立和田山高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 平成24年10月、本校に近い朝来市山東町三保区に朝来市では初となるコウノトリ飼育の放鳥拠点施設が設置された。平成26年4月には、この拠点施設でヒナ2羽の孵化が確認された。兵庫県では、これまで豊岡市の県立コウノトリの郷公園を中心として人とコウノトリの共生について研究が成されている。南但馬で生活する高校生がこのことに興味をもつことで、但馬全域にコウノトリと共生する地域づくりを広めるきっかけとしたい。
 コウノトリの野生復帰の目標は「人との共生」であり、特に田園地帯である本校の周辺環境を考えると「自然と農業の共生」について理解を深めることが重要である。そこで、放鳥拠点周辺の環境がコウノトリの生息を支えるポテンシャルを持つかを検証する。


2.調査方法
調査地:兵庫県朝来市山東町三保地区コウノトリ放鳥拠点周辺の農薬を使用している田圃
拠点周辺を流れている河川調査時期:平成26年7月末~11月
調査:①水田内 灌水あり(灌と結果に表記)網の幅0.35m×5回×5箇所
水田内 灌水なし(結果には無表記)幅1m×長さ20m×5箇所
②法面
幅1m×長さ20m×5箇所
③溝(水路)
溝の幅×長さ5m×4箇所
※上記の①~③において1cm以上の生物の平均個体数密度(匹/cm2)を算出し、場所による比較を行った。また、「放鳥が自立生活できた」と言われている豊岡市福田の平均個体数密度との比較を行った。


3.調査結果
(1)調査場所A(巣塔西側)
①水田内
(注:表/PDFに記載)

②法面
(注:表/PDFに記載)

③溝(水路)
(注:表/PDFに記載)

(2)調査場所B(巣塔北東)
①水田内
(注:表/PDFに記載)

②法面
(注:表/PDFに記載)

③溝(水路)
(注:表/PDFに記載)

 水田内、法面、溝(水路)における平均個体数密度を比較してみると、溝(水路)の平均個体数密度が非常に高いことが分かった。
 「放鳥が自立生活できた」と言われている豊岡市福田の平均個体数密度は11.9匹/m2である。この福田の条件と比較してみると、溝(水路)のみがこの条件を満たしていることが分かった。


4.まとめ
 溝(水路)の主要な餌種はガムシ、カエルであると推定されるが、流れが緩やかで水深
30cm前後の環境に局在しているようだ。今後、農薬を使用していない田圃との比較調査を行い、無農薬の効果を評価する必要もある。
 また、コウノトリが定着するためには、冬季湛水などに効果があると期待する。
 高校生の活動が地域に受け入れてもらうことができ、地域の農家と親密になる効果もあったため、次年度、無農薬の田圃で調査できることとなった。