2016年[ 技術開発研究助成 (開発研究) ] 成果報告 : 年報第30号

ウイルス酵素に対する新規高感度蛍光プローブによる感染情報の画期的検出技術

研究責任者

高橋 忠伸

所属:静岡県立大学大学院 薬学研究院生 化学分野 講師

概要

1.はじめに
ウイルス感染細胞を検出するために、感染による細胞死を観察する方法と感染部位のウイルス抗原を染色する方法が一般的に用いられる。感染細胞死の観察は簡便な方法であるが、この方法のみでは信頼性の高いウイルス検出は困難と思われる。ウイルス抗原の染色は、細胞の固定化、特異的抗ウイルス抗体、二次抗体が必要であり、少なくとも 1 時間以上を費やすことから、多くの検体を扱う必要がある衛生検査や臨床の現場で実施するには煩雑な方法と言える。また、抗原性の変化に富むウイルスに対して、特異的抗体を準備するのは大変な労力とコストがかかる。このような理由で、抗体を必要とせずにウイルス感染部位を高感度、簡便、迅速に染色できる信頼性の高いウイルス検出法が必要である。インフルエンザ A 及び B 型ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルスやおたふく風邪ウイルスを含む一部のパラミクソウイルスやこれらの感染細胞は、糖鎖の末端に存在するシアル酸を切断する酵素「シアリダーゼ」を有している。本研究の目的は、シアリダーゼを有するこれらのウイルスの感染部位を、抗ウイルス抗体を必要とせず、できる限り簡便で、高感度、迅速に蛍光可視化するための新規プローブ材料を開発し、ウイルスのシアリダーゼ活性を感染情報として利用することである。
ベンゾチアゾリルフェノール誘導体は水に不溶性で酸性にも耐性があり、紫外線照射下で大きいストークスシフトを示す安定な蛍光を発する結晶性物質である。我々は、ベンゾチアゾリルフェノール誘導体の一つであるBTP3 にガラクトースを結合させることで、二次抗体の標識抗体として汎用されるβ-ガラクトシダーゼの蛍光プローブを開発した(1)。BTP3 に単糖を結合させることで、単糖を基質として特異的に切断する酵素活性を蛍光化するプローブが開発できるものと予想された。
そこで、シアリダーゼの基質であるシアル酸の一つ N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を BTP3に結合させたシアリダーゼ蛍光化プローブ「BTP3-Neu5Ac」を開発した。BTP3-Neu5Ac にシアリダーゼが反応すると、生成した BTP3 がシアリダーゼ活性の存在部位に沈着し、シアリダーゼの局所的な蛍光可視化が可能になるものと期待される(図1)。ウイルスのシアリダーゼ活性における BTP3-Neu5Ac の反応性を検討し、感染細胞の蛍光可視化を試みた。

図1 BTP3-Neu5Ac によるウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化機構

2.インフルエンザ A 型ウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化
インフルエンザ A 型ウイルス(トリウイルス、A/duck/Hong Kong/313/4/1978 H5N3 型)をタンパク質吸着膜にブロットし、10 および 100 µM BTP3-Neu5Ac をリン酸等張緩衝液(PBS)中、37℃で 10 分間または 1 時間反応させた。紫外線照射下、ウイルスのシアリダーゼ活性の局所的な蛍光を観察した。インフルエンザウイルスに特異的なシアリダーゼ阻害剤ザナミビル(医薬品名リレンザ)を 1 µM 存在下で BTP3-Neu5Ac と反応させると、蛍光化は阻害された。BTP3-Neu5Ac による蛍光化は、インフルエンザウイルスのシアリダーゼ活 性によるものと確 認された(BTP3-Neu5Ac を 1 時間反応させた蛍光像を図2に示す)

3.インフルエンザ A 型ウイルス感染細胞の蛍光化
ウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化プローブ 10 µM BTP3-Neu5Ac は無血清培地中、37℃、
10 分間ほどの反応で、インフルエンザ A 型ウイルス(A/duck/Hong Kong/313/4/1978 H5N3 型) の感染量依存的に、感染 12 時間後のシアリダーゼを豊富に発現したイヌ腎臓由来 MDCK 感染細胞を紫外線照射下で蛍光化した(図3)。

図2 BTP3-Neu5Ac によるインフルエンザ A 型ウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光可視化

図3 BTP3-Neu5Ac によるインフルエンザ A
型ウイルス感染細胞の蛍光可視化

4.亜型や宿主が異なるインフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化
インフルエンザ A 型ウイルスの表面抗原性は、現在までに H1~18、N1~11 の亜型が報告されている。また、インフルエンザ A 型ウイルスの宿主域は広く、ヒトやトリなど多くの哺乳類および鳥類から分離されている。亜型や宿主の異なるウイルス 株のシア リダーゼ 活性にお いてBTP3-Neu5Ac の蛍光化が可能か検討した。10µM BTP3-Neu5Ac は無血清培地中、37℃、10 分間反応させた。感染 12 時間後の MDCK 細胞において、ヒト A 型 H1N1(A/Puerto Rico/8/1934
H1N1 型)、ヒト A 型 H3N2(A/Memphis/1/1971
H3N2 型 )、 2009 年 パンデミック(A/Shizuoka/833/2009 H1N1 型)、ヒト B 型(B/Lee/1940)の各ウイルスの感染細胞が蛍光化された。シアリダーゼ遺伝子導入 24 時間後のシアリダーゼ発現細胞(アフリカミドリザル腎臓由

来 COS-7 細胞)において、トリ A 型 H5N3
(A/duck/Hong Kong/313/4/1978 H5N3)、1918年パンデミック(A/Brevig Mission/1/1918 H1N1 型 ) 、 高 病 原 性トリ H5N1(A/chicken/Shimane/1/2010 H5N1 型)、2013 年にヒト感染例が多く報告されたトリ H7N9(A/Anhui/1/2013 H7N9 型)の各ウイルスに由来するシアリダーゼの活性が蛍光化された。BTP3-Neu5Ac は、宿主や亜型に関係なく、当時の新型ウイルス(パンデミックウイルス)も含めてシアリダーゼ活性を蛍光化できる。トリ A 型H5N3(A/duck/Hong Kong/313/4/1978 H5N3 型)のシアリダーゼ遺伝子発現細胞において、1 µM ザナミビル存在下で蛍光化は阻害されたことから、シアリダーゼ遺伝子発現細胞の蛍光化は、ウイルスのシアリダーゼ活性によるものと確認された(図4)。

図4 異なる宿主や亜型のインフルエンザウイルスの感染細胞またはシアリダーゼ遺伝子発現細胞の BTP3-Neu5Ac による蛍光化

5.インフルエンザ A 型ウイルス感染動物の肺組織の感染部位の蛍光化
BALB/c マウスにインフルエンザA 型ウイルス(A/Puerto Rico/8/1934 H1N1 型、1 ×107 フォーカス形成ユニット、25 µl)を経鼻感染させた。24 時間後、4%パラホルムアルデヒドで固定化し、マウスの 10 µm の肺凍結切片を作製した。20 µM BTP3-Neu5Ac を 1 mM CaCl2 含有 10 mM 酢酸緩衝液(pH 6.0)で37℃、20 分間反応させた。紫外線照射下で蛍光画像を撮影した。同時に非感染マウスの肺切片を同条件でBTP3-Neu5Ac を反応させた。感染マウスの肺細気管支の内縁に沿って感染部位が蛍光化された(図5)。

図5 インフルエンザ A 型ウイルス感染マウスの肺組織の感染部位の BTP3-Neu5Ac による蛍光化

6.インフルエンザ A 型ウイルス感染細胞集団のプラーク状の蛍光化と蛍光化細胞からの直接のウイルス株分離
インフルエンザ A 型ウイルス(A/WSN/1933 H1N1 型)感染 MDCK 細胞に 2 µg/ml アセチル化トリプシン含有 0.8%アガロース無血清培地を重層した。感染 2 日後、アガロース培地の上に 200µM BTP3-Neu5Ac を 100 µl 滴下し、37℃で 15~20 分間反応させた。紫外線照射下でプラーク状の蛍光化を確認し、そのプラーク状の蛍光化感染細胞をピペットチップでつつき、新しい MDCK 細胞へ添加した。新しい MDCK 細胞でウイルス感染が抗ウイルス抗体により免疫化学的に確認された。蛍光化感染細胞から直接、ウイルス株を分離できた(図6)。一般的にプラークを形成しにくい臨床検体から採取されたばかりのウイルス(A/Shizuoka/833/2009 H1N1 型)も感染 3 日後に、感染細胞集団をプラーク状に蛍光化できた(2)。

図 6. インフルエンザ A 型ウイルス感染細胞集団の BTP3-Neu5Ac によるプラーク状の蛍光化

7.センダイウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化
動物のパラミクソウイルスである、センダイウイルス(Z 株)をアカゲザル腎臓由来 LLC-MK2 細胞に 感 染させ 、 24 時間後に 10 µMBTP3-Neu5Ac で 5 分間反応させた。pH 4.5 に調製した無血清培地中 37℃で BTP3-Neu5Ac を反応させた。紫外線照射下で、ウイルス感染量依存的な感染細胞の蛍光化を観察した(図7)。
センダイウイルスはげっ歯類病原ウイルスであることから、マウスへの感染性は高い。そこで、センダイウイルス(1 ×107 フォーカス形成ユニット、20 µl)を BALB/c マウスに経鼻感染させた。
24 時間後、4%パラホルムアルデヒドで固定化し、マウスの 10 µm の肺凍結切片を作製した。肺切片を 10 mM 酢酸緩衝液(pH 4.5)中の 5 µM BTP3-Neu5Ac で 37℃、10 分間反応させた。紫外線照射下、マウス肺の細気管支(BR)と思われる内縁の感染部位が蛍光化された。ウサギ抗センダイウイルス抗体で免疫化学的に青色染色した感染部位とほぼ一致していた(図8 )。BTP3-Neu5Ac はインフルエンザウイルス以外のセンダイウイルスのシアリダーゼ活性を蛍光化できることが確認された(3)。

図7 センダイウイルス感染細胞の BTP3-Neu5Acによる蛍光化

図8 センダイウイルス感染マウスの肺組織の感染部位の BTP3-Neu5Ac による蛍光化

8.ニューキャッスル病ウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化
鳥類のパラミクソウイルスである、ニューキャッスル病ウイルス(D26 株)を LLC-MK2 細胞に感染させ、24 時間後に 10 µM BTP3-Neu5Ac で 5 分間反応させた。PBS 中室温で BTP3-Neu5Ac を反応させた。紫外線照射下で、ウイルス感染量依存的な感染細胞の蛍光化を観察した(図9)。
ニワトリを集団死させるウイルスの代表例にニューキャッスル病ウイルスとトリインフルエンザウイルスが挙げられる。ニューキャッスル病ウイルス感染細胞に一般的なシアリダーゼ阻害剤 2-deoxy-2,3-didehydro-N-acetylneuraminic acid(DANA)とともに BTP3-Neu5Ac を作用させると、蛍光染色は阻害される。一方、インフルエンザウイルス特異的シアリダーゼ阻害剤ザナミビルとともに BTP3-Neu5Ac を作用させた時は蛍光染色が阻害されないことから、多くの場合、ザナミビルの添加によりニューキャッスル病ウイルスとトリインフルエンザウイルスを区別できることを示した(図9)。BTP3-Neu5Ac はインフルエンザウイルス以外のニューキャッスル病ウイルスのシアリダーゼ活性を蛍光化できることが確認された(4)。

図9 ニューキャッスル病ウイルス感染細胞のBTP3-Neu5Ac による蛍光化

9.ヒトパラインフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化
ヒトパラインフルエンザウイルスは、5 歳未満のウイルス性肺炎の 2 割の原因ウイルスとして知られる。ヒトパラインフルエンザウイルスは血清型が 1~4 まであるが、多く検出されるのは 1 型(hPIV1)と 3 型(hPIV3)である。hPIV1(C35 株)を LLC-MK2 細胞に感染させ、48 時間後に25 µM BTP3-Neu5Ac で 5 分間反応させた。pH4.5 に調製した無血清培地中 37 ℃でBTP3-Neu5Ac を反応させた。紫外線照射下で、ウイルス感染量依存的な感染細胞の蛍光化を確認した(図 10 の上図)。hPIV3(C243 株)をLLC-MK2 細胞に感染させ、48 時間後に 25 µM BTP3-Neu5Ac で 15 分間反応させた。pH 4.5 に調製した無血清培地中 37℃で BTP3-Neu5Ac を反応させた。紫外線照射下で、感染細胞の蛍光化を確認した(図 10 の上右図)。
hPIV1 感染LLC-MK2 細胞に 3 µg/ml アセチル化トリプシン含有 0.5%アガロース無血清培地を重層した。感染 2 日後、アガロース培地の上に 200
µM BTP3-Neu5Ac を 100 µl 滴下し、37℃で一晩反応させた。紫外線照射下で、ウイルス感染量依存的に感染細胞集団のプラーク状の蛍光化を確認した(図 10 の下図)。そのプラーク状の蛍光化感染細胞をピペットチップでつつき、新しいLLC-MK2 細胞へ添加した。新しい LLC-MK2 細胞でウイルス感染が抗ウイルス抗体により免疫化学的に確認された。蛍光化感染細胞から直接、ウイルス株を分離できた。hPIV1 は従来、プラーク形成が困難であったため、我々が条件検討により感染から 7~9 日間を必要とする新しいプラーク形成法を報告してきた( 5 )。しかし 、BTP3-Neu5Ac を利用することで、hPIV1 感染 3 日後にはプラーク状の感染細胞集団を明確に視覚化することに成功した(6)。

図 10 ヒトパラインフルエンザウイルス感染細胞の BTP3-Neu5Ac による蛍光化

10.BTP3-Neu5Ac の蛍光化機構の応用 -アルカリホスファターゼ蛍光化プローブの開発-
本研究で開発したシアリダーゼ活性の蛍光化プローブ「BTP3-Neu5Ac」は、シアリダーゼの酵素活性部位が特異的に認識する基質として
Neu5Ac を有している。この Neu5Ac を他の酵素基質に置換することで、置換した基質に特異性を示す酵素活性の蛍光プローブが開発できるものと予想される。アルカリホスファターゼはリン酸基を基質とし、二次抗体の標識に汎用される酵素である。そのため、この酵素の蛍光プローブは極めて汎用性が高いものと期待される。そこで、BTP3-Neu5Ac のNeu5Ac 構造をリン酸基に置換した BTP3-Phos を開発した。BTP3-Phos はアルカリホスファターゼと反応し、BTP3 を生成する。
BTP3 は、その酵素活性の存在部位を蛍光可視化するものと予想される(図 11)。

図11 アルカリホスファターゼ蛍光プローブ「BTP3-Phos」の構造と蛍光化機構

アルカリホスファターゼ標識二次抗体をタンパク質吸着膜にブロットし、40 nM BTP3-Phos を含む反応緩衝液(100 mM Tris-HCl pH 9.5、5 mM MgCl2、100 mM NaCl)で室温、5 分間反応させた。アルカリホスファターゼ標識二次抗体の濃度依存的な蛍光染色像が得られた(図 12 の上図 )。ヒトイン フルエンザ A 型ウイルス(A/Memphis/1/1971 H3N2 型)を感染させたMDCK 細胞を 8 時間後にメタノールで固定化した。この細胞を、我々が過去に作製した抗インフルエンザ A 型ウイルスヘマグルチニンモノクローナル抗体(2E10)およびウイルス核タンパク質モノクローナル抗体(4E6)のカクテルで室温、30 分間反応させた。さらに、アルカリホスファターゼ標識二次抗体で室温、30 分間反応後、紫外線照射下で観察した。感染細胞の蛍光化像が確認され(図 12 の下図)、BTP3-Phos はアルカリホスファーゼの蛍光プローブとして有効であることが示された(7)。BTP3 は酸耐性の蛍光物質であり、酸性条件の蛍光染色にも適している。BTP3-Phos の酸性ホスファターゼにおける反応性は調べていないが、酸性ホスファターゼが組織化学的なバイオマーカーとなっている前立腺がんの蛍光染色にも BTP3-Phos が応用できるかもしれない。

11.まとめ
ウイルスのシアリダーゼ活性を局所的に蛍光化する新しいプローブ「BTP3-Neu5Ac」を開発した。BTP3-Neu5Ac を用いて、インフルエンザA 型ウイルスのシアリダーゼ活性や、感染細胞に発現するウイルスのシアリダーゼ活性を、抗ウイルス抗体や細胞の固定化を必要とせずに蛍光化することに成功した。ウイルスや細胞を生きた状態で蛍光化できるため、蛍光化したウイルス感染細胞集団(プラーク状の蛍光)から直接、ウイルス株の分離にも成功した。また、センダイウイルスやニューキャッスル病ウイルスの動物パラミクソウイルスのシアリダーゼ活性の蛍光化にも成功した。しかしながら、細胞に沈着した BTP3 は時間とともにやや拡散性が観察され、感染細胞内や周囲の非感染細胞を非特異的に蛍光化させる様子が見られた。また、生細胞内への移行性(膜透過性)が高くなく、細胞内のシアリダーゼ活性のイメージングのような局所蛍光化を実施するためには、細胞の固定化や膜透過性処理が必要である。これらの課題のため、BTP3-Neu5Ac はライブイメージングに不向きであると言える。感染細胞内のシアリダーゼ活性のライブイメージングには、生きた状態の感染細胞内のシアリダーゼ

活性を局所的に高い精度で蛍光化する必要があるものと考えられる。
今後の取り組みとして、ライブイメージングに適した改良型 BTP3-Neu5Ac の開発を行い、BTP3-Neu5Ac 誘導体の局所染色性と細胞内移行性の両性質の向上を狙う。また、ウイルスのシアリダーゼに対する感受性を高めることで、または蛍光物質の蛍光強度を強めることで、シアリダーゼをさらに高感度で蛍光化する改良も行う。BTP3-Neu5Ac の蛍光化の高感度化及び局所染色性の高精度化は、ウイルス検出・分離の高感度化及び高精度化にもつながる。今後、BTP3-Neu5Ac の性能向上をめざすことで、感染細胞内のシアリダーゼ活性のライブイメージング解析などの画期的手法を提供できるものと期待される。
ザナミビルやオセルタミビルに代表される抗インフルエンザ医薬品(シアリダーゼ阻害剤)に対する耐性化インフルエンザウイルスの発生は、近年、臨床や衛生検査で大きな関心事になっている。これらの薬剤存在下においても、薬剤耐性ウイルスはシアリダーゼ活性を示すことから、BTP3-Neu5Ac は薬剤耐性ウイルスの効率的な検出・分離にも応用できることが分かった。(8-11)。
現在までに BTP3-Neu5Ac による動物・鳥類パラミクソウイルスやヒト呼吸器病原体であるヒトパラインフルエンザウイルスの検出に成功している。また、ヒトに病原性を示すパラミクソウイルスでシアリダーゼを持つおたふく風邪ウイルスにおいても、BTP3-Neu5Ac による蛍光検出に成功した。