2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

アクティブラーニングで学ぶ意欲を高める―動物実験で班による体験活動を充実させる―

実施担当者

山本 芳幸

所属:倉敷市立玉島東中学校 教諭

概要

1 はじめに
動物の単元の主な内容は以下である。
1. 細胞 2. 消化と吸収 3. 呼吸 4. 血液の循環
5. 不要物の排出 6. 感覚器官と神経 7. 動物の分類 8. 生命の進化

動物の単元は体験的な活動は少ない傾向にあるが、 以下のように実験や観察を取り入れた。
中学2年「動物」
1. 細胞→①植物の細胞の観察②人の細胞の観察
2. 消化と吸収→③唾液の実験④豚の小腸の実験
3. 呼吸→⑤豚の肺の実験
4. 血液の循環→⑥豚の血液の実験と観察,⑦鶏の心臓の実験、⑧金魚の血管の観察
5. 不要物の排出→⑨鶏の肝臓の観察
6. 感覚器官と神経→⑩日の実験⑪神経伝達速度の実験、 ⑫鶏の脳の観察、 ⑬豚の日の観察
7. 動物の分類→⑭金魚の呼吸の実験,⑮アサリの解剖
上記の紹介をする。


2 小単元での体験的な実践例
1. 細胞→①植物の細胞の観察②人の細胞の観察
 ①の植物の細胞では、 タマネギ、 ピーマン、 オオカナダモ、バナナなどの細胞を観察した。特にタマネギの皮ではよく細胞が観察できた。 バナナの実の細胞にヨウ素液をかけると、 写真のようにデンプンのある部分が青紫色に染まることを確認した。(右写真は40倍)

 ②の人の細胞の観察では、ほおを綿棒でこすり、それを顕微鏡で観察した。酢酸カーミン液で核が染まっていることを確認した。
2. 消化と吸収→③唾液の実験④豚の小腸の実験

 ③では、デンプンに唾液を入れたもの、デンプンに水を入れたもの、デンプンに唾液を入れたものを氷で冷やしたもの、の3通りで比較した。ベネジクト液を入れて加熱すると、よく結果が表れた。
 豚の小腸は東京芝浦臓器か ら取り寄せた。 デンプンとブドウ糖の水溶液を小腸に入れ、水につけるともやもやしたものがブドウ糖水溶液の方に見られることを確認した。

3. 呼吸→⑤豚の肺の実験
 ⑤の豚の肺の観察では、東京芝浦臓器から豚の肺を購入した。一葉の肺でも気管に空気を入れると大きく色を変えてふくらむ。ダイナミックな動きに生徒が大きな歓声を上げる。2等分ほどに切断して、 生徒にも肺をふくらませた。巽味をもって生徒が肺をふくらましていた。
4. 血液の循環→⑥豚の血液の実験と観察⑦鶏の心臓の実験、⑧金魚の血管の観察
 ⑥では東京芝浦臓器から豚の血液を購入した。酸素と二酸化炭素を血液に送り込むと、酸素の方は鮮やかな赤色に、二酸化炭素の方はどす黒い赤色に変化した。比較すると一目瞭然だった。顕微鏡で観察すると、赤血球がよく見えた。(右写真は100倍)
 ⑦の鶏の心臓の観察(本セミナーで発表)は、スーパーから「鶏きも」を購入した。肝臓と心臓がついた状態のものを班に2つずつ配布し、実験を行った。水を入れる場面で、血管のつながりに気づく生徒がいた。 縦に切ったときに右心室と左心室の筋肉の違いなどを各班に解説して回った。
 ⑧の金魚の血管の観察では、始めにヒメダカを購入したが、体長が小さく、すぐに弱って死んでしまった。 金魚のある程度大きくなったものを購入して、 各班で観察した。
 そのほか、生徒に脈拍を計らせた。自分の頸椎や腕、心臓などを触らせ1分間の脈拍を測定した。
 運動後では、脈拍が増えることも確認した。
5. 不要物の排出→⑨鶏の肝臓の観察
 ⑨の肝臓の観察は、スーパーで購入した「鶏きも」のものを用いた。 スケッチの後、オキシドールをかけた。白い泡が発生し、酸 素が出たことを教えた。肝臓を小さく切り、小ビーカーに入れ、オキシドールを入れると、酸素の大きな泡が発生する。そこに火のついた線香を入れると、 炎をあげて激しく燃えた。
6. 感覚器官と神経→⑩目の実験⑪神経伝達速度の実験、 ⑫鶏の脳の観察、 ⑬豚の目の観察
 ⑩の目の実験ではピント合わせの実験や目の虹彩がのびたり縮んだりする実験を行った。 光を当てると瞳孔が小さくなる現象に生徒が驚いていた。
 ⑪の神経伝達速度の実験では、生徒が手をつないで握ったら隣の人の手を握るという方法で行った。何秒か測定し、1人あたり何秒か計算させた。だいたい0.28~0.22秒くらいだった。
 ⑪では神経伝達速度測定定規を生徒に配布し、1人の人が定規を落として、何秒でキャッチできるか 3回通り実験した。速い生徒は0.15秒くらいでキャッチでき、千円札でもキャッチできた。
 ⑫では、ホームセンターの缶詰から「鶏頭水煮」と呼ばれるドッグフードを購入した。鶏の頭の部分がシーチキンのようになっているので、手でも簡単に脳が取り出せた。縦に切り、大脳と小脳を観察させた。人間の脳よりも比較的小脳が大きいこと、それは鳥類に特有で、体の平衡感覚を保っために発達していることを説明した。
 ⑬の豚の目の観察では、東京芝浦臓器から豚の目を班の数分購入した。目を解剖し、中の水晶体やレンズを取り出した。水晶体やレンズは透明で柔らかく、レンズを紙の文字の上に置くと拡大して見えることを確認した。目の中は真っ黒で、カメラと同じ構造であることも確認した。
 2学期中間考査後に生徒に感想を書かせたので以下に紹介する。

・血液の流れ方や動物の体の仕組みが分かって良かった。いろいろな解剖ができてよかった。他の解剖もやってみたい。
・今回は実験が多くてとてもわかりやすかった。特に豚の血液を使った実験がわかりやすかった。これからも進んで実験に取り組みたい。
・豚の肺や小腸はめったに見れないので,解剖できてよかった。授業はわかりやすかった。
・豚の臓器の解剖がちょっと気持ち悪かったけど、中はどうなっているかよく分かったし、実際に解剖した方が覚えられたので、やってよかったと思う。
・本物の動物の内臓を解剖したりするのは、作り方がよく分かり、良いと思うし楽しい。
・心臓や血液の実験がわかりやすかった。動脈血と静脈血の違いがわかった。・実物を見たり、触ったりといい体験ができたと思う。将来に役立つように、これからもたくさんの体験をしていきたい。
・実際に動物の心臓や小腸などを使って観察して、詳しく知ることができてよかった。動物や人間の器官がよく分かった。
・解剖で豚の肺や小腸を使って楽しく勉強できました!体の中がいろいろなものでできていて、もっと深く知りたいと思いました。
・動物の小腸や心臓とかが解剖できてよかったです。シマウマの骨やライオンの骨を比べていろんな違いがあり、面白かったです。