2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

ものづくり都市の子ども達と科学するペーパークラフト

実施担当者

吉田 英一

所属:兵庫県立尼崎北高等学校 教諭

概要

1 はじめに

尼崎市は、阪神丁業地帯の中核として、我が国の経済成長、科学技術立国を支えるとともに、公害激化の過去ももち、「環境と産業が共生する持続可能なものづくり都市」を目指している。我が尼崎北高校も環境類型を設置し、「地域・地球とつながる尼北」をスローガンとして、環境問題とともに地域貢献活動に広く取り組んでいる。
担当者が長年取り組んできた「科学するペーパークラフト」は、安価で手軽な科学教材であり、ものづくりの基本である。今回のプロジェクトでは、単に教材を提供するだけではなく、「ものづくりの魂」そのものを小中学校の先生方に伝え、本校生徒も加わって、共に研究開発し、小学校の児童に対して、また各種イベントにおいて教育実践を行うことを目的とする。市制100周年を迎えた「ものづくり都市尼崎」を発信源に、小中高校の科学教育の連携を深めたい。

2 活動報告

2-1 使用コンテンツ

過去に開発した科学するペーパークラフトの中から、10分程度で完成し、説明も簡単な2つのコンテンツを選び、この2つを中心にプロジェクトを進めてゆくこととした。

(1)CD分光かたつむり
CD-ROMまたはCD-Rを回折格子に用いた簡易分光器。白熱電球、電球型蛍光灯、LED電球のスペクトルの違いを観察することができる。工作の道具として、はさみ、(カッター)、ホチキス、ボンドの使い方を、一通り体験できる。

(2)紙飛行機博物館シリーズ(スペースシャトル)
輪ゴムと段ボールを用いた発射台(カタパルト)によって、3歳児でも飛ばして遊べる。ゴムシートを加工したおもりを用いることで、構造をシンプルにして、作りやすくした。

2-2 活動内容

(1) 「エコあまフェスタ」
・・・2016年6月4日(上)、塚口さんさんタウン
地元で行われた環境イベントに、本校環境類型の1年生38名と、顧問をする芸術鑑賞部(軽音楽部)の生徒がスタッフとして参加した。市民の方が出展されている多くの「ものづくりブース」を手伝い、ブース運営のノウハウや、小学生への教え方を学び、今後自分達がブース運営をするための練習をした。「エコあま君」の着ぐるみに入ったり、エコレンジャーショーや環境クイズを行い、環境の歌を歌ってイベントを盛り上げ、市民の方々との交流を深めた。

(2) 青少年のための科学の祭典ひょうご大会丹波会場
・・・2016年7月24日(日)、丹波市ゆめタウン
「かんたんかみひこうき」というブースを出展し、遠方ながら生徒5名を派遺させてもらった。紙飛行機はちょっとした調撒で飛び方が変わるので、科学入門の教材には適していると思う。3歳児から小学生の子供さんに、紙飛行機を作って飛ばして楽しんでいただき、作り方や飛ばし方の指導をした生徒達の勉強にもなった。また、ゴムシートや段ボールの加工、見本の製作など、事前準備のたいへんさも知った。

(3) 塚口小学校校内研修
・・・2016年8月22日、尼崎市立塚口小学校
2学期の準備でお忙しい中、塚口小や近隣の小学校の先生方、尼崎市教育委員会の先生方が参加して下さり、2時間に及ぶ研修会の講師を務めさせていただいた。様々な型紙を配らせていただいた後、小学生でも簡単に作れる「かんたんかみひこうき」と「CD分光かたつむり」をいっしょに作っていただいた。
その後プレゼンを行い、道具の紹介や様々な工夫、教材開発のすすめについて話をさせていただいた。意見交換を行うこともでき、有意義な時間となった。

(4) 「あまきたこうさくきょうしつ」
・・・2016年8月26日、
本校地元の公民館とタイアップして、本校を会場として科学丁作教室を開催した。顧問をする芸術鑑賞部(軽音楽部)などの生徒10名が指導に当たり、製作中はギター弾き語りで「365日の紙飛行機」を披露するなど、様々な工夫を凝らした。
紙飛行機を作ってみんなで飛ばし、分光器を作って様々な光源のスペクトルの観察し、小さな子供達を飽きさせることもなく、楽しい2時間を過ごせた。

(5) 青少年のための科学の祭典ひょうご大会神戸会場
・・・2016年9月
神戸高校自然科学部化學班のみなさんが、科学の祭典で「かんたんかみひこうき」のワークショップを運営して下さることになり、高校に伺い、型紙やおもりなどの材料や道具を届け、作り方や飛ばし方、説明用の小道具の使い方やワークショップの運営方法を、実習を交て伝えた。

(6) 塚口中学校出前体験授業
・・・2016年9月15日(木)、尼崎市立塚日中学校
地元の中学校に伺い、3年生を対象に、「奇跡の地球環境」というタイトルで、宇宙や地球の誕生から、地球環境と生物進化の歴史について授業をさせていただいた。授業を受けて下さった生徒に、恐竜ステゴサウルスのペーパークラフトの型紙をプレゼントし、作り方を説明した。授業の内容に関係のあるペーパークラフトの配布は、授業内容の思い返してもらうために手軽で有効な手段かもしれない。

(7) 尼崎市民まつり
・・・2016年10月9日(土)、サンシビック尼崎
市制100周年を迎えた尼崎市のイベントに、本校環境類型の生徒10名がブースを出展。3歳から小学生の子供達に「かんたんかみひこうき」と「CD分光かたつむり」の作り方と遊び方を教えた。市長さんもお見えになり、ケーブルテレビの取材も受け、生徒達も市民の皆さんといっしょにイベントを成功させた満足感に浸っていた。

(8) 兵庫県化学部会実験観察研修会
・・・2016年10月、兵庫県立教育研修所
兵庫県立加古川東高校の猪股先生が、理科の教員の研修会に、「CD分光かたつむり」を使って下さった。一般的な光源の観察の他、葉緑素の溶液を通した光の観察に使えることを教えて下さり、勉強になった。

(9) サイエンスオアシス
・・・2016年11月19S(土)、尼崎市市民健康開発センター
地元で行われた子供向きの科学イベントに、本校環境類型の生徒20名が参加。3歳児から小学生の子供達といっしょに、小さな子供でも作って飛ばせる簡単な紙飛行機を作り、輪ゴムによる発射台を使って、みんなで飛ばして遊んだ。イベントを重ねるごとに、教え方にも工夫が加わり、ボランティア活動にやりがいを感じる生徒も増えた。冬は風邪の流行などもあって、こうしたイベントはあまり開かれないが、来年度に向けて、みんなで教材の改良に取り組みたいと思った。

(10) 尼崎北小学校校内研修
・・・2017年1月30日(月)、
尼崎市立尼崎北小学校インフルエンザの流行で対応に追われてお忙しい中、尼崎北小や近隣の小学校の先生方が参加して下さり、研修会の講師を務めさせていただいた。
夏の塚口小学校と同様のメニューで、意見交換など、たいへん有意義な時間となった。

3 まとめ
本校は、「地域・地球とつながる尼北」をスローガンにしながら、理科関係の部活動がないため、科学を通じた地域貢献ができないでいたが、今回、助成していただいたおかげで、第一歩を踏み出すことができた。小学校の先生との交流や意見交換もでき、1年目としては予定通りの成果を収めることができたと思う。イベントや教員の交流から出て来た課題から、2年目に向けて、ペーパークラフトをただ作るために使うのではなく、実験に使ったり、環境と結びつけたりというふうに、どのように使うかを考えてゆきたい。また、そのためのペーパークラフトも開発したい。生徒から出て来た課題として、教えるための見本のエ夫や、盛り上げるための道具もいっしょに開発してゆきたい。