2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

くるめ子どもキャンパス 出前授業や講座とサイエンスイベントで見て・考え・体験してみよう

実施担当者

越地 尚宏

所属:高等教育コンソーシアム久留米 小中高連携部会 教授

概要

1 はじめに

高等教育コンソーシアム久留米(以下、コンソーシアムと略す)は「久留米大学(含:医学部)」「久留米工業大学」「聖マリア学院大学」「久留米信愛女学院短期大学」「久留米工業高等専門学校」の「文科」「工業・工学」「医療・医学」「看護」「福祉」「児童教育」等、多様な実践的分野を専門とする学校が連携したユニークなコンソーシアムであり2009年12月設立された1)。高等教育連携部会」「地域支援部会」「広報交流部会」「e?キャンパス部会」と共に「小中高遣携部会」があり、この部会では各大学等の持つノウハウや人的資産を有効活用して地元の小中麻生徒に対する様々な支援を行ってきた。今回、中谷医エ計測技術振興財団様の助成により、表題にあるように、コンソーシアムを核に、『中高校生の発表や研鑽及び交流の場であるサイエンスイベント』と『コンソーシアムを構成する高等教育機関所属の専門家が最新の科学やテクノロジーを取り扱う出前授業』を開催したのでそれらを以下に報岩する。

2 中高校生が主体的に取り組むサイエンスイベント『青少年のためのサイエンスモールinくるめ2016』の開催

現在、高校等の教育現場では、理科クラプの活動を奨励する取り組みや、JST(科学技術振興機構)が支援するSSH(スーパーサイエンスハイスクール)2)等、クラブ単位や学校単位での様々な理科教育を支援する取り組みが行われている。しかし、それらの各学校やクラブが一堂に会する機会は個々の成果や取り組みを発表する研究成果発表報告会等が多く、彼らが“理科を志す仲間として”力を合わせて何かに取り糾んだり、発表及び積極的な技術交流を行ったりする機会は意外と少ない。そこで今回、コンソーシアムが核となり、“中高校生の研究交流の触媒”になるようなサイエンスイベント『青少年のためのサイエンスモールinくるめ2016』を、福岡県青少年科学館(福岡県久留米市)を会場に、2016年12月24日(士)と12月25日(日)の両日実施した。図1(注:図/PDFに記載)に今回広報用に作成し、久留米市及びその近隣の全小中高校に配布したチラシを示す。『サイエンスモール』と名付けたのは、ショッピングモールにおいて各店舗が独自性を保ちながらも、全体として一つの調和の取れた関係性を保っていることと同様、今回参加した各校/団体がそれぞれ持ち寄った企画を実施する独立した主催者(プレイヤー)であると同時に、全体をマネージメントする役割も担い、一方、各団体構成員も一聴衆(オーディエンス)として他の企画の特色やノウハウを学ぶ相互教育・理解の場となり、結果として参加者全員のレベルアップが成されるような場の提供を目指したからである。本報告の表題直後に示した写真がまさにそれを具現化した写真であり、制服/私服入り交じった様子から判るように、様々な学校の生徒が、学校の壁を越えて互いに教え合ったり、意見交換したりしな
がら、一つの実験に取り組んでいる。
表l(注:表/PDFに記載)に今回参加した参加団体のうちの各中学高校を、表2(注:表/PDFに記載)にそれ以外の参加団体の詳細を示す。サブタイトルで『発見!くるめゆかりのサイエンステクノロジー』と銘打ったように、コンソーシアムを構成する各大学等による出展及び久留米ゆかりのサイエンステクノロジーに関係する団体や企業も参加した。久留米市は世界的企業である『株式会社ブリヂストン』の発祥の地でもありプリヂストンからは特殊なタイヤの展示を頂いた。また同様に世界企業である『株式会社東芝』の創業者の一人として数えられている田中久重(通称:からくり儀右衛門)も久留米出身であり、2013年に機械遺産として日本機械学会より認定を受けた『弓曳き童子』はからくりの最高傑作として広く知られている。今回『久留米からくり振興会』のご協力により弓曳き童子を完全復元したレプリカをはじめとする多くのからくりの実演を頂いた。また江戸時代久留米藩は数学(和算)を奨励し、和算書「拾磯算法(しゅきさんぽう)」を発行し和算の普及に寄与した歴史もある。当時、数学の問題や答を額にした「算額(さんがく)」を神社等に奉納する習慣があり、久留米市の高良(こうら)大社にはその「算額」の一つが復元されて奉納されている。
今回、高良大社様のご厚意によりその算額の現物を展示させて頂いただけでなく、『和算』を研究テーマに取り組んだ複数学校の生徒達によるジョイント発表もあった。今回の試みで、若い世代が地域の持つ資産や特色に触れることができ、ひいてはそれらが地域活性に繋がっていくと考えている。

24日/25日は多くの市民、家族連れ、そしてチラシ配布の効果か、多くの小中高校生が来場し大盛況であった。展示担当の中高校生は来場者--に熱心にエ作の指導や展示の説明を行っていた(図2/PDFに記載)。

またメイン企画として、テレビ等の科学番組でおなじみの、滝川洋二東海大学教授を監修者/講師として招聘した「実験や工作を参加者に行ってもらうサイエンスステージ:光の不思議」を同館プラネタリウムで開催した。全体の流れは講師にお願いするが、家族連れを含む参加者が客席で講師の案内でその場で行う工作や実験の実技指導および個々の解説は参加各裔校生徒が担当した。

「家族連れが多く、照明を落とした中で、机の無い座席での限られた時間内でのエ作」という不自由な環境での指導であるため、図3に示すように事前に講師や会場担当者等を交えた入念な打ち合わせや予備工作を行った。各生徒ば慣れない環境の中、熱心に指導を行った。またイベント終了後、滝川教授は各展示実演ブースに立ち寄り、生徒の説明に熱心に耳を傾けると同時に展示内容に関してアドバイスや意見交換を行っていた。
(図4/PDFに記載)。また今回の企両では前記のように普段なかなか行うことのできない中高校生の相互の学び合い/意見やノウハウの交換も目的としている。そこで学生が相互意見交換の際、記録やメモをとる学習記録簿を新規に制作し、議論の内容や気づいたことをリアルタイムで記録し、論点を照理しながら情報をまとめたりする実践トレーニングも行った。彼らは熱心に意見交換を行ったり、その場で新しい実験を考えたり等、積極的に取り組み姿勢が多く見られた。

3 大学教員等の専門家による最先端の科学技術に関する出前授業

大学等で構成されるコンソーシアムの特色を活かして、演示実験や参加中高校生の実験や観察を伴う、専門家による出前授業を
実施した。表3にその一覧を、図5にその一例のスナップ写真を示す。どの話題も先端技術かつ私達が今直面している間題を題材
にしており、であり参加生徒は熱心に取り組んでいた。

4 まとめと課題及び次年度への展望

今回、コンソーシアムの特色を活かして、中高校生の科学探究活動を推進する取り組みを行うことができた。一方、今回が初めての取り組みであり、計画の立案・遂行を含めて手探りの点も多かった。次年度は得られたノウハウを活かして更なる活動の活性化に努めたいと考えている。