2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

「授業としておこなう、生命現象のインターバル撮影を活用した探究活動」

実施担当者

小林 設郎

所属:静岡県立三島北高等学校 教諭

概要

1.はじめに
 これまでにインターバル撮影を用いた生物分野の動画教材の制作とそれを利用した授業実践をおこなってきた。また、科学部の顧問としてインターバル撮影技術を活用した生徒の理科研究指導を実践してきた。そこで、インターバル撮影を用いた探究過程を通常の授業に合わせて展開し、生徒主体の体験型探究学習の実践研究をしたいと思った。
 本活動のポイントは、①生徒が興味を持つ現象を記録対象とする。②記録対象の特性を調べさせ、効果的な記録方法を工夫させる。③記録した画像を分析させる。④発表会をおこなう。⑤指導者は、生徒の記録画像、発表内容を次の授業における教材としてまとめる(さらに教材として広く頒布する)。である。


2.実践課程
①探究実践例の提示と評価アンケート:過去に授業や科学部の研究で利用された記録動画(精選19作品)と、それに関した探究事例を数例授業にて紹介する。遭遇した困難や工夫についても示した。
②意識調査事前アンケート:この実習を通して、生徒の意識がどのように変化するかを調べるために、実習の事前・事後の2回、同じ内容について、生徒の意識を調べた。調査内容は、(ア)生物学や実験実習に関する語句と、(イ)実習と関係ない日常の語句、計19個をランダムに並べ、その語句に感じる好感度を5段階で評価させた。
③機材使用方法講習:使用機材(カメラ・三脚・ライト)の特性、機能、使用方法を説明する。※画像のサイズ、データ量、露出調整、手動ピント合わせ、日付写し込み方法、インターバル設定の操作方法を教えた。2人1組とし、6チームで実習をおこなった。
④計画書提出と計画発表:撮影対象の生命現象の特徴や記録に関わる問題点について生徒に考えさせて、記録計画を立てさせた。その計画立案の過程で指導者が適切なアドバイスをした。計画決定後に、各グループに全員の前で計画を説明させた。
⑤撮影実践:撮影を開始する。1回の撮影で成功することはないので、失敗する毎に新たな工夫を加えさせた。このとき指導者は必要に応じて、アドバイスとサポートをおこなった。
⑥実習実践作品動画発表会とその評価アンケート:発表会では、各グループが記録したインターバル撮影画像を動画化(WMV形式)した作品計21点を上映、参加生徒12名に互いに評価させた。評価の視点は、各作品を、興味深さ、面白さなど含めた好感度について、5段階で回答させた。また、それらの得点を合計したものをグラフ化し、後日生徒に紹介した。
 本実習での制作動画と内容(21作品)
「1パンのカビ 2アベナ、グリンピース緑化 3グリンピースの芽と根の成長 4グリンピースのつるまき 5ガーベラ色吸収 6リンゴと落葉 7リンゴと落葉ケース内 8エチレンと落葉 9土による魚の分解1 10土による魚の分解2拡大 11コダカラベンケイソウ出芽条件いろいろ 12コダカラベンケイソウ出芽3切断条件 13モヤシ2種光緑化 14インゲン2個体上から光 15インゲン2個体左右上から光 16インゲン開花結実1 17インゲン開花結実2 18葉の成長 19コダカラベンケイソウ幼個体成長 20ツユクサ塩分耐性 21シクラメン開花」
 上記記録動画は報告書と共に、実践事例教材として、下記研修会にて公開しDVDとして頒布しました。(静岡県生物教育会静岡県支部の冬の研修会〔H26.12.25〕、高校理科セミナーin 名古屋 2015~デジタルコンテンツを活用した授業実践Ⅱ~〔H27.2.14〕)

(注:グラフ/PDFに記載)


3.まとめ
 今後は、本活動を行う、a 学年や時期の選定、b 生徒の意欲関心を高める工夫、c 理科という教科での他の教員への理解など検討していきたい。一方で、今回得られた、生徒が記録した動画教材を多くの教育現場で広く教材として利用してもらう努力をしていきたい。